初めての男友達

第8話

「識道。ちょっといいか?」

昼休み。俺は知らない人に話しかけられた。



「?どうした」

「どうしたもこうしたも、委員会だろ」

「そうだったけ?」

「ちゃんと話聞けよな。整備委員は体育館整備だって」

「分かった。じゃあ行こう」

「おう」


体育館整備にて



「ところで識道は何でフロームさんと仲がいいんだ?」

「…それ聞いて何かいい事あるか?」

「うん。仲良くなれるじゃん」

「そうか」

「で?何でだ?」

「さぁな。俺は仲良くしたくないのに、ローズが仲良くしたいとか言い出したから」



「もしかして、それじゃないか?」

「どういう事だ?」

「だって、フロームさんって今まで好かれてきたんだろ?それで、邪な考えをもっている男子とかが、近寄ったりして、嫌になってたけど、自分と仲良くなりたくない、って人は初めなんじゃないか?」

「そうだな」

「それに関心持って近づいたんじゃないか?この人なら、自分に何もしないんじゃないかって思ったんじゃないのか?」



「…そうかな?」

「そうだろ」

「…何で、仲良くなりたいって思うんだ?」

「そんなの普通に友達になりたいんだよ」

「そうか。…。きっとなれるよ」

「そうか?ありがとな」

「今更聞くのもなんだけど、お前の名前って?」

「…本当に今更だな。優だ」

「名前の通りだな」

「どういう事?」

「優しいって事だよ」

「ありがとな」



体育館整備が終わり、戻っているところ。

軽音部が練習していた。

そういえは近頃、何かの大会とか行うらしい。

それを見て優は呟いた。



「…いいな」

「ん?何が」

「あ、いいや…。俺、実は軽音部に行こうとしてたんだ」

「そんなのか?なら、行けばいいじゃないか」

「いや、俺ん家貧乏でさ、楽器も、学校に無いみたいだし。俺は諦めたんだ」



「そうか…」

「…。俺は、将来親を楽させてやりたくて。自分の好きな事よりも、親に何かしたいから頑張って金貯めてんだ」

「そう、か」

「俺、母ちゃんが死んでんだよ。父ちゃんは、その悲しさを見せないで頑張って働いてくれてるんだ」

「…」

「ごめん。こんな話聞かせて」

「いや、俺も同じだからだよ」

「えっ?」

「俺は両親がいないんだ。俺の家は金持ちだからメイドが育ててくれてるんだ。でも、それら全部が信じれなくて、今まで人と接しなかったんだ。でも、ローズも人間不信なのに、頑張っていたんだ」



「そうか。識道もフロームさんも…」

「あぁ。でも、それが無くても優はローズと仲良くなれるよ」

「そうか。分かった」

「何なら、紹介しようか?」

「いや、いいよ」

「そうか?まぁ、分かった」



キーンコーンカーンコーン

「あ、それじゃあ」

「あぁ」



放課後

「おい優、それでローズ様と仲良くなれる方法聞けたのか?」

「…」

「どうなんだよ」

「へへっ、独り占めしようなんて考えはねぇよなぁ」

「優、どうなんだ?」

「…何も、聞けなかったよ」

「そうか…。やれ」

「…!」



そうして優は覚悟を決めたように目を瞑る。

だが、その時。



「待ちなさい」

「!?」

「フ、フロームさん!?」

「ローズ様!何でここに!?」

「邪魔よ虫ケラ共」

「…!」



そう言われた男子共は泣き崩れた。

どんだけローズの事好きなのだろうか



「優さん、でしたっけ?」

「そうです。よろしくお願いします」

「ふふ、一志さんに聞いていたのだけれど律儀ね」

「あっ、あまり女子と喋った事が無いので」

「そういう事何だ」

「…あの!友達に…なりませんか?」

「…いいですよ」

「!…」

「その前に、ちゃんと説明して貰おいましょうか。一志さん」

「えっ…?」



今までの経緯を聞いていた俺は、隠れていた所から出た。

「気付いてていたか」

「そうですね。何で今まで気付かれなかったのか不思議です」

「どういう事ですか?」

「私も聞きたいです。さぁ、一志さん。説明、お願いします」

「…俺が忘れ物してな。教室から話し声が聞こえたんだ」



そうしたら、優とヤンキーみたいな奴が絡んでるから、バレないように教室に入ったんだ。



そして、ローズの情報を聞こうとしていからな。

そりゃあ、見放そうとしたんだ。

でも、優はそんな事する奴じゃないと思わなくて。



隠れて聞いてたら、やっぱりそうだった。

何も話さなかったんだ。

自分がどうなるか分かっていながら。



急いで海からローズの連絡先聞いて

ローズに連絡して教室に来てもらったんだ。



「一か八かで呼んで良かったよ」

「偶然私がここら辺にいて良かったですね」

「本当だよ」

「な、なぁ、識道はこれを分かって、わざと…」

優は気づいたのだろうか。

優の事だ。

何が礼をするに違いない。

だから、俺は言った。



「優。分かっても言うもんじゃないぞ」

俺は笑顔で言った。

優は笑顔で、泣いて、

「ありがとう」

そう言った。



優は、

俺の初めての男友達になった。

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