旅行

第10話


「次の土曜日も遊ぼうよ」



遊んだ日から数日。

海がそう言ってきた。


「悪いがパス」

「えー!何でよー!」

「旅行行くんだよ」

「そんなのどうでもいいじゃん!」

「よくねぇよ!」

「何でー!」

「俺がいなくても他の2人いるだろ」

「そうだけど、優君は『男子1人はちょっと…』って言って、ローズちゃんは『信用出来る人がいないと行きたくないです』って言ってるから…」

「そうか。…待て?優の言い分は分かるが、ローズはお前がいるから大丈夫だろ」

「一志君がいいんじゃないの?」

「違うだろ。聞いてみろ」

「分かった。聞いてみる」



そうして海はローズのもとへ行き、聞き出した。

話の内容は分からなかったのだが、ローズが嫌な顔をしていた。

…そんなに海の事が嫌いなのであろうか?


「聞いてきたよ…」

「どうだったんだ?」

「一志君じゃないとダメだって」

「えー…」

めんどくせぇ…。

何でよりにもよって俺なんだよ。

せめて海も信用してくれ。



とそんな事を思っていると、海が機嫌悪くなってるのに気がついた。


「どうした?そんな機嫌悪くして」

「そんな事ないよ」

「いや…」

「なーに?」

「!?…」

怖い…!海ってこんな怖いっけ!?

笑顔なのに、目が笑ってない!

俺はガタガタと震えていた。

「そんなに震えてどうしたのー?」

「…!」

「ねぇ」

「なん…でも…ありま…せん…」

「そう」


そうして俺は何とか逃げ切った。



土曜日。

俺は旅館に来ていた。



メイドが勝手に決めた旅行。

それは俺の心身共にリラックスしてほしい為のメイドと2人旅行であった。

それ程の金はどこにあるのだろうか。


本当は行きたくなかったが、

聞かされた時にはキャンセル料が発生する時だったので、仕方無く行かざるを得ない事になってしまった。


これが無かったら今頃遊んでいただろうなぁー。


そう思いながら、どこかを観光していた。

もう、場所を覚えていないぐらい面白く無かった。

だが、旅館は楽しみだった。

普段は行けないような所だから楽しみだ。

海には

「写真撮って送って」

と言われたのでそうするつもりだ。

その時はまだ恐怖があった。


閑話休題。



「先に私達はチェックインしてきます」

「分かった。待ってるよ」


そうして待っていると後ろから声をかけられた。


「あの、これ落としてますよ」

「えっ?」

そうして俺は後ろを見ると知らない女性が俺の財布を持っていた。

「あ!ありがとうございます!」


そうして俺は感謝をした。

女性はホテルの方へと歩いて行ったので、きっと同じく泊まる人だろう。


「チェックインしました。一志様、お忘れ物は無いでしょうか?」

「無いよ。落とし物はしたけど」

「そうですか。ちゃんと拾いましたか?」

「あぁ」

「それなら良かったです。早速部屋へ行きましょうか」

「分かった」



「おぉ…!」


部屋に到着。

とても広く景色もいい物だから、驚いてしまった。


「ここが、一志様の部屋でございます」

「マジか…」


早速スマホを手に取り写真を撮る。


「珍しいですね。一志様が写真撮るの初めて見たかもしれません」

「海に撮れって言われたんだよ」

「そうですか…海様に…」

「ん?どうしたんだ?」

「将来の婚約者の候補としてもよろしいでしょうか?」

「海はそんなんじゃねえよ」

「しかし、前はそんな事なかったのに、急にどうしたのですか?」

「気分だよ気分」

「そうですか…」

「大体俺は結婚するつもりは無いんだ」

「何故ですか?」

「…」

「まだ、人を信じれないと言うのですか?私達も、自分自身も」

「別にいいじゃないか」

「…失礼しました。では、部屋に戻ります。何かあればお伝えください」


そう言ってメイドは出ていく。

「…」


無言になった部屋で、1人。

俺は用意されていたベットに転がり込んだ。


人を信じれないのですか?


そんな声が俺の頭の中で再生される。

俺は、まだ人を信じれていない。

でも、それを隠しながら、


優と、

ローズと、

喋っている。


海の前の安心感もこの前ので壊れてしまった。


俺は、いつになったら…。


「一志様。夕食の用意が出来たそうです。行きましょう」

「分かった」




「…!」

バイキング会場に入りまたもや驚いた。

「すげぇ…!」



カニにステーキなど、好きな物づくしだ。

これまで旅行は何度かしたが、全て高い物で、嫌だった。

俺は何故か貧乏舌だったから、ちっちゃい頃とかにエビフライ食べた時とか感動を覚えたね。


「一志様は本当にこういうもの好きですよね」

「まぁな。貴族みたいな堅苦しい生活嫌だからさ」

「…本当にお父様に似てきましたね」

「何?父さんもこんな感じだったの?」

「はい。なのでお母様から怒られてましたよ」

「母さんは真面目だったんだな」

「そうです。さて、そんな話していると他の者に取られてしまいますよ。早く食べましょう」

「そうするか」

俺は好きな物をどんどんと取っていき、

席に座り、写真に撮ってから食べた。



「はぁー、満腹」

「それは良かったですね」

「そうだな」

「ちゃんとお風呂も入ってくださいね」

「お前は風呂まで付いて来るなよ」

「…承知しました」


普段からこのメイドは風呂に入ってきてくる。俺もいい年頃なので、やめて欲しいが、止めない。何がしたいのだか。


「ふー」

温泉に入り、一息。

日々の疲れを流してくれるかのように体から疲れが無くなった。


「にしても、誰もいないな」


辺りを見回すが、誰もいない。

2人旅行なので、一般客もいるはずだが…。

こういう所で1人だと、テンションが上がる。

俺はのぼせない程度にお湯に浸かり、風呂から上がり、部屋へと戻った。



部屋に戻り、ベットに寝転がっていた。

何もする事が無い。

なので、写真を海へと送った。

すると返信が。

「へー。いいなー」

なんか、海らしいな。

先日の殺気の籠ったオーラは何だったのだろうか。

すると海が聞いてきた。

「これって貸切?」

「分からない」と返信。

「メイドさんに聞いてみて」

と送られたので、メイドの連絡先を開いて聞いてみた。

「これって貸切?」

「いいえ。でも人が少ないですね」

確かに…。

「何でだ?」

「さぁ、忙しいのでは無いでしょうか」

それを見て

俺達は何なんだ。

そう、思った。

さておき、海へ

「貸切じゃないって」

と送った。




「…既読無視かよ」

まぁ、どう返信したらわかんなそうだし。

「眠い…」

まだ早いが、寝よう。

そして朝、風呂に入ろう。


そうして寝た。



翌日。

起きた頃にはもう帰る準備をしなければならない頃になっていた。

「…」

俺は自分が早起きが苦手な事が分かった。

「作者は夜中の1時に起きるのに…」

そんなメタ発言をして、帰る準備をした。




帰る時、着信が来た。

ローズからだ。

「旅行行っているのですか」

何で知ってんだよ。

「そうだけど、何で知ってんだ?」

「海さんから、画像付きで教えてもいました」

アイツ…。

俺はふざけるなと思いながら帰った。

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