俺は…
第4話
俺は、屋上に逃げ込んでいた。
春だがまだ肌寒くて、でもそれが丁度良くて。
どんどんと、冷静になって行く。
屋上のドアが開いた。
誰が来たのだろうかと思っていたら、
「一志君…」
まさかのアイツだった。
「何だよ」
「…」
たがアイツは、無言で近寄って来るだけだった。
「…」
やがて、アイツは俺の隣へと立つ
「…」
暫く無言の時間が続き、アイツが口を開いた。
「…ごめんなさい」
まさかの謝罪だった。
俺は謝られる事などしただろうか。
逆に怒られるような、
それこそ嫌われる様なことをしてしまったのに…。
「怒ってしまって、ごめんなさい。あなたが、何故かは知らないけど、嫌われるのが嫌なのに、ああいう事をしたくないのに、している事を、知らないで…」
「…」
そうか。俺の気持ちを知ってしまったか。
気づいてくれたのか。
「そうだよ、俺は、嫌われようとしてるんだ。本当はあんな事、したくないんだ」
「何でか、聞いて欲しいですか?」
「あんまり。でも、お前には、聞いて欲しいんだ。つまらない話だけどな」
「聞く覚悟は決めています」
「そうか。じゃあ…」
話すぞ。
「おぎゃー!おぎゃー!」
俺は、金持ちの家に産まれたんだ。
「ご主人様!元気な赤ちゃんですよ!」
それまで、母は何度も流産してしまったので、その場にいる全員がとても幸せだっただろう。
ただ1人─母を除いて。
「ご主人様?ご主人様!?ご主人様!」
母を俺を産んで直ぐに、死んでしまったんだ。
父はその事を悲しんだ。
だが、それを何にも当てつけ無く、
息子である俺を頑張って育ててくれた。
だが、中学を卒業して間もなく、
父が殺された。
犯人は、父の部下であり、優秀な父を憎んでいたらしい。
それから俺は人を信じれなくなったんだ。
家族も。メイドも。何もかも。
でも、海だけは信じれたんだ。
海は俺の幼馴染みで、ただ1人の親友だったんだ。
俺は海がいなかったら、高校なんて行かなかっただろうな。
「これが、俺の話だ」
「そうだったんですね」
「…つまんないだろ」
「…なんて言ったら分からない。でも、私もそんな感じだから、分かりますよ」
「どういう事だ?」
「私の父は、社長で。だから、周りの人からお金目当てとかで近寄られて、その事で前の学校で問題が起こってしまい…」
「だから転校してきたのか」
「はい」
「俺達って似た者同士だな」
「そうですね」
「そうか、お前も辛い想いしてきたんだな」
「…はい」
「ごめん。今までお前の事を見ようとしなくて」
「私の方も。訳も知らずに怒ってしまって」
「これから仲良くしてくれるか」
「はい。よろしくお願いします」
こうして俺達は友達となった。
ここから始まる。恋の物語が。
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