第10話 200歳の妖魔
「え、1日たってるけど、悪ガキ生きてるの?」
黄緑は縁起でもないことを平然と言う。
青春は和花を見る。
「悪魔はまだ、桃泉さんに対価を要求に来ていない。つまり、まだ願いを叶えてない証拠」
来るなら願いを叶えた後。そうなるとまだ三人は無事と判断したわけだ。
だが、全員無事という保証はないが……
「善は急げだ。さっそく向かおう」
「待ってよ」
和花は青春の手を掴み止める。
「因果応報だよ。あいつらなんて助ける必要、ない」
よほど奴らを嫌ってるのだろう。
まあ殺せなんて頼むくらいだし当然か。
「あたしも水かけられたことある。……その上透けたあたしの体をいやらしい目つきで見てきた事もあった。蹴られた事もある。……あいつらなんて大っ嫌い!死んじゃえばいいんだよ!だから……」
「助けに行くのは、桃泉さんのためでもあるんだけど」
「……えっ?」
想定外の答えが返ってきたためか、和花はフリーズした。
青春はお人好しだから、それでも助けたいとか言ってくると想像していたのだろう。
まさか自分のためと言われるとは思ってなかったのだ。
「奴らを殺したら、悪魔が桃泉さんの命を狙ってくるでしょ?対価をもらいに」
「う、うん」
「だから、願いを叶えさせない。そうすれば桃泉さんは狙われない」
「そ、そんな、あたしのため?でもあたしは今まで闇野くんを見捨てて……」
「気に病むことない。僕が勝手にやったことの結果じゃないか」
勝手に和花を守った。その結果いじめのターゲットが自分になった。それだけだと青春は思っていた。恨んでなんてない。
そりゃあ青春は苦しかったはず。でも、だからといって和花が悪いわけではない。そう理解してるのだ。
「僕を思って悪魔に願い殺される。そんなの、助けるに決まってる」
「闇野くん……」
「気にしないで。でも助けるから、僕にも対価ほしいな。缶ジュース一つ、奢ってよ」
いつもの要求する対価だ。
それをしないと自分の契約してる悪魔のヒルダの嫉妬に合う。
※3話参照。
黄緑に言った時より対価が大きいのは、今回の相手がおそらく強大だからだ。
それでも缶ジュース一つなんて安いものだが。
和花は顔を赤らめて頷く。
「うん、ジュースくらいいくらでも奢る」
「いくらでも?あまりそういう事軽く言わないほうがいいよ?本気にされると困るでしょ」
青春は和花の手を離させ、さっそく旧校舎へ向かう。
黄緑も無論ついてくる。
「お姉ちゃん、嫉妬しちゃうな〜」
ほっぺ膨らませ、ブーブー言ってる黄緑。
「なんかあの子に優しすぎる気がする!まさか好きとかじゃないよね!ダメだよ!青くんにそういうのは早い!」
「あのね……そういうんじゃないから。ただまあ、僕にも責任あるからさ、その分優しくしてるだけ」
「それならいいけどさ、青くんはお姉ちゃんのなんだからね?」
「……別にお姉さんの物でもないからね」
ため息がもれる青春。
黄緑は青春をなんだと思ってるのだろうか?
大切に思ってるのだろうが、度がすぎる。
会って間もないのに。
青春の事は好みらしいが……
この様子だとガチ惚れしてるとしか思えない。それとも本当に弟愛なのか?
「そういえばさ、」
黄緑は言う。
「あの子助けるだけならさ、三人殺させて、対価目当てであの子を狙ってくる時に返り討ちにする、でもいいんじゃないの?」
……まあ、確かにそうかもしれない。
だが、それは三人を見捨てるわけだし……恨みはあるかもしれないが、それはそれで人としてどうなんだ?って話になる。
というか黄緑も黄緑で、わりとすごい事言うものだと、青春は思った。
「お姉ちゃんとしてはさ、やっぱあの悪ガキ三人許せないわけよ!だから……」
「まあ、それは助けてから仕返しなりすればいいよ。さすがに殺されるのを見捨てるのは後味悪いって」
「いやん!青くん優しい!好き!」
「……はいはい……」
黄緑の扱いに慣れてきた青春だった。
「それにお姉さんの言う通りにすると、桃泉さんがいつ狙われるかもわからないし、危険だ。ずっと見張るのもキツイしね」
「それもそっかあ。その点今なら悪ガキシバいてる最中だから、旧校舎にいるのもわかってるわけだしねえ」
「そう。桃泉さんが狙われたら旧校舎から抜け出す可能性もあるしね」
だからこそ、願いを叶える前に処理するのが賢いわけなのだ。
「でも、青くんって力を夜にしか使えないんでしょ?まだ使えないんじゃ」
「だからお姉さんがいるんでしょ?サポート頼むよ」
……だからこそ力をヒルダからもらったのだろうし当然な話。自分で手伝うとも言ったし。
だがいきなりの実践。ビビってもおかしくはないが……
「青くんに頼られてる!やった〜!頑張るよお姉ちゃん!」
この娘、クソ単純だった。
◇
旧校舎にやってきた二人。
青春は周辺をキョロキョロする。
「事前に調べた限り、詳しい事を知ってる人はいなかった。でもこの旧校舎は戦前からあり、200年以上も昔からあるみたい。……最初から悪魔が潜んでたかは知らないけど200歳も生きてるとしたら、相当……」
「クソジジイだね。人なら生きてないだろうに」
ガクッと転けそうになる。ジジイだとかそういうことじゃないんだと思う青春だった。
「お姉さん、そうじゃないんだ200年生きてるってのは、」
「あ、そっか婆さんの可能性もあるね」
爺さんか婆さんかとかはどうでもいい話だ。
青春はちゃんと説明する。
「……200年魔力を溜め込んでる悪魔なら、相当な怪物だって事だよ。お姉さんがビビったスライムとはわけが違う」
「う、黒歴史……だがしかし!今のワタシはあの時とは違う!」
やる気満々に腕を回す黄緑。
前とは違い、確かに戦える力はある。
だが、スライムより上の相手に通用するのか……
「「うわあああああああああああ!!」」
誰かの叫びがこだました。
三人の悪ガキの誰かだろうか?
すると旧校舎から一人、飛び出してきた。
逃げてきたのか?
その逃げてきたと思われる男は、悪ガキ三人の内の一人だった。
上半身裸でズボンはボロボロで変質者みたいな格好。
体は傷だらけ。火傷の跡なり、擦り傷、切り傷などなど。
鼻血もたらして、髪の毛が左半分なくなっていた。
男は青春と黄緑を見ると、涙を浮かべ鼻水たらして走りよってくる。
「闇野!闇野の姉さん!た、助けてくれええええ!!」
「うわ、汚い!近寄んな!」
黄緑は避けたが青春はそのまま動かず、男に抱きつかれた。
「あ!汚い姿で青くんに触るな!」
「た、頼む!助けてくれよお!ば、化け物が……」
黄緑の言葉を無視して、男は必死に助けを求めた。
青春は軽く頷き、男を自分から離れさせる。そして、親指と人差し指で輪っかを作り見せる。
「お金、後でもらうからね」
青春はニコリとそう笑いかけ、旧校舎に向かう。
「キャ〜青くんカッコいい!」
黄緑は黄色い声援を送り、青春について行く。
つづく。
「さあ初実践!青くんの足を引っ張らないようにしなくちゃね!」
「次回 13歳対200歳。年の差すご!」
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