図書館では静かに

第2話

図書館

「じゃ、俺はもう帰るよ」

「だから待ってくださいって」

「なんだよ」

「あなたは、なんでそんなに私から離れようとするのですか?」

初対面の人からはそんなふうに見えるのだろう。そいつがそんな事を聞いてきた。

そんなの決まっている。

変なのと絡みたくないんだ。

そのせいで、俺の平和な日常が崩れるのも嫌なんだ。

「別にいいだろ。お前も、男と仲良くしたく無さそうじゃないか。お前、拍手されてる時、嫌な顔してただろ」

「…。よく分かりましたね。そうですよ。前の学校でも、そんな事が起きてもう男性を嫌いになってしまいました」

「多分、これから男に好きになる事は無いだろう。そうか?」

「はい」

「じゃあ、俺も近づいたらダメだろう」

「…。はい。今でも、何をされるか怖いです」

「尚更…」

「でも、あなたは私の事をどうにも思っていないのでしょう」

「…」

「だから、私はあなたがいいんです。男性の人に慣れる為にも」

「別に無理やり慣れなくてもいいんじゃないか?」

「…フフッ」

「何がおかしいんだ?」

「いや、あなたは意思が硬いなと思いまして」

「そうだな、この硬さじゃ中々俺の意思を変えれないぞ」

「そうね。今どうしようか考えています」

「何する気だよ…」

「じゃあ、私と一緒か、誰かから命を狙われるかどっちがいいですか?」

「誰かから命を狙われる」

「えぇ… 」

「お前と一緒にいるとどちらにせよ殺されそうになるんだ」

「じゃあ、どうしたらいいと思いますか?」

「何もしない」

「それは無いですね」

「何でだよ。俺を解放してくれ」

「では、私といるとして、命の保証があるのと無いのどっちがいいですか?」

「そりゃぁ、ある方だろ」

「じゃあ、決まりですね」

「何でだよ」

「いいでしょう?」

「…あぁ!もう、分かったよ!やればいいんだろ!」

「分かったようで」

「話は終わりか?俺はもう帰るぞ」

「あっ、ちょっと…」

俺はその言葉を聞かないふりして、図書館を出ていった。

「もう…」

「ごめんね。ローズちゃん」

「いいのよ。あと、あなたは…」

「私は追憶 海。よろしく」

「あぁ、あの人が言っていた人ですね」

「うん。それにしても、一志君は、昔あんな人じゃなかったんだけどね」

「…どういう事ですか?」

「ちょっとあってね。人間不信になっちゃって、今まともに話せるのは私なんだけど…」

「じゃあ、私と…」

「そうだね。心境は同じはずだよ。でも、それの対処は…あっ!別に一志君の事を悪く言ってるってわけじゃなくてね。ただ、一志君の事を分かって欲しいんだ。本当は優しい人なの」

「…」


俺は、図書館の前から歩き始めた。

そうして呟く。

「聞こえてるわ」

苛立ちと何かが混ざりあって気持ち悪くなってしまいそうだ。

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