面倒だけど、天上に行ってみる

 はあ、天上に来たはいいけど、アマテラスの奴、めっちゃ武装してるじゃん。俺、「根の国行くわ」って説明に来ただけなんだが。なんか面倒ごとになりそうな予感。



「スサノオよ、天上に来た理由を教えてもらおうか」


「いや、俺はお袋のいる根の国とやらに行こうと思ってよ。念のため報告に来たわけ。別に天上を乗っ取りにきたわけじゃないから、マジで」


「それでは、お前が謀反を企てていないという証拠を見せてもらおう」



 相変わらず頭の固い奴だ。報告に来ただけだぜ? 親父といい、俺の家族みんな面倒な奴ばかりだな。まあ天上を乗っ取りに来たわけじゃないし、すぐ証明できるだろ。



「スサノオよ。そなたに邪心がないという証明に誓約をしよう。まずは、そなたの持っている剣を貸してもらおうか」



 え、剣渡したら俺、無防備じゃん。もしかして、アマテラスの奴、俺を殺す気じゃね?



「いいから、早く渡しなさい」


「分かった、分かった。貸してやるよ」



 アマテラスに剣を渡す。でも、どうやって誓約をするわけ?



「それではまずは、私の心が清いと証明しましょう」



 ポキッ。



 は? アマテラスの奴、俺の剣を三つに折りやがった。意味不明なんだが。なんか剣の残骸を口に入れたんだが。正気かよ。



 ボキボキボキ。



 なんか、アマテラスの口から変な音がするんだけど。もしかして、剣の残骸を嚙んでる? あご強すぎだろ。しまいには口から息を吐きだしたんだが。俺でもそんなことしないぜ。あ、なんか三人の女が出てきた。



「さあ、次はスサノオの番ですよ」


「で、俺はどうやって身の潔白を証明すればいいわけ」


「私の身に着けている勾玉を噛んで、そなたも子供を生みだすのです」



 ええと、アマテラスが身に着けてる勾玉って、髪にもついてるんだが。それを口に入れろとか、頭がどうかしてるぜ。まあ、潔白を証明するにはそれしか方法がないらしいし、茶番につきあってやるか。根の国でお袋に会うためだったら、何でもしてやるさ。



「さっさと、勾玉貸せよ」


「そう焦るでない」



 俺は勾玉を受け取ると嫌々口に含んだ。うへぇ。なんか気持ち悪いんだけど。ひとまず、息を吐きだして子供を生めばいいんだろ。それ。俺の吹き出した息からは五人の子供が生まれたんだが。これで、身の潔白を証明できたのか?



「なるほど、そなたに邪心はないようだ」



 なんかよく分からないけど、万事うまくいってるみたいだわ。せっかく天上来たし、アマテラスの奴が気に食わないから、暴れまくろっと。



 手始めに田んぼを荒らしてみるか。あれ、アマテラス全然怒ってないじゃん。むしろ、庇ってくれるじゃん。じゃあ、次は機織はたおり小屋壊してみよっと。



「なんて恐ろしいことを!」



 それだけ言ってアマテラスの奴、洞窟に引きこもったんだけど。なんかそこら中が暗くなり始めたんだけど、まあ、いっか。知ったこっちゃない。あれ、なんだか偉そうな奴らが相談し始めたんだけど。あれ、もしかしてやりすぎちゃった感じか?



 あ、よく分かんないけど、アマテラスの奴、出てきたわ。



「そなたはとんでもない事をした。よって、天上から追放します!」



 え、いきなり出入禁止にされたんだが。まあ、根の国に行くのが目的だしいっか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る