【カクヨムコン9短編】幼なじみが私にだけ敬語を使ってくる
肥前ロンズ
第1話 私にだけ敬語を使うタイヨウ君
切れ長で涼し気な目。色気のある泣きぼくろ。
あまりに顔が整えすぎて、何か考え込むと、太陽というより氷の印象を与える。……らしい。
学校の制服であるブレザーを着て、廊下の柱に寄り掛かっているだけで、モデルの撮影場所では? と騒がれてしまうほどだ。
「あ、ミヅキさん」
ただ、私にとっては、割と表情がコロコロ変わる、大切な幼馴染。
今だって、私が駆け寄っただけで、一瞬で笑顔を浮かべてくれる。皆とちがう態度を向けてくれるのは、特別な感情を向けてくれているんだって思うと嬉しい。……嬉しいんだけど。
「さきほどイオリさんから連絡が来たのですが、今日、帰る前に卵とゴミ袋を買ってきてほしいんだそうです」
「え、何でお父さん、私じゃなくてタイヨウ君に連絡してるの?」
「いえ、ミヅキさんにも送ったとは言っていましたよ」
そう言われてアプリを開くと、確かにお父さんから連絡が来ていた。たまにあるよね、謎の通知バグ。
「ごめん、通知がバグってたみたい」
「いいえ。良かったら、帰りにスタバに寄りませんか。季節限定のクーポンが当たったので」
「え、いいの⁉」
季節限定って言ったら、やっぱりクリームたくさんのホワイトモカだよね! ああでも、ストロベリーメリークリームケーキも捨てがたい……。クリスマスに差し掛かる12月って、なんでこんなにおいしそうなメニューが出るんだろう。
ああどれにしようかなあ、と悩んでいた時。
「お、タイヨウ。学食行こうぜ」
タイヨウ君のクラスメイトであるナツヒコ君が声を掛けた。
すると、タイヨウ君は、
「ああ。今すぐ行く」
と、答えた。
思わず私は固まってしまう。
「それじゃあ、ミヅキさん。また後で」
「あ、うん……」
小さく手を振って、二人を見送る。
そして私は、梅干しを食べたかのごとく、口をキュッとすぼめた。
そう。なぜかタイヨウ君は、私にだけ敬語なのだ。
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