第14話 隙間、3センチメートル
”つんつん”
若草色のカーテンがゆっくりと揺れる。開いた窓が外から優しい風を連れてきて、部屋の中を清々しい空気が流れていく。きっと……あのくらいの美人ともなると、周りを流れる空気も美しいのだろう。
”つんつん”
「…………ねえ。ねえってば、如月くん」
「…………ん? おわぁっっ!!」
「…………っっ!!」
物思いに耽っていたユウが我に返ったのは、金森に呼ばれたからでも袖を引かれたからでもない。ふと横を向いたら、金森の顔が息がかかるほど目の前にあったから!
……慌てて顔を逸らしても、もう手遅れ。
「……急に振り向かないで。びっくり……する、から」
「……こっちこそ。驚いたって」
「だって話し掛けても全然、反応ないんだもん。何か、ぽーとしてて」
「考え事してたんだ」
「考えごと?もう、何かあったかと思って、心配したんだから」
「ごめん、悪かった。本当なんでもないよ……」
「うん。何でもないなら、いいんだけどさ……」
そう言って俯く金森の顔は真っ赤で、ユウはというと内心ドキドキしながら精一杯、平静を装おうとしている。何故、二人はこんな雰囲気になってしまったのか?
何故ってそれは…… 二人は、危うくキスしてしまうところだったから。
「あらあら、二人は仲良しなのね」
そこにトレイに紅茶を乗せた黒木先輩が戻ってくる。何て、間が悪いんだ……
二人でぷるぷるしながら顔を赤くしていると、黒木先輩がトドメを刺しに来た。
「それで、いつから二人はお付き合いしてるの?」
「つ、付き合ってません……!!」
二人が息もぴったりにその質問に応えると、そんな様子をみていた黒木先輩がふふっと嬉しそうに微笑みながらユウ達の前に紅茶を置いた。ふわり……と、いい香りが辺りを包む。
「……どうぞ、召し上がれ。ふふっごめんなさい。私の勘違いだったのね。今日は、いずみちゃんの彼氏を紹介してもらえるのかと思ったのだけれど、どうやら違うみたいね。それじゃあそろそろ、二人でここに来た理由を教えてもらおうかしら?」
そして自らも淹れたての紅茶の香りを楽しみながら、先輩が今日の本題に触れる。二人共、まだ顔が真っ赤だったが、このままでは完全に先輩のペースにハマってしまうと感じたのか、小さく咳払いをしてから話し始めたのは金森いずみだった。
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