学園に潜む妖魔
第6話 青春の中学生活
「青春くんおはよう。さ、ご飯できてるよ」
黄緑ママが起きてきた青春にニコリと呼びかけ、朝食を振る舞う。
青春はまずお辞儀する。
「……すいません、いきなりお邪魔したうえに、ご飯を夜と朝で二食も……。後でお金を、」
「いいのいいの、気にしないで。黄緑ちゃんが友達連れてくるなんて珍しいし、あの子の優しさに親としては答えてあげないとね!」
優しさ……。黄緑ママには青春が家に一人だから連れてきたと、伝えていた。親としてそれを無下にはできないという事だろう。
「それに青春くんは行儀もいいしね!また遊びに来なさいな」
「……は、はい……」
「ところで、黄緑ちゃんがお姉さんなら、あたしはお母さん?――ってそれだと青春くんのお母さんに悪いよね」
「あ、いや……その、」
「ちなみにあたしは
娘が黄緑、母が紫……
どちらも色とは、面白い名前の母娘だ。
ちなみに父親は普通の名前らしい。
朝食を頂き、青春は一足先に家を出る。一度自宅によるためだ。
手ぶらで学校にはいけないから当然の事。
深々と頭を下げて青春は出ていく。紫はそんな青春に手を振ってあげた。
まるで本当の親子のよう……
「あれえ?ママ。青くんは~?」
黄緑が起きてきた。寝癖で髪は爆発しており、パジャマも脱げかけて肩が出ている。目も半目。
そんな娘を見てため息をつく紫。
「まったくだらしない……。青春くんなら先に行ったよ」
「ええ……?一緒に行くつもりだったのに。同じ学校だったみたいだしい」
黄緑の通う高校は中高一貫の珍しい学校だった。
そんなに偏差値が高いわけでもないし、お嬢様学校なわけでもないのだが。
そのため中等部と高等部で分かれてはいるものの、二人は同じ学校だったわけだ。
♢
高等部・二年B組。
――黄緑のクラス。
「ほら、黄緑。カバン」
友達らしき女の子が黄緑にカバンを手渡す。
「カラオケ店で忘れてったでしょ?」
「え?あ、そっかそっか……。逃げてる時に落としたんじゃなかったんだ」
「逃げてる時?」
「あ、いやいやこっちの話。ありがとー」
スライムに襲われ、青春に助けられた時にカバンがないと騒いでいたが、ただ単に店に忘れただけだったらしい。
一目散に帰ったため、店員の呼び止めも聞こえなかったらしい。
「と言っても、大した物入れてなかったけどねえ……。ていうか財布の中身も空じゃん。どちらにせよお金払えなかったわけか」
忘れてようが、忘れてなかろうが、昨日の結果は同じだったらしい。
「黄緑、今日はどうする?購買?学食?」
昼ご飯のことらしい。
種類は少ないが、中等部の生徒も高等部の生徒も使える学食に、パンとかの軽食のみ売ってる購買がこの学校にある。
黄緑は基本そのどれか。
……だが、
「ふっふーん。今日はこれ!」
黄緑はドヤ顔で弁当を出す。二人分。
「え、何お母さんが作ってくれたんだ。って二人分?一つあたしの?」
「違う!」
「え、二人分食べるの?さすが大食漢」
「違うって!青くんの!」
片方は青春の分だったようだ。
――だが友人は青春を知らないので、
「青くん?誰?」
「えへへ。弟くん」
「弟?いたっけ?」
「昨日できたの」
「???????」
まあわけがわからないだろう。
昨日できた弟ってなんだよと。
ふと、黄緑は何か思い出したように聞く。
「そういえば、あんた妹いたよね?」
「いるけど何?」
「中等部に闇野青春くんって子がいるはずなんだけど、教室まであんたの妹に案内してもらおうと思って」
「青くんってその子?教室も知らないの?まあいいけど」
「お願いね」
ウキウキで黄緑は中等部へと向かう。
◇
中等部1年A組。青春の教室。
黄緑は友人の妹、
「ありがとね和花ちゃん」
「……いえ」
この和花という少女、大きなリボンをつけたロングヘアの女の子。可愛らしい子ではあるが、どことなく引っ込み思案に見える。
黄緑はお人形さんみたいと心の中で思っていた。
「青くんいるかな〜」
「あ、あの……」
「ん?なに?」
和花は何か言いたそうだったが……口をもごもごしたまま何も言わない。
そして結局……
「な、なんでもありません」
そう言うと青春の教室に入っていった。
同じクラスだったらしい。
「どうしたんだろ?ま、いいや。あ~おく……」
教室に入り、青春を呼ぼうとした時だった。
黄緑の視界に見えた青春は……
雨にでも降られたかのように、びしょびしょになった姿だった。
近くにはバケツを持って笑っている子供の姿が見受けられた……
――つづく。
「は?え?まさか……イジメ?もしそうなら相手のガキ、殺す」
「次回 僕なら大丈夫。 いや!大丈夫じゃないって!」
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