第4話 再会

 そして目が覚めると、窓から爽やかな風が入り込み、平穏な朝が始まった。私は、学校に行き、あんな悲惨な状況を乗り越えてきたからか、私に対する嫌がらせには、相手に強気で抗議した。そして、つまらないことは無視することにした。そうしているうちに、私をいじめる人はいなくなった。


 どうして、こんな簡単なことが、これまでできなかったんだろう。怖かったから、面倒だったから? 多分、我慢だけしていれば、今はおさまると安易に考えていたんだと思う。でも、そんなことはなかった。


 こんな平和な世の中は、自分次第で幸せに生きることができる。それだけで、幸せなことなんだと気づいた。これまで世の中は灰色に見えていたけど、新緑からは光がもれ、とっても綺麗。色々なお花が一斉に咲き始めた。楽しそう。


 これまで気づかなかったけど、鳥の囀りも聞こえてきた。蝶々とかも、楽しそうに飛んでいる。人間だけじゃなくて、色々な動物がこの地球で楽しく生きている。


 川では水が流れ、海辺では波が寄せ、動物でなくても、自然そのものが生きているみたい。そんな地球にいて、私たちは、本当に幸せなんだと思う。


 そして、人は、道路でも、電車でも、どこでも、みんな大切な人を想い、大切な時間を過ごしている。笑顔を見ると、この人が、自分の力で幸せな時間と空間を生み出し、前に進んでるんだと思えるようになった。


 あと、2年で、あの世界になるのかもしれない。だから、今は精一杯楽しんで、そして、親に言って東京から地方に逃げよう。


 あの話しをして、私が地球防衛軍を作るなんて無理。誰も信じてくれないだろうし、私が気狂いだと思われるだけ。勇気がないだけかもしれないけど、そうは言っても、私は普通の女の子で、ちっぽけな存在だもの。


 そのうち、宇宙人が攻めてきて気づくしかないと思う。私にできることといったら、都市から地方に移住しましょうということぐらいかな。一応、日本政府に、2年後からということで投書しておこうかしら。


 でも、あの先はどうなったんだろう。あの時の私は、あれからも生き延びられたのかしら。今でも、私が生き残ったのは本当に申し訳ないと思うけど、その分、誰かのために自分の命を捧げようと、頑張らなければいけないという気持ちは心の中に残っている。


 あの日から、戦闘の現場に戻ることはなくなった。あの時間が私を強くしてくれたし、暖かい人の気持ちを知ることができた。誰に言っていいかわからないけど、感謝してる。


 夏が終わり、紅葉で真っ赤に色づいた風景、雪が降る都会の光景、四季とともに、私たちが暮らしている光景は刻々と変わり、いずれも美しい。本当は、ずっと、このままの地球であってほしい。


 そういえば、最近、あの時の男性たちの顔を、一人ひとり、はっきりと思い出す。あんな状況だったのに、みんなイキイキとしていて、なぜか、楽しそうだった。みんな凛々しかった。


 もし、あの後、人類が生き残り、歴史とかになったら、鬼軍曹とかいて、若者は自爆を強要された、みんな可哀想とかいうかもしれないけど、本当は全く違う。確かに怖かったかもしれない。でも、みんな、大切な人のために、自分の意思で、自分から突進していった。


 なぜか、この平和の時代より、男性どうしで、1分、1分が充実して、生きているありがたみをみんなで共有していたように思う。女性にはわからない、男性どうしの友情というものかしら。


 でも、少しの時間でも男性になって、男性たちと過酷な時間を一緒に過ごすことで、少しは男性の気持ちもわかるようになった気がする。


 カフェで、ぼーっとしていた、その時だった。あの戦闘で私が過ごした男性の体の顔とそっくりな人が、私の横を通りかかった。1人でコーヒーでも飲む感じで。私があの戦闘で、あの時間を過ごしたのは、この人としてだった。あの時と違って、清潔で、ひ弱そうな学生だけど、間違いはない。


「あの、もし、よろしければ、一緒にパフェ、食べませんか? なんか、不思議なんですけど、あなたから、懐かしい雰囲気を感じたので、話したくなって。木村さん、いいですよね。」

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男性の気持ちは戦場で知った 一宮 沙耶 @saya_love

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