男性に聞く100の質問その2

「二十八問目。最近嬉しかった事を教えて下さい」


「五年間離れていた幼馴染二人が戻って来てくれた事ですね」


「二十九問目。幼馴染さんはどんな人達ですか?」


「僕がお世話になっている侍女さん二人の、それぞれの娘さんです。二人とも二つ年上で、僕が生まれた頃からずっと一緒に暮らしていて、共に稽古を受けていました。

 侍女になる為の学校へ通うので離れてしまったんです。ですが、飛び級で一年前倒しで卒業し、僕の侍女として戻って来てくれました」


「ええ!? と言う事は国家認定侍女師じじょし、それも特級侍女師という事ですよね!? しかもお二人!?」


「特級侍女師って何ですか? 初めて聞いたんですけど。

 え、何? うん、へー、そうなんだ。すごいんだね」


『国家認定侍女師とは国立侍女育成専門学校を卒業し、国家試験に受かったものに与えられる国家資格である。

 三級から一級までがあり、等級によって出来る職務が分かれている。

 特級とは男性と共に幼少期を過ごし、共に育つ事で深く男性の事を理解している侍女のみが与えられる等級である。

 男児を産んだ母親が、息子に同年代の女児が近付く事を認めない場合が多く、特級侍女師の等級も持つ侍女はとても少ない』


「すみません、取り乱しました。ちなみに動画画面としては視聴者さんに伝わり辛いので説明しますと、今お答え頂いている男性の後ろに侍女さんがお二人控えておられます。このお二人が今話された、特級侍女師幼の資格をお持ちの幼馴染みさんです。

 さて、三十問目。幼少期は幼馴染さん達とどのように過ごされましたか?」


「さっき言ったように、空手や柔道なんかの稽古は彼女達と一緒に受けていました。元々は二人が親から稽古を付けられていたところに、僕も混ざるようなった感じです

 あとは、家でトランプをしたり近所を散歩したり、二人が学校から帰って来たら一緒に宿題をしたり、とかですかね。女の子同士の幼馴染みとそう変わらないのではないでしょうか」


「一緒に宿題をする、と言うと? あ、三十一問目です」


「僕は男だから小学校にも中学校にも行けませんでした。その代わりに、家で侍女さんや祖母に勉強を教わりました。

 だから二人が帰って来たら、その日出された宿題を一緒に解いていたんです」


「なるほど、男性が普段ご自宅でどのように過ごされいるのか、一般女性にとっては全く未知の世界なので参考になります。

 三十二問目。また質問の傾向が変わります。好きな映画やドラマなどありますか?」


「あまり見ないです。僕が男だからでしょうか。送っている日常との乖離があり過ぎて、なかなか見る気になれないんですよね。

 女性中心の社会を描いているのですから当然なのですが」


「三十三問目。非日常系のアニメや漫画などはどうでしょうか?」


「それも同じく、どこか自分が求めているものとのズレを感じてしまって。

 あ、全部が全部そうだって訳ではないですし、決して否定している訳ではないのでご了承下さい」


「三十四問目。ゲームについても同じでしょうか」


「まぁ、そうですね。話題の新作が、とか続編が、とか言われてもあまり気にならないです」


「三十五問目。では今気になっている事なんてありますでしょうか」


「そうですねぇ、……質問者さんのスカートの中、ですかね」


「ええと、女の下着にご興味がおありですか?」


『質問者が回答を受けて動揺していますが、これが三十六問目です』


「もちろんありますよ。源氏物語や江戸時代の春画や大衆娯楽を見れば、古来より男がエロティシズム、官能に興味があるのは分かりますよね」


「当時の男性の嗜好を読み解く事は出来ますが、それが現代の男性にも通じるとは思いもしませんでした」


『これは質問ではなく質問者の感想です』


「まぁ他の男性がどうかは知りませんが、僕はエロい、という事で」


「女性の下着の何が良いのかお聞かせ願えますか?」


『三十七問目です』


「そうですねぇ、下着の役割を考えると余計な刺激から身を守るのと形を整えるのと服が汚れないようにというものがあると思いますが何より隠す目的がありますよね。隠しているその先に何があるのか男は暴きたいという本能的な欲求がありますし隠す役割を担う下着自体にも興味を持ってしまいました。やがて下着自体が性の象徴として見られるようになったと言われています。女性の下着を見た瞬間男が秘めている性欲と結びいて脳が興奮状態になってしまうのです」


「……まるで大学で授業を受けているような気になってしました。

 言われています、と仰いますと?」


『これは回答を補足する為の質問なので数に入りません』


「今述べたのは西暦1882年の世界下着学会で発表された論文です。

 いっぱいパンと覚えて下さい」


「あの、その学会のお話は本当でしょうか?」


『これは回答を、以下略』


「冗談です。世の男性が女性の下着を見て興奮するかどうか知りませんが、少なくとも僕は興奮するし見えると嬉しいです」


「……よろしければ服を脱いだ状態で質問しましょうか?」


『これは質問ではなく質問者の男性に下着を見せたい、見られたいという欲求が出てしまっただけなので質問として数えません。


 この字幕は冗談なので真に受けて批判的なコメントを打つその手を止めて下さい』


「いやいやそれは違います。見えないからこそ良いのです。

 明け透けに、さぁどうぞ見て下さいと言われるのは興が醒めます。隠されているという状態は、もうちょっとで見えるのではないか、今見えたのではないか。そうやって男の心を惹き付けるものなのです」


「参考までにお好きな下着の色を教えて下さい。

 ……三十八問目? え、違う? 失礼致しました。三十六問目です」


『三十八問目です』


「白とか薄い緑とか、ピンクや水色などの淡い色がいいですね。

 反対に赤や黄色、肌色や茶色はちょっと」


「三十、九問目。一般女性達は赤が一番本能に訴えかける官能的な色であるという印象を持っているのですが、違うのでしょうか?」


「いえ、単純に僕個人の好みの話なので他の男性がどうかは別として、話半分で聞いて下さい」


「それでは四十問目。貴方はどうして赤の下着を好みではないと仰るのでしょうか?」


「めっちゃ色気あるでしょ!? って主張されてる感じがして気後れするんですよね。あと金色とか光沢のあるピンクとか。

 それよりも恥じらい、控えめな印象の方がより見たい気持ちにさせるというか、もっと求めてしまうというか。隠されると気になりますよね」


「四十一問目です。隠されているものを暴きたいという欲求、という事でしょうか?」


「そうですね、例えば今、カメラは僕の喉仏のみを捉えていると思います。そこにこのようにチラッと手が映り込みました。

 手が見えた! そういうある種の感動はありませんか? そして僕が少し顔を下げれば唇が……。

 おっと、侍女に止められてしまいました」


「何となく今仰った事が理解出来たような気がします」


「それは良かった。

 もちろん、質問者さんの下着姿を見ても良いと言って下さるのであれば遠慮なく見させて頂きますが、それはまた日を改めてお願いするという事で」


「ごごご後日!? 痛い!」


『質問者が取り乱したので頭を叩いて落ち着かせました』


「ゴホン、失礼致しました。質問を続けさせて頂きます。

 四十二問目。一番大切にされているものは何ですか?」


「母が僕の幼い時に亡くなってしまい、祖母も最近亡くなってしまいました。ですから、今一番大切なのはこの二人です」


『後ろに控えている侍女二人の腰に手を回しておられます』

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