伊吹の暴走独り言

「僕が最初からビルを立てるとすれば、屋上には広めのプールが欲しいな。プールサイドはバーベキューが出来るように広めに取っておいて、プールとは別にジャクジーがあって、その近くにサウナ小屋を設置する。

 露天風呂も良いね、子供が出来たら一緒に入りたいし、広めの浴槽だといいな。屋上じゃなくてもいいけど。


 子供と言えば、子供が思いっ切り走り回れるフロアがあったらいいよね。跳び箱とかマットとか鉄棒があって、滑り台もある。ボールを敷き詰めた穴があったり、ターザンロープがあったり。さすがに言い過ぎかな?


 そうそう、ゲームセンターも作りたいね。クレーンゲームにメダルゲーム、レーシングゲームも。対戦型のアーケイドゲーム機もあるといいね。ちょっとスペースが必要なVRゲームとか出来たら面白いと思う。飛んだり跳ねたりするヤツ。


 ゲームセンターと言えばボウリング場もあったら嬉しいけど、さすがにビルの中に設置するのは難しいかな。カラオケボックスなら問題ないと思うけど。あと卓球台とビリヤード台。ちょっと方向性が違うけど全自動麻雀卓も欲しいな。バスケットのゴールってどれくらいの高さが必要だろうか。


 遊ぶ事も良いけど食べる事も必要だよね。屋上でするバーベキューとは別に、室内に大きな食堂を作って、焼肉が出来るテーブルがあったり、ステーキを焼く鉄板焼きのテーブルがあったり、しゃぶしゃぶ用のテーブルも欲しい。たこ焼きはホットプレートで出来るか。たい焼きはホットプレートでは難しいそうだよな。

 そうそう、回転寿司が家にあったら最高だよね。板前さんに握ってもらって流すとかちょっと無駄遣い感はあるけど、やっぱり見た目が楽しいしね。

 流しそうめんは必要ないかな? 年に一回もしないだろうしね。


 壁がガラス張りになっててさ、そこでお茶出来たりしたら嬉しいよね。喫茶ルーム的な。僕はお酒飲まないけど、好きな人の為にバーがあっても良いし。

 バーの壁一面を水槽にして淡水魚や海水魚が鑑賞出来るようにしたらどうだろうか。本物じゃなくて撮影した水中映像をディスプレイで流すのでもいいけどね。世話が大変だし。


 あとはフットサル場くらいなら作れるかもね。ゴルフの打ちっぱなしとか、バッティングマシンとか、キャッチボール出来るスペースもあったら嬉しい。子供とキャッチボールしたいしね。トランポリンとかもバスケと一緒で高さがいるかな?


 ビルの中にジムがあったら運動不足にならなくていいかな。ここに来てから朝の稽古も出来てないし。まぁ夜はハッスルしてるんだけどね。

 エロアバイク、じゃなくてエアロバイクとかランニングマシンもほしいな。VRと連想させて外を走ってるみたいに出来たらいいな。

 屋上のプールとは別に水流がぶおーって出て同じ場所で泳ぎ続ける水槽みたいなのっていくらくらいするんだろうね?

 

 それと、室内に映画館があると良いよね。子供達と映画を見たり、大声で叫んでも防音だから迷惑にならないし。あ、カラオケボックスもいいけど映画館でも歌えるよね。楽器の練習をさせるのにもちょうど良いし、皆の前で演奏を披露するのも良い。


 あっ! 電車の中を再現した部屋があったら滅茶苦茶嬉しいな、あとは学校の教室とか、部活の更衣室とか、オフィスの一室とか、会議室とか応接室とか、旅館の和室も良い。コンビニの店舗を丸々再現するのはさすがにやり過ぎかな。壁一面が鏡張りになってるとか、マジックミラーで……。


 おっと、ごめん。喋り過ぎた」


 皆が自分の話している内容について来れていない事に今さら気付く伊吹。前世では当たり前にあった物や施設も、この世界では存在していなかったりする。


「お兄さん、あーちゃんは生配信とか動画撮影で使えるセットとか、スタジオとかの事を言ってたと思うんだけど」


「あ、そうだね。ごめん、つい自分の欲しいものばっか挙げてたわ。まぁ撮影に使えない訳ではないけど。いずれアバターを通して活動するVtunerブイチューナーとは別に、顔出し配信とか動画撮影しても良いと思ってるし」


「まぁ、それは今ちょっと考えられないとしても、さ。何でビルの中に電車の中を再現する必要があるの? あと、コンビニの店舗と一面鏡張りの部屋とか、会議室とか旅館とか」


 伊吹が自分の妄想を実現する為に必要だ、と答えるべきか迷っていると、秘書によって質問が投げ掛けられた。


「お館様、私も娯楽施設関係のお話が聞きとうございます。まだ世間に浸透していない新しい施設だった場合、事業として展開出来るかも知れませんので」


 紫乃しのの言葉に、みどり琥珀こはくも頷いている。この三人は藍子と燈子の年上の従姉妹であり、その関係性がある為に伊吹と燈子の会話に割り込んでしまっている。

 後で説教だ、と福乃は心の中でため息を吐いた。


「いやまぁ、うん。それについてはまた後日という事で」


 一からビルの内装を考えるとどうするか、という質問をされた途端、止めどなくアイディアが溢れ出て止まらなくなってしまった伊吹。

 本来であれば、ハム子との対談が終わり次第美哉みや橘香きっかと三人で初めての共同作業をしているはずだったのに。


「では明日の朝に、改めてお聞かせ願いたいと思います」


「うん、了解。じゃ、そろそろ部屋に戻るわ。行くよ、美哉、橘香」


 さて、今夜は長くなるぞ、と伊吹は心を弾ませて、オフィスを後にした。

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