男性に聞く100の質問その4

「あまり詳しくお聞きするとご迷惑が掛かりそうなので、質問の方向性を変えさせて頂きます。

 先ほど好きな女性についてお伺いしましたが、苦手な女性についてお伺いしてもよろしいでしょうか。六十六問目、です」


「女性というか、人間として義理や人情を欠くような人は嫌いですね」


「義理や人情ですか」


「人が筋道立てて準備して、やっと芽が出たという段階で成果だけ掻っ攫ってさも自分の手柄のように振る舞うような人は嫌いですね

 何事にも先行投資が発生します。投資した分はこちらに負担させ、儲けが出たら独り占めする。人として考えられない行動です。

 この動画を投稿する予定のチャンネルを盛り立てて、クソみたいな女を絶対に見返しましょうね!」


「うっ……、あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛ぅぅぅ!!」


『諸事情により質問者が変更となります』


「六十七問目としてお伺いします。

 まだVtunerブイチューナーとしてのお名前が決まっていないので、お兄さんとお呼びしても?」


「はい、お兄さんでもお兄ちゃんお兄様でも兄様でもおにぃでもおにぃたまでも兄貴でも兄くんでもオニイトマキエイでもお好きにお呼び下さい」


「えっと……、ではお兄さんと呼ばせてもらいます。

 六十八問目。お兄さんは配信者としてやりたい事はありますか?」


「やりたい事はいっぱいありますが、僕は自分が楽しいと思う事をやりたいですね」


「六十九問目。お兄さんが楽しいと思う事と言うと、具体的には?」


「具体的にやりたいと思ってる事はありますが、今はまだ伏せさせて下さい。またクソみたいな女に横取りされる可能性がありますので」


「なかなか辛辣ですね。

 七十問目。具体的ではなくふんわりと教えて頂けませんか?」


「そうですね、例えばこれをやれば再生回数が増えるとか、チャンネル登録者数が増えるとか、そういう事も大切だとは思いますが、やらされていると感じるような事は避けたいです。

 配信者としての活動を始めるにあたり、やはり継続して皆さんと楽しい時間を過ごしたい。僕が楽しいと思う事を話したり、視聴者さんが僕と同じ時間を過ごす事が楽しいと感じたりしてもらえれば、無理せず長く続けていけると思いますから」


「私の率直な感想として、お兄さんは世間一般の女性が思う男性像と、あまりにかけ離れていると思います。

 その理由としてご自身で心当たる事はありますか? えっと、七十一問目です」


「僕は僕なので、他の男性が何を考えてどう生きているか知りません。

 ただ、僕が普通の男性ではない、と受け止められるのであればそれは僕の強みであると考えます」


「お兄さんの強みが視聴者を楽しませる事に繋がる、という意味でしょうか」


「その通りです。みんなが思い描くこの世界の男性像通りの事をやっても、何も面白くないと思いますからね」


「七十二問目です。この世界の、とはどういう意味でしょうか?」


「おっと。

 えーっと、例えばですが、僕が他の男性と違う価値観を持っている理由が、別の世界から来た人間だからである。

 そう考えてみては如何でしょうか」


「価値観が異なる世界から来た、と?」


「はい、異世界から来たと考えると、僕の考え方が独特である納得すべき理由になると思いませんか?」


「何となく言わんとされている事は分かるのですが、言葉に表しにくいですね」


「例えば、僕が男性と女性が一対一の比率で暮らしている世界から来た異世界人だとすると、僕が女性に対して普通に接している理由になるとは思いませんか?」


「……なるほど。そういう設定のVtunerだという事ですね。理解しました。

 ではそれを踏まえて七十三問目。男女比が一対一の世界から来られたお兄さんから見て、女性ばかりのこの世界はどう見えますか?」


「最高ですね。元いた世界よりも美しい女性が多いですし、小さい頃から女性にチヤホヤされて嬉しい事がいっぱいありました。可愛い女の子二人も身近にいましたし、これからもずっと一緒に暮らせると思うと感無量です」


「七十四問目として聞かせて下さい。

 お兄さんが異世界から来られたのはいつなのでしょうか? 生まれた時から幼馴染さん達と暮らしていると仰っていましたが」


「ツッコまれてしまいましたね。では、異世界で生きていた記憶を持ったまま、この世に生まれ変わったと言えば納得してもらえますか?」


「すみません、まだ異世界というのが上手く捉え切れないのですが……」


「異世界だと伝わりにくいでしょうか。では、もしも男性が激減する原因となったあの内戦が発生しなかった世界があったとしたら。

 元は一つの世界で、内戦が発生したこの世界と内戦が発生しなかった二つの世界に分かれ、それぞれ別の歴史を歩み始めたとしたら。

 僕は前世を内戦の発生しなかった世界で生まれて死に、記憶を持ったままこの世界へ転生して来た。これで伝わりますか?」


「……確か、アメリカの哲学者が考えた多元宇宙論という学説があったと思います。そこから発想を得られたのでしょうか?」


「いえ、僕独自の考えではないです。前世の世界では割と知られた考え方でしたよ。

 異世界というと月が二つあったり、魔王がいたり、吸血鬼がいたり、人が魔法で空を飛んだりする世界を思い浮かべやすいですね。僕がいた世界はほぼこの世界と同じですから、並行世界と表現するべきでしょうね」


「並行世界、ですか」


「ええ、ある瞬間までは同じ線を走っていて、突然二つに分かれて並行に進むようになった別の世界です」


「七十五問目とさせて下さい。お兄さんは前世、何故亡くなったのですか?」


「お酒をバカみたいに飲みましてね、ふら付く足取りで信号待ちをしていたら、後ろから押されて車道に飛び出てしまい、車に轢かれました」


「それは、何と申し上げて良いか……」


「おっと、設定上の話ですよ?」


「あ、そうでした! あまりにすらすらとお話されるものですから、聞き入ってしまいました。だからお酒を飲まないんだ、と納得させられてしまいました。

 七十六問目。今までのお兄さんのお話を聞いて、自分も前世の記憶があるという人が出て来たらどうされますか?」


「ぜひ会って話がしたいですね。ただ、面白がって言っているだけの可能性もあるので、事前調査票を用意して答えてもらい、これは本物だぞという方のみ絞り込みたいですね」


「七十七問目。視聴者と会う事に抵抗はありませんか?」


「特にはないですね」


『現在、当チャンネルでのオフラインイベントの予定はございません。この件に関するお問い合わせについての回答は致しませんのでご了承下さい』


「七十八問目です。並行世界から転生して来られたお兄さんが、この世界に対して疑問に思われている事って何かあります?」


「世界に対してというか、交代された質問者さんに聞きたい事があるのですが」


「私、ですか? えぇ、どうぞ」


「著作権って知ってます?」

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