遊ぼう!(2回目)
第14話
「キャー!怖い怖い!一志君助けて!」
「…!また何か来ましたよ!」
「…」
どうして、こうなったんだ。
数日前。
体育祭も終わり皆も落ち着いてきた頃。
「ねぇ一志君!遊ぼうよ!」
「…」
「なんでそんな嫌な顔してるの…」
海がそう言ってきた。
前、遊べなかったからだろうか。
海はいつもよりしょんぼりしていた。
「…分かったよ。行けばいいんだろ」
「…うん!」
「でも、前みたいにノープランはやめろよ」
「分かったよ!」
海は喜びの余り鼻歌を歌いながら頷いた。
…本当に分かっているのだろうか。
それからの話し合いにより、遊園地に行く事にした。
そして、遊び当日。
『すまん。急に用事が出来た』
「えっ?」
『それじゃ』
「おい待て!」
ツーツーツー。
そんな電話の音が無惨にもなり響いた。
急な優の休み。
つまり、
「あら、優さん休んでしまったのですか?」
「えー!つまんない!」
この2人と遊ばなければならない!
しかも、今日は貸切では無い。
周りの目もある。
ローズと海は学校の中で可愛いと有名である。
そんな2人と俺1人…。
「ちょ、帰ろうかな」
「え?やめて」
と海が即答。対するローズは…。
「黒服」
「すみません」
脅してきた。
実はさっきからチラチラと黒い服のゴツイ男が俺達の事を見ていた。
多分ローズの護衛で、心配で見に来たのだろう。
もし、ローズが何かしようものなら俺は黒服に殺される。(言い過ぎ)
俺はもう袋の鼠だった。
「はぁ…。じゃあ行くか」
「うん!楽しみだなー」
「そういえば遊園地とはどんな所なんですか?」
「うーん?なんて説明すれば良いんだろう?」
「乗り物乗ったり、怖いやつ行ったり、何だろうな?とりあえずやって見れば分かるよ」
そう言ってまずはお化け屋敷に入ったのだが…。
「きゃー!」
「一志君ー!」
「…」
そして今に至る。
片方の腕ずつに海とローズが腕を組んできて
耳元で叫び声が聞こえるという地獄。
オマケに、驚かせるのは人間で、ほとんどが男であった。
だから、俺達を見ると、演じている恨みが、
本当の恨みに変わってしまう。
そのせいで、俺の所に襲って来るが、
その都度ローズと海が酷く怯えるので、帰って行く。
それを何回か繰り返して、やっと出口に到着出来た。
「はぁー…」
俺はため息をついた。
体力的にも精神的にも疲れていたのだ。
「「はぁー…」」
同じようにため息をつく2人。
きっと怖さで、疲れたのだろう。
ローズはともかく、海までが怖いのが苦手なのは初めて知った。
それにしても、
「早く俺の腕から離れてくれないか?」
海とローズは出口から出て暫くしても俺の腕と組んだ状態だった。
「あっ!ごめん!今離すよ!」
と海が腕を離そうとした時、
ローズがとんでもない事を言った。
「私は、まだ怖いので…もうちょっとこうしていたいです」
ローズさーん!男女が腕を組むという行為の意味知ってますかー!
と思い、断ろうとしたら…。
「ダメ…ですか?」
と聞いてきた。
「…分かった。良いよ」
「ありがとうございます」
俺の理性くーん!働いてくれー!
「なっ!」
と海が驚いていた。
そして、海が言った。
「私も!怖いから、もう少し」
海…お前もか。
「…いい、でしょ?」
「良いよ」
理性!てめぇぇぇぇぇ!働けぇぇぇぇえ!
お前に休日あっちゃだめなんだよ!
「でも、次のアトラクションまでな!」
「分かりました」
「うん。それでいいよ」
理性が働いた!でも、断るまでやって欲しかったなぁ…。
そうして、次のアトラクションまで行く事になったのだが、男達の殺気の目がすっごい。
距離は短いはずなのに、無駄に長く感じた。
「次はこれ乗るか」
着いたのはジェットコースター。
「で、着いたから早く腕離してくれない?」
本当にここに来るまで腕を組んでいたローズと海。
とても周りの目が痛かく、もう我慢の限界だった。
「分かりました」
「なら、私も」
と腕を離してくれる。
「はぁ…」
良かった。
本当に良かった。
「じゃあ、乗ろう!」
いつもの元気さを取り戻した海が楽しげに言う。
だが…。
「う…」
「ローズ大丈夫か?」
「いいえ、とても気分が悪いです」
「そうか、待ってろ。今水持って来るから」
「ありがとうございます…」
まさかローズがジェットコースターで酔うとは。
「海、水持ってくるから、その間ローズの事見てくれ」
「いや、行かなくていいよ」
「えっ?」
海はそう言い、ローズの手を取った。
「大丈夫。治るから」
そんな事を言っているが、明らかに具合が悪そうだ。
だがしかし、段々落ち着いてきたのか、ローズは顔色がよくなった。
「ありがとうございます…。良くなってきました」
そう言って立とうとするローズ。
でも、まだ治ったばかりだ
「まだ座ってろ。一応水取ってくる」
と言い、近くの自動販売機に行って、水を買い、ローズに渡した。
「ありがとうございます」
そう言い水を飲んで、一息ついて言った
「次、どこか行きましょう。もう大丈夫なので」
「そうか、良かった」
そうして、俺達がやってきたのは…。
「観覧車か…」
「子供の頃以来だね」
「私は初めてなので、楽しみです」
「…」
俺達は観覧車に乗る
「これは…どういうものなんですか?」
「1番上に行くと分かるよ」
「そうなんですか」
「だよね。一志君」
「…」
「?なんでさっきから黙ってるの?」
「…俺、高所恐怖症なんだよ」
「あっ、そうだったね」
「なんで乗ったんですか…?」
「1人で待ってるのはなんかなぁ…って思って」
「普段そういう事を考えないのに珍しいですね」
「ローズは相変わらず毒舌だな」
「そうでしょうか?」
「あぁ」
「気をつけます」
「是非ともそうしてくれ」
そんなくだらない話をしていると頂上につく。
「綺麗だ…」
紅い夕日が輝いて、空には「自然」という美しさがそこにはあった。
それは高所恐怖症なんか忘れるぐらい、息を飲むぐらい、来世でも覚えてそうなぐらい、
綺麗だった。
俺達は、ただその美しさを眺めていた。
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