第5話 三人で食べるお家ご飯
……
近所のスーパーに到着した三人。
店内に入ると早速稀子が、嬉しそうな表情と陽気な口調で、俺と鈴音さんに向けて話し始める。
「ねぇ、比叡君に鈴ちゃん!」
「今晩は何を食べようか!♪」
稀子の言葉の後。
鈴音さんが『やれやれ』の表情で稀子に話し始める。
「稀子さん」
「ここはスーパーの店内で有って、家では有りませんから…」
「そんなはしゃいだ声で話されると、周りの迷惑に成りますよ」
「え~。良いじゃん鈴ちゃん!」
「私は、普通に食べたいのを聞いているんだから~♪」
「それで、どうする。比叡君?」
「私は、比叡君が望む物を作るよ!♪」
鈴音さんの言葉の後。
稀子は鈴音さんから注意を受けたにも拘わらず、笑顔で俺に向けて話す。
「……」
(こう見てみると……鈴音さんが姉に見えて、稀子が妹に見えるな…!)
(俺は選択する相手を間違えたか!?)
……
今晩の晩ご飯は、三人いる事も有って鍋に決まる。
鍋ならそんなに手間が掛からないし、仲良く鍋をつつく事が出来る。
この料理を作るのは稀子で有った。
鈴音さんも料理は作れるらしいが、鈴音さんはカレーなどの煮込み料理が得意らしい。
「~~~♪」
稀子は楽しそうな表情で、鍋の具材を買い物カゴに入れていく。
定番の白菜やえのき。豆腐や糸こんにゃくなどを……
稀子が先陣を切って、買い物カゴを持って歩く中。俺と鈴音さんは横歩きで歩いている。
鈴音さんが嬉しい表情で、俺に話し掛けてくる。
「稀子さんのお陰で、私たちはデート気分ですね♪」
「比叡さん!♪」
「そうだね、鈴音さん♪」
「稀子は『あぁ』言ったイベント事が好きだからな」
「それに鍋は、稀子の得意料理の一つだからな!」
俺は和やかな表情で鈴音さんに話す。
稀子の料理は旨いと言うより、安心する味で有る。
なんと言えば良いのか……お母さんの味と言えば良いのだろうか?
鈴音さんは、微笑みながら俺に話し始める。
「その感じですと、かなり比叡さんは稀子さんの事を気に入っていますね!」
「これだと、安心出来そうですね!!」
「でも、私も得意のクリームシチューとかで、比叡さんの胃袋を掴もうかしら♪」
「……」
(冗談か本気かは分からないけど、鈴音さんは稀子の事をやはり……気に掛けているんだな…)
☆
スーパーから俺の家に戻った三人は、手分けをして晩ご飯の準備を始める。
稀子が調理のメイン担当。鈴音さんが稀子の補助。
そして俺は、食器出しなどの雑用で有った。
「~~~」
「~~~」
台所で、稀子と鈴音さんが仲良くやっている中。
俺はちゃぶ台に、カセットコンロを用意したり小鉢を並べて行く。
……
『ぐつ、ぐつ、―――♪』
『ぐつ、ぐつ、―――♪』
調理を開始してから約30分ぐらいで、鍋の方は完成する!
俺の家には土鍋が無いので、家で一番大きい鍋で代用する。
鍋の方は水炊きで有った。
鶏もも肉や肉団子。豆腐・野菜類もたくさん入ったお鍋で有る!
『いただきます!』
三人仲良く。食事前の挨拶をしてから、鍋をつつき始める。
俺はお酒が飲める年代で有るが、今晩は稀子達と同じコーラで我慢する。
「比叡君♪」
「私が、
稀子は笑顔で俺に向けて言いながら、俺の小鉢を手に取って、その中に鍋の具材を入れ始める。
それを見ていた鈴音さんは『あらら』の表情をしながら呟き始める。
「あ~~。稀子さんに一歩先を越されてしまいました///」
「私が装って上げようと思っていたのに…」
「ほい。比叡君!」
「たくさん食べるんだぞ!!」
稀子は笑顔で言いながら、小鉢にたくさん盛られた鍋の具材を俺に手渡す。
「……」
(少し盛りすぎだぞ。稀子)
(水炊きなのに、これではポン酢を付けられないよ(汗))
稀子は勢いのある子で有るが、勢いが乗りすぎている時もある。
これを適度が出来れば、稀子はもっと魅力的に成るのだが。
「~~~」
鈴音さんは和やかな表情で、自分の小鉢に鍋の具材を装っているが、稀子と比べて装い方も丁寧で、綺麗な盛り付けをしている。
(鈴音さんと食事をするのは初めてで有るが、やはりお嬢様の雰囲気が出ているな)
(稀子は少しがさつだから、鈴音さんを結果的に引き立ててしまっている)
『パクッ』
俺はそんな事を感じながら、ポン酢を付けられない上の具材から食べる。
水炊きだから素材の味しかしなく、美味しいとは言いにくい///
比較をしては行けないが、俺の中では鈴音さんも悪くないと思い始めていた。
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