体育祭当日

第13話

体育祭当日。


「はぁ…」

「何ため息ついてるんですか」

「仕方ねぇだろ。面倒臭いんだから」

「そんな事言わないで、応援してください」

「分かったよ」


俺は、ローズに言われるがままに、応援をしていた。

喉も枯れていて、あまりに声がガラガラなので、先生が特別にのど飴を持ってくる事を許可してくれた。


「次の競技は何だ?」

「リレーです」

「マジかよ…」

「嫌がらないで、早く準備してください」

「分かったよ」


リレー。


早速始まり、周りがうるさくなる。

俺は、遅いので、後ろの方だから、退屈だ。


その前にローズが走る事になった。

ローズがバトンを取り、走り出す。


それを機に一斉に男子共がうるさくなる。


「うるさ…!」


そんな声もかき消されてしまうぐらいにうるさかった。

しかし、ローズは速く走りそれはすぐに収まった。

俺の体感では、結構長く感じたが。


時は進み、俺の出番。

バトンを手に取る。

走るが、周りは静かに聞こえた。

最高だ。

俺は静かなのが好きなんだ。


「一志君!頑張って下さい!」


……………!

何やってんだローズ!


「一志君!頑張れー!」


海!お前もか!?

しかもニヤニヤしてやがる!

アイツ、俺が嫌だって事分かってやってんな!


「後で覚えてやがれ」


そう吐きながら、速く走り終わろうと、加速する。

そして、バトンを次の人に渡し、走り終わる。

そそくさと戻り、座ろうとするが、


「やぁ!一志君。頑張ったねー。これも、私の応援のお陰かな?あ、それとも、ローズちゃんの?」

「…」


俺は、強力なデコピンをくらわせた。


「痛っ!何するのー」

「うるせえ、早く元に戻れ」

「分かったよ…」


そう言うと、海はトボトボと帰って行った。

そんなやり取りをしているうちに、リレーは終わったらしく、終了の準備をしていた。



リレーが終わって。


「さて、一志君。引き続き応援しますよ」

「いや、すまん。トイレ行ってくる」

「そうですか。良いですけど、早く帰って来てくださいね」

「分かったよ」


────────────────────

「ははっ!これで、こんな体育祭なんて、ぶち壊してやる」

男はそう言いながら、ライターと爆竹を握りしめた。

「止めとけ」

「!?」

俺がそう言うと、男は驚いた顔でこちらを見た。

「くそ!なんでここに人が!人は通らないはず!」

「サボり場所として丁度いいんだよ」

「クソ!こうなったら、お前を…!」

「俺は、体育祭をぶち壊すっていう意見に賛成だ」

「!?」

「体育祭なんて、無くて良いのに。誰が考えたんだ、こんなクソみたいなイベント」

「うるせぇ!」

「…。お前は何に不満を持ってるんだ?」


俺は、近くにあるベンチに横たわりながら聞く。


「…ローズだかがいる、体育祭だよ」

「原因アイツかぁ…」

「知り合いなのか?」

「そうだよ」

「どんなやつかは分からないが、そいつのせいで、他のチームがそいつを勝たせる事にしか執着してる。俺は何せ3年生だ。これが最後の体育祭になるだろう。だから、真面目にやりたいのに…!アイツのせいで!」


とんだスポーツバカらしい。

勝てないからでもなく、まともな勝負が出来ないから怒るって。

俺はそんな事一生無いだろう。


「それで?付けないのか?」

「何を?」

「お前の手に持ってるのだよ」

「…?」

「早く付けろよ。俺が責任を負うよ」

「…良いのか??」

「あぁ」

「じ、じゃあ…」


カチッ


「あれ?」


カチッ、カチッ


「つかない…」

「そうだ、お前にいい教訓だ。落し物はしない方がいい。例えば、ライターとか。誰かが火がつかなくなるまで、使うかもしれないだろ?」

「お前…!」

「なんだよ?」

「クッソォォォォォ!」

よし。

スマホで録画しているから、後は殴られてそれを結衣先生に出せば良いだけ。

簡単な仕事だぜ。

「あ!ここにいたんですね!」

「…ローズ!」


まずい!ここに今来たらコイツが何をするか!?


「ローズ様!」

「は?」


は?


「ローズ様!何もございません!どうぞお気になさらず…」


コイツ手のひら返しスッゴ!

最高記録狙えるよお前。


そう驚きながら、今まで録画していたスマホに向かいそれを見せようとする。


しかし…。


「グッ!」

「おい、何してんだテメェ?」

「ギブギブ。何もしてないから、」

「その動画、消すよな?」

「その人から離れてください」

「…!」


男は渋々と離れた。


「一志君。それを見せてください」

「ほい」

「…」

「どうだ?」

「あなた、最低ですね」

「ガーン…」


と男が、膝から崩れ落ちる。


「あなたもですけど一志君。体育祭がいらないなんて、冗談でも言わないでください」


「…分かった」


冗談じゃないんだがな…。




そして、その動画は結衣先生に渡し、その男子生徒は、どこかへと連れていかれた。



結果発表。


体育祭もやっと終わり、結果発表の時。


「今年の体育祭の優勝は…」


とアナウンスが入る。

俺以下は祈るばかりだ。


「赤組です!」


俺達の組団。

つまり、


「「「「よっしゃー!」」」」


俺達の勝ちだった。

皆大抵はそれを聞いてうるさくなるが、


「一志君!勝ちましたよ!」


とローズのキラキラした目で言った興奮気味の声で皆が一斉に静まり返った。


「とても嬉しいです!」


この場にいる全員(もちろん、俺以外)が、

あぁ、勝って良かったと、

ローズに勝利を貢献出来て良かったと、

一志、まじ許さんと、

憎悪の嬉しみを混ぜ合わせた最悪の雰囲気になった。


これにて、2年生の体育祭、

終了。

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