楽しい旅行の後の地獄

第11話

翌日。

俺は海に直接会って文句を言おうとしたら、優が驚いた顔してから俺に言ってきた。


「おい!一志これ見てみろ」


見るとホテルの前で女性の手を引いている俺の姿…に見えてしまう写真。

これは、あの女性が落ちてた財布を拾ってくれた時の写真だ。

「これが流れてきて噂が流れてるんだ!」

「マジかよ」

「一志は何もしてないよな!」

「そうだよ。この女性は落とした財布を拾ってくれただけだよ」

「そうか。この写真は本物だけど、誤解を生むような構図になってる…」

「そんな感じだ」

「早く誤解を解かなくちゃ!」


そんな足掻きも虚しく。



「おい皆コレ見てみろよ」

と誰かが言った。

見せているのはやはりさっきの写真。


「偶然これ見てさー。一志何してたんだよー」

「…その女性は俺が落とした財布を拾ってくれたんだ」

「おいおい!言い訳は良くないぜぇ!」

「言い訳じゃ…!」

「確かにぃ!そう見えるけど本当は、やましい事してたんじゃねぇのか?」

「やってねぇよ!」

「本当かよ?この写真じゃ、この女性が無理やり手引っ張られてるように見えるけどなぁ」

「そう見えるだけだろ!」

「ははは!まぁ、そんなカッカすんなって。もうすぐで先生とか来るからさ。認めいた方が罪が軽くなるんじゃねぇの!?」

「だから…!」


分かっていた。

ローズに仲良くなるほど。

こうなる事が、見えていた。


「そうじゃねぇ!」

「おいおい、往生際が悪いぜ?」

「テンメェ!」


だから、人を信じれていなかった。

ローズと喋る事に、

信じれる気持ちがどんどん遠のいていくのが感じていったんだ。


「暴力は良くないぜ。もっと罪を増やしたいのか?」

「クッ…!」

「お前のお気に入りのローズ様も、残念がってんじゃねえのかぁ!?」


落ちていく。

どんどんと。

闇の方に。

深海の底の方へと。

手には力もやる気も、なくなってしまった。


ローズの方を見る。

ローズは我慢ならなかったのか立った。


あなた、そんな事する人だったんですね。


暗闇から微かに聞こえるローズの声。

それは幻聴か。

でも、次の瞬間にはハッキリ聞こえたんだ。


「あなた達いい加減にしなさい!」

「ローズ…」

「人に寄って集って!恥ずかしくないんですか

!?」


暗闇には光が見えていた。

確かな、すぐそこに掴める光が。


「大体にして!一志君がそんな事する訳ないじゃないですか!」


ローズはそう言った。

俺の為に。

俺はローズの事を信じれなかったのに。

ローズは俺の事を信じてくれた。

その事実に気がついたのには

あまりにも遅かった。


「…一志君は、そんな事しません。私に会っても、表情1つ変えませんでした。いえ、変えましたけど、嫌な顔でした。そして、私と同じような境遇なのに、頑張ろうとしない所が私には凄いと思いました。自分のやりたいようにやろうとする所が。それが例え、自分自身を傷つけていても」


ローズはそう言うとそいつに言う。


「だから、一志君を悪者扱いするのあなたは嫌いです。そんな事する理由もなんとなく分かります。私と一志君を離させたいのでしょう?」

「…!」

「無言は賛成とみなします」

「いや!俺はただ!」

「なんですか?」

「…!クソ!」


そいつが逃げようとする。

そこに…。


「話は聞いたぞ」


先生達が。

俺を追い詰める為に呼んだのだろうが、

まさか自分を追い詰めるとは思っていなかっただろう。

とても驚いた顔していた。


「さて、遅れてすまない。ここからは、ちゃんとした、話し合いをしようじゃないか?」

「ヒィ!」


その後、そいつが全てを自白した。

たまたまそれを撮った事。

それを拡散し、ローズと俺を引き剥がそうとした事。

もちろん、先生に怒られた。

…ただ、どうやって怒られたか分からないが、

帰ってきた時には恐怖と絶望で死にかけていた。

これから悪い事をする奴は減りそうだ。


放課後。

「ありがとう。ローズ」

俺はローズに礼を言っていた。

「いいえ、別にいいですよ」

「いや、ローズが言って無かったら俺は今頃アイツみたいにこってり締められたかもしれない」

「…そうですね。あの人とてつもない顔してましたので…とても怖く感じます」

「しかも怒った奴が俺達の担任っていう」


そう。さっきまでの男口調は俺達の担任である結衣先生だ。


「これから悪い事しない方がいいですね」

「そうだな」

無言の時間が生まれてしまう。



「本当にありがとうな」

「だから良いですってば」

「いや、お礼をしたいんだ。…すまない。俺は、今までローズの事を信じて無かった。信じれなかった。それが言い訳だ」


「…なら、今信じてください」

「え?」

「ほら、早くしてください」

「いや、どうやって」

「気合いですよ。気合い」

「分かった信じるよ」

「なら、友達になりましょうよ」

「えっ?」

「今まで、友達になろうなんて言ってませでしたので」


「…そんな事でいいなら」

「はい。じゃあ、これから何かあったら、一番最初に私に頼ってください」

「それじゃあ、かっこ悪いじゃないか」

「別にいいんですよ。人は助け合いながら生きていますから」


「…そうだな。じゃあ、これからよろしく」

「はい。よろしくお願いします」


俺は今日初めての海以外の信じれる人と女友達が出来た。

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