第4話  今日からワタシはお姉さん

「……お姉さん。今、なんて言ったの?」


 青春は聞き間違いかと思い、もう一度聞いた。黄緑はまた答える。


「だから、お姉さんになる!」


 聞き間違いではないのかと、青春は頭をかかえる。


「お姉さん、気持ちはありがたいけど、言ってる意味、わかってる?」

「もちろん」

「じゃあ聞くけど、どうやって姉になる気なの?」


 青春の質問に首をかしげる黄緑。ため息つく青春。


「血のつながりのないお姉さんが、僕の姉になるとしたら両親の再婚しかないんだよ」

「だめだよ。パパとママはラブラブだし」

「うん。だから無理って事」

「なんで?」


 ???

 今度は青春が首をかしげる。


「なんで?って両親の再婚は無理だからって事……」

「いやいや、別にそんな事しなくてもワタシが姉になるっていうんだから、それでよくない?」

「それだと姉弟関係には……」

「そんな法律で決められた事とかどうでもいいって。お姉さんになるったらなるの!」


 意外と頑固というか、押しが強い。

 少しタジタジになる青春。


「「悪くない……かも」」


 まさかの、悪魔が賛成。

 青春は驚く。


「え!?何を……」

「「実の姉を亡くした青春には、必要かもしれない」」


「青春くん!?お姉さんいたうえに亡くなってるの!?」


 新情報に驚く黄緑。

 青春は頷く。


「そうだけど……ヒルダ、どういうつもり?」


 ヒルダ……おそらく悪魔の名前だろう。

 そのヒルダはいきなり青春の影の中に引っ込む。


「え、どうしたの?」

「「姉になるなら悪くないとおもって」」

「何を……。姉さんの代わりにするつもり?それは姉さんにも、こっちのお姉さんにも失礼だ」


 姉さんにお姉さんにと、ややこしい。


「「代わりとは言わないよ。でも、ワタクシは心配なのだお前が。常に一人、身内が近くにいれば安心する」」


 一人なのはこのヒルダのせいもありそうだが。友人作りも邪魔してるようにみえたし。


「え、ご両親は?」


 黄緑は聞いた。確かに身内なら両親だっているはず……


「ま、まさかご両親も……」


「いや、普通に元気だけど」


 ずるっとこけそうになる黄緑。


「「ワタクシが言ってるのは、このような戦いや、外にいるときの話しですわ」」


 急にですわ口調になったヒルダ。冷静になったからなのだろうか?


「「常に孤独の青春……ああ、かわいそう。ワタクシが側にいるとはいえ、夜以外は出てこれませんし」」

「夜以外?日中は出てこれないの?」

「「ええ。残念ながら。おまけに青春は夜にしか力を使えません」」


 なんと、夜限定の力だったとは……と、驚く黄緑。


「それだと朝とか危ないんじゃ」

「「ええ。だから相棒というか、この子を守れる人が必要なのですわ」」

「姉として、ワタシにやれと?」

「「そういう事ですわね」」

「うん!やる!」


 即答。考えてる素振りすらなかった。あんな危ない目にあったというのにだ。

 自ら巻き込まれに行くようなもの。それなのになんの迷いもなくとは……


 ……何も考えていないだけのようだが。


「え?ちょっとお姉さん……」


 青春が止めようとするも、彼を置いて話は進む。


「ところで、ワタシも青春くんみたいな力でもないと、守れないと思うの」

「「それはお任せを。あなたにもワタクシの力を分けてあげます」」

「でも夜だけだと……」

「「ご安心を。力を分断すれば朝昼晩変わらず使えます」」

「ほんと!?それは願ったり叶ったりだよ!」


 ウッキウキな黄緑。


「……ねえ、お姉さん。……だから」

「ということは青春くんは夜限定にしてる代わりに、その分強いってことなの?」

「「そうですわ。おそらく、青春が追っている相手はそうでもしないと勝てないので」」

「追ってる相手……。訳ありなのね。青春くん、お姉さんが助けてあげるからね!」


「え?いや、だから……」

「ウンウンもう大丈夫」


 全く人の話を聞かずに青春を抱きしめる。


「お、お姉さん。胸とかいろいろ……当たる」

「うわ、恥ずかしがってるの!?か、カワイイ……お持ち帰りしたい……」

「――え?」


 黄緑のヤバい発言に意外にもヒルダは、


「「同じ家に住むのもアリですわね。危険もなくなるし」」

「え?」

「だよね!ずっとは無理でも、今日泊まって行きなよ!お礼したいし!」


 半ば強引に青春を引っ張っていく黄緑。


「……え?」

「大丈夫、ワタシは今日からお姉さんだから!いろいろ任せて!お姉ちゃんって呼んでね!ワタシは青くんって呼ぶから」

「え?いや、だから」


「「これから頼みますよ。黄緑。青春のためにも」」

「りょーかい!」


 そうして、やっと裏路地を出た二人は、黄緑の自宅へと向かっていった。


「え?」


 ――つづく。


「え!?」


「ということで、青くんをご自宅に案内しましたとさ。で、そもそもなんでワタシはモンスターに襲われたか、モンスターがなんなのか、青くんのことも、根掘り葉掘り聞いちゃうぞ!」


「次回。 妖魔  何から聞こうかなあ。グヘヘヘ」


 このむすめ、ヤバい!

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