VC副社長がまたミラー配信をするようです
◇配信準備中です、もうしばらくお待ち下さい◇
◇配信開始致しましたら
「
現在彼女は五階に与えられた配信部屋でVCスタジオの技術者と共に配信準備中である。
「準備が出来たと連絡があったので、予定時間通りにカウントダウンを開始するね」
「了解」
伊吹側の配信は昨日に引き続き投げ銭設定はオフ。そして玲実側の配信は収益化の条件を達成していないのでそもそも設定が出来ない。
「皆さんこんばんは。VividColors副社長です。
今日も皆さんと一緒に新人Vtunerのデビューを見守りたいと思います。今夜はVividColors側の新人ですので、パソコンとスマホと同時に見れる方は二枠表示させてお楽しみ頂ければと思います。
私の方は声だけ聞いてもらえればいいので、新人Vtunerの方に集中してもらえればいいかなと思います」
≪あのシルエットがどんなキャラなのか楽しみ≫
≪髪の毛長いっぽいから女性キャラかな≫
≪お、来た≫
『お許し下さい! 何卒お許し下さい!!』
『じゃかぁしぃわこのキンカ頭め!
人を自害に追い込んでおいて何を許せと申すかこのたわけが!!』
ざんばら髪を振り乱しながら、平伏して許しを乞う男性の姿。そしてその男性を思いきり蹴飛ばすもう一人の男性。
≪え、この声……≫
≪あちらの声も……≫
蹴飛ばされ、倒れ込むもすぐに起き上がり、そして再び平伏する。その男性の首からは『私は謀反に失敗して竹槍で討ち取られました』という札が下げられている。
≪光秀www≫
≪あぁ、伊地藤玲夢イコール明智光秀なのかwww≫
≪現代の本能寺の変とか言われてたもんねw≫
≪髪の毛の動き細かいな、あとてっぺんはピカッてるw≫
「アバターの動きが滑らかでいいなぁ。口の動きと声に違和感がないね」
≪副社長が生配信していて信長様の声が副社長と同じ声???≫
≪昨日の合成音声技術の完成版???≫
≪え、それってどういう事? 混乱して意味が分からないよ≫
『私は騙されておったのです!
本能寺に敵がおるとの虚偽の伝令に騙されたです!』
『その伝令はどこの手のものだと言うんじゃ!?』
『えっ!? それはその……、
打ち合わせでそんな話してなかったじゃないですか……』
『じゃかーしぃわ!
こういうのはその場の勢いで適当に乗り切るんじゃこのたわけが!』
またも蹴られて床へ打ち付けられる光秀。
信長は怒りが収まらぬ様子で、腕を組みながら光秀の周りをぐるぐると歩いている。
≪そんな無茶なw≫
≪何という茶番劇www≫
≪え、これ何が行われてるの?≫
『まぁ良い、主君を討ってでも天下に号令をかける。
これぞ日ノ本の
しかし、しかしじゃ!
ただの農民に討ち取られるとは何とも情けない!
これではワシが浮かばれんではないか!!』
信長は持っていた扇で光秀の頭頂部をバシバシと打ち付ける。
光秀の頭から☆が飛び出て来る。
≪芸が細かいwww≫
≪特殊効果すげぇな≫
『お許しを! どうかお許しを!!』
『もう遅い! ワシも倅も死んでしもぉた!
貴様には地獄の果てまで行ってきゅーっ! と言わせてやるわ!!
と言いたいところじゃが、ワシは行かねばならんところがある。
新九郎もそなたと同じように蹴飛ばしてやらにゃならんのでな!!』
『お待ち下さい!
せめてこの配信で何をすれば良いかだけでもお聞かせ下さい!』
≪すごい言うじゃんwww≫
≪配信で何するか分からずデビューした方が悪いw≫
『興が削がれるような事を申すな!
しかし、そうじゃな。このぶいちゅうなぁとやらで天下を取って見せよ。
さすらば許してやらん事もない』
『いやいや絶対無理じゃん! 副社長が引退してくれない限り無理じゃん!』
≪副社長って言っちゃったw≫
≪本能寺の変おかわりwww≫
『また寝所に火を付けるつもりかこのたわけが!
無理を無理と申して何が成せる!
しかとこの世に轟かせてみよ、己はここにおる、とな!』
再び光秀は蹴飛ばされ、画面の外へと転がり出てしまう。
信長はカメラ目線でニヤリと笑みを浮かべ、扇を広げて
≪そして誰もいなくなった≫
≪長政逃げてーーー≫
≪ってか浅井長政も豊臣秀吉も徳川家康も全員連れて来て!≫
≪歴女には堪らないチャンネルになる予感≫
そして床を這うようにしながら画面に戻ってきた光秀。
カメラの前で正座し、身嗜みを整えた後、口を開く。
『んんっ!
私は
そなたらは何ぞや、名を名乗れ!』
≪名wをw名w乗wれwww≫
≪向こうのコメント欄も困惑してる≫
≪吾輩は
≪明智さんだと思ったら明智さんじゃなかった≫
≪明智って自ら名乗った事がないらしい、今調べた≫
「先に名乗ったのは評価されるべき」
≪確wかwにwww≫
≪向こうのコメントにも安藤子猫がいっぱいおる≫
≪にゃーにゃー≫
『安藤? 西美濃三人衆の安藤殿か!?』
≪いやちょっと分からんないですw≫
≪歴女の私歓喜! 時を同じくして亡くなった光秀と
≪あぁ、
『違うのか、まぁ良い。
私はこのぶいちゅうなぁとやらで天下を取らねばならん。
さて、どう致そうか』
≪人に言われて目指すものなの???≫
≪とりあえず踊ってみる?≫
≪信長の言う通りにするじゃんw≫
画面の外から大きなスケッチブックが投げ入れられ、光秀の頭頂部にベタンと当たる。
『う、上様!? まだおられたのですか!』
『じゃかーしぃ! それを読んで考えて答えよ!』
≪何か始まる?≫
≪また何か押し付けられた≫
≪スケッチブックを広げて頭を傾げる光秀、異様だねwww≫
『何なに……、
こんな織田信長は嫌だ。何をした?』
≪何ぞコレ≫
≪母親を殺して木に縛り付けた?≫
≪魚が腐ってるって難癖付けた?≫
『えっと……、
≪え? どゆこと?≫
≪時代が全然違うが?≫
≪本来とは違う事を言うお遊びなのかな≫
『次じゃ次!』
『は、はい、ただいま!
えっと、こんな秀吉は猿じゃない。
何をした?』
≪また何をしたのお題目≫
≪そういうお遊びっぽいね≫
≪謎かけ的な?≫
≪上様も画面に映ればいいのにw≫
『川で泳いでて流された!』
≪キメ顔してるけどちょっと意味が分からん≫
≪河童の川流れと掛けたんじゃね?≫
≪*≫
「意味が同じだから掛けたんでしょうね
なかなか上手なのでは?」
≪そう言われれば≫
≪でも何かちょっと違う気もする≫
≪でもとっさにやれって言われても出来ないだろうなぁ≫
『次をめくるか。
鳴かぬなら、なんちゃらかんちゃらホトトギス。
なんちゃらかんちゃらに言葉を入れて答えて下さい』
≪殺してしまえ≫
≪鳴くまで待とう≫
≪鳴くまで待とう≫
≪鳴かせてみせよう≫
≪新しく考えて答える遊びなのよw≫
『鳴かぬなら、追加で払おうホトトギス!』
「金にモノ言わせる類いの性格かー」
≪あー、そういう≫
≪副社長の解説助かる≫
≪だんだん分かってきた≫
『今のあなたの気持ちを四字熟語で答えて下さい。
……、無理難題!』
≪なるほど≫
≪自信ありげに答えるのが良いね≫
≪でもこれやってんの光秀なんよなw≫
「明智光秀は和歌とか茶の湯を好んだ文化人だったって言われてるから大喜利くらいなら出来るんじゃないでしょうか」
≪このお遊びはおおぎりって言うのか≫
≪何? 歌舞伎と関係あるの?≫
≪大喜利って書くのかな≫
『人生最期の食事、これだけは選ばない。
何を食べたくない?
これは干し柿一択でしょ!』
≪ちょw 素が出とるwww≫
≪時代が逆なのよw≫
≪石田三成www≫
≪ドヤ顔止めろwww≫
『これで最後じゃ、皆を笑かしてみせよ!』
『ははぁー!
どうしたら光秀が天下を取れたか教えて下さい』
≪これは無理難題≫
≪いや、でも面白く答えるだけだし≫
≪ついつい真面目に考えてしまうw≫
『ん~~~~~~~~~~』
≪めっちゃ考えるじゃんw≫
≪信長を討つ前に秀吉を殺しておく!≫
≪ついでに家康も!≫
『遅い!
そんなんじゃから天下を取れんかったんじゃこのたわけが!!』
『あぁ、なるほど。
おあとがよろしいようで……』
光秀がカメラに向かい、手をついて頭を下げると、画面の上から
緞帳には「お笑い寄席」と書かれている。
≪お笑い寄席?≫
≪最後は落語っぽかったなw≫
≪どこからどこまでがお芝居なのか分からんw≫
「はい、というわけで新人Vtuner光秀の初回生配信が終了致しました。
一ヶ月後のチャンネル登録者を競っておりますので、皆さんよろしければチャンネル登録して下さいね」
≪これから色々と広がりがありそう≫
≪大喜利ってのを複数人でやれば面白そうよね≫
≪
≪光秀一人だけ独特な感じになるw≫
≪ってか相手は今日配信してないけどどうなってんだろ≫
「それではまたお会いしましょう、さようなら。
Vtunerの天下?
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