第2話 童謡やアニソン、テレビ主題歌も。七五調こそやはり王道。
「アルプス一万尺の他には『きらきら星』や国民的アニメ『サザエさん』のオープニングで覚えるというのもある」
「パブリックドメインの方はー」
「『お魚加えた〜』で始まる『サザエさん』のオープニングは作詞
「まあ、そうやろな」
「じゃあ『きらきら星』の方は?」
「『きらきら星』の原曲は18世紀末のフランスで流行したシャンソンあのね、お母さんという意味の"Ah! Vous dirais-je, Maman"だし、英語版"Twinkle, twinkle, little star"(きらめく小さなお星様)の歌詞はイギリスの詩人、ジェーン・テイラーの1806年の英語詩 "The Star" による替え歌だからどちらも著作権保護期間をとっくに過ぎたパブリックドメインだ」
「じゃあ、自由に引用できますね!」
「おっと安心するのはまだ早い!『きらきらひかる〜』で始まる
「『きらきらひかる〜』の方の歌詞が自由に使えないのはちょっと残念ね」
「もっとも昔オレが中国の王朝名の順番を覚えるときに使った替え歌は『アルプス一万尺』でも『きらきら星』でも『サザエさん』でもない」
「じゃあどんな歌だったんですか?」
「実は一つの歌じゃあないんだよ」
「どういうことですのん?」
「オレが覚えるのに使った歌を出す前に、替え歌の歌詞は田中芳樹の『創竜伝』という小説で紹介されていたバージョンだ。こっちは覚える国名が少ないから、イージモードだよ。七五調四行詩の歌と相性が良いから、実にいろいろな歌で歌える。まずは歌詞だけ書くぞ」
サブロウはA4の紙を持ち出してサラサラと書き留めた。
「中華民国だけ『中華』と短くされてるけれど、ざっくりと中国歴代王朝が網羅されている」
「ああ、思い出した〜! ボクもこっちで覚えてましたわ」
「あたしもこんなのだった気がするわ」
「ちなみにカズマとチカはどの歌で覚えたんだ?」
「水戸黄門!」
「どんぐりころころ!」
「ええーっ! 二人とも全然違う歌じゃないですか?」
「はっはっはっ。コレが七五調の面白いところで、歌詞の形式が七五調だったらお互いに歌詞と曲を入れ替えても歌えてしまうんだ。さっきの『水戸黄門』こと主題歌『ああ人生に涙あり』と童謡『どんぐりころころ』も七五調四行詩だから、きっちり入れ替えて歌える」
「ほなさっそく実験してみましょ!」
「どれどれ」
「ちょっと待った。『どんぐりころころ』の歌詞はパブリックドメインだから声に出しても良いけど、『ああ人生に涙あり』の歌詞は著作権保護期間内だから声に出すなよ!」
「よっしゃわかった!」
「ちょっと待って! 『ああ人生に涙あり』の曲だって著作権保護期間中なんでしょう? 歌っちゃっていいの?」
「だーいじょーぶ。これがYouTubeやTikTokなら問題になるかもしれないが、ここはカクヨムだ。実際には音楽は流れない」
「サブロウ先生、思いっきりメタな発言をしている・・・・・・」
「本当、いいのかしら」
「もしも、歌が聞こえてきたなら、それは読者のみなさまの心の中で歌われているのです。また、みなさまが個人で楽しむ分には自由ですが、公の場で歌ったり、SNSに投稿する場合は自己責任となりますのでご注意ください」
「なんか良いこと言ってる風にまとめよったな。ほんじゃまあ、歌ってみよか」
♬ 【水戸黄門の主題歌『ああ人生に涙あり』のメロディで】
ジャーンジャンジャンジャンジャンジャンジャーン、ジャッジャジャジャジャジャッ♬
♬ど〜んぐ〜りこ〜ろこ〜ろ
ド〜ンブ〜リ〜コ〜
お
さあ、た〜い〜へん〜
ど〜じょう〜が〜で〜て〜き〜て〜
こ〜んに〜ち〜わ〜
ぼ〜っちゃ〜んい〜っしょ〜に
あ〜そび〜ま〜しょ〜う ♬
「ホンマや! いけるわ、これ! でも最後のドジョウが思いっきり不審者で事案なんやけど」
「事案ですね〜、怖い怖い」
「あたしの方は『水戸黄門』も『どんぐりころころ』の曲でかわいらしく歌えたわよ。あまりにも明るくて人生に苦しいことが全然なさそうよ(笑)」
「お気楽黄門って感じだな。さあ、本題に戻るぞ。さっきの中国王朝を覚える替え歌、田中芳樹バージョンは、『水戸黄門』の主題歌のメロディで歌うとこうなる」
サブロウは重々しく歌い始めた。
♬ 【水戸黄門の主題歌『ああ人生に涙あり』のメロディで】
い〜んしゅうし〜ん〜か〜ん
さ〜んご〜く〜し〜ん
な〜んぼ〜くず〜いと〜う
ご〜だい〜そ〜う
な〜ん〜そ〜うげ〜ん〜み〜ん
し〜んちゅ〜う〜か〜
ちゅ〜う〜か〜じ〜んみ〜ん
きょ〜うわ〜こ〜く〜 ♬
「うん。ボクが覚えたのはコッチや。やっぱカッコいいわー」
「たしかに、渋いわね」
「中国4000年歴史の重みを感じさせますね」
「ほぼ七五調四行詩のよく似た別バージョンもあるけれど、オレは歌いやすい田中芳樹版を推すよ」
今度はサブロウは『どんぐりころころ』のメロディで明るく軽やかに歌った。
♬【どんぐりころころのメロディで】
「
「明るいんだけどなんだか変な感じですねえ」
「あっという間に歴史が終わってしまったみたい。歌のテンポも早いしアルプス一万尺と違って国名が少ない分だけ短いからかしら?」
「ああ、それを補う二番の歌詞を考えた人もいて、それを参考にオレも考えてみた。もちろん七五調四行詩だ」
「なるほどね。さすがは師匠。二番まで歌えればそれなりにカバーできるわね」
「それで、サブロウ先生はどの曲を替え歌にして覚えたんですか?」
「そりゃあ色々さ。さっきの二曲に加えて『線路は続くよどこまでも』とか。ああこの歌の曲の原曲はアメリカの民謡の“I've Been Working on the Railroad”でパブリックドメインだけど、日本語の歌詞は著作権保護期間内だから勝手に使うなよ」
「「「了解!」」」
「それから八代亜紀の『舟唄』とかチェッカーズの『ギザギザハートの子守唄』とか。もちろんパブリックドメインじゃないけどな」
「歌謡曲もアリですか!」
「この二つの歌も互いに歌詞と曲を入れ替えできて面白いんだけど、七五調でも四行詩じゃないからなあ。中国王朝を覚える替え歌の素材には使いづらいんだ。歌の方が余ってしまうから」
「はいはいはい。そうなりますね」
「七五調四行詩にこだわると、どうしても童謡や唱歌といったいかにも音楽の教科書に掲載されているか、掲載されていたような歌に偏ってしまうんだよな」
「そういうことね。でも師匠のことだから使える歌のリスト作ったんじゃない?」
「おお、さすがはチカさん、お目が高い。その通り! チカが大好きなパブリックドメインでラインナップを揃えてみました。ジャーン!」
サブロウは今度はリストを書いた紙を取り出してみせた。
【使えるパブリックドメインの歌・五十音順】
赤とんぼ(夕焼小焼の、あかとんぼ、)
うさぎとかめ(もしもし かめよ かめさんよ)
浦島太郎(
江戸の子守唄(ねんねんころりよ)
金太郎(まさかりかついで きんたろう)
鯉のぼり 【作詞者不詳。弘田龍太郎作曲】
(
こいのぼり 【近藤宮子作詞。作曲者不詳】
(やねより たかい こいのぼり)
荒城の月 (春
どこかで春が (どこかで春が 生まれてる)
どんぐりころころ
花 (春のうららの
春よ来い (春よ来い 早く来い)
蛍の光
雪 ( 雪やこんこ
われは海の子 (我は海の子白浪の)
「けっこう色々あるんですねえ」
「ホンマやなあ。これ全部歌詞と曲をシャッフルしても歌えるんやなぁ」
「そうなんだよ。脳トレにもなるぞ」
「でも、あれ? あの歌が見当たらないというのもチラホラとあるような」
「ああ、漏れてたらすまん。他に七五調四行詩で歌いやすいけども、パブリックドメインじゃないから歌詞は見せられないよって奴はコレだ」
【使いたいけどパブリックドメインではない歌・五十音順】
うれしいひなまつり
お正月
線路は続くよどこまでも
たきび
めだかの学校
「ああ、残念ねえ!」
「ココではやらないけれどこっちの歌もさっきのリストと同様に歌詞と曲を入れ替えできるぞ。そしてもちろん中国の歴代王朝を覚える替え歌に使える」
「そうでした。そちらが本題でした」
「まあ、コレだけあったら覚えやすい好みの歌が見つけられそううよねえ」
「フフフ。キミたちはまだ甘い。次回はもっとはっちゃけた色んな歌であの中国歴代王朝の替え歌が歌が歌えることを教えよう」
「ええーっ!
「師匠も暇ですねえ」
つづく
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