第4話 密着……する?


「え……ほっ、本当にするの?」

「うん。だって……入れ替わったのだって、おでこがぶつかったからだし……」


 如月さんが入れ替わったのはおでこが接触したからだと言って、試しにもう一度おでこをくっ付けようと言ってきた。


 お互い瞳に映るのは自分な訳で……だからなんら緊張もしないでしょうと如月さんは言うんだけど。


 確かにそうなんだけど……中の人を勝手に想像しちゃって、もうすでに自分じゃないんだよね。

 いきなりおでこは僕にとってはハードルが高い。


「あのさ……まずは手とかにしない? 段階を経てというか……」


「ん? 良いけど……。じゃあ握るよ?」


 如月さんが僕の手にそっと触れる。そして指を絡めて……ギュッと恋人繋ぎを……。


 ———何これ!?


 自分より大きな手に包まれて……何だか変な感じ。僕はそっちの趣味はないんだけど、これが如月さんだと思うからだろうか?

 心臓の音がうるさい。こんなにもドキドキしているのは僕だけ?

 ふと如月さんの方を見ると……僕から目を逸らして……頬を染めていた。


 少しの気まずい沈黙の後。


「ななっ、何も起こらんかったね」


 如月さんの方から先に手を離した。


「うっ……うん」


 如月さんが頬を染めたまま少し困った顔で「なんかその……変に緊張しちゃうから、おでこにしよ!」と言ってきた。


 ———えっ、まだ心の準備がっ……


 僕の返事を聞かないまま、如月さんはいきなりおでこをつけてきた。

 どう対応して良いのか分からず、咄嗟に目を閉じた。


 コツンと小さな衝撃の後に、ほんのりと温もりを感じる。

 如月さんの呼吸の音までが聞こえてきて……僕は恥ずかしすぎて息ができない。


「もうだめっ」


 僕は耐えきれなくて、如月さんから離れた。その時にやっと瞳を開くことができた。

 その時僕の瞳に映ったのは、さっきよりも頬を赤くした……如月さんの姿だった。


 そんな姿を見たら……僕まで伝染してきてさっきより顔が紅潮していくのが分かる。だってドクドクと脈打っていて顔が熱い。


 少し時間が経つと……深呼吸して落ち着いてきたんだけど。


 如月さんの様子がさっきよりおかしい。

 小刻みに震えて、明らかに挙動が変だ。


「あの……如月さんどうしたの?」

「…………いれ」

「え? なんて」

 

 聞こえなくて聞き返すと、泣きそうな顔になった如月さんが。


「おトイレ! どうしたらええん! 男の人ってどうするん!」


 とんでもないこと言ってきた! 


「トットトトトットイレ!?」


 ちょちょちょっ、僕の体で!?


「そう、もう……我慢の限界なん……あの……持ってするん?」

「持つって……なにを……あっ!!!」


 如月さんがとんでもないこと言い出した。我慢の限界で脳内がパニックなんだろう。


「大丈夫! 座ってしたら、何も触らなくって大丈夫だから!」

「そそっ、そうなん!? わっ、わかった」


 如月さんは慌ててトイレに走っていった。

 ちょっと待って、これって逆もあるわけで…………!!!!!



 想像するだけで恥ずかしい。


 ……僕大丈夫なのかな。


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