第3話  提案

「え?あの、ごめん。こ、殺される!?だ、誰に!?」


想定外すぎる発言を聞き、わかりやすいくらいに、慌てふためく黄緑。


青春は言う。


「僕がお金などの対価を要求するのはね、という意志表示のためなんだよ。僕の個人的な理由じゃないっていう言い訳のためかな」

「言い訳……?ちょ、ちょっとよくわからないんだけど……。まず、言い訳って誰に対して?」

「僕の力の源に」


青春がそう告げた瞬間、彼の影からなにか浮き上がってくる。

夜遅く、それも路地裏のせいでハッキリとは見えないが、ドス黒い姿の、羽の生えた悪魔みたいだった。


「ば、化け物が影の中から!?」


悲鳴をあげそうになる黄緑に、シーッと人差し指を立てる青春。


「…静かに。それに化け物なんて言わないであげてほしい。は僕の味方なんだから」


黄緑の発言に少し気を悪くしたらしい。黄緑はすぐに「ご、ごめんね」と謝る。


味方……?この悪魔が?

そう黄緑は疑問に思った。


青春の発言から察するに、力の源がこの悪魔なのだろう。彼女と言ってるから女の子か。


青春のスライムを一蹴するほどの力は、この悪魔由来ということなのだろう。


そしてこの悪魔に言い訳をする必要があった。

だがその言い訳の対価を払えない黄緑は殺されると言っていた。


つまり、

この悪魔に黄緑は殺されると推察できる。


「「青春にぃ……優しくされたな?好意を、もらったなあ!?」」


悪魔が、耳に響く高音をあげた。

思わず耳をふさぐ黄緑。


「な、なんの話……」

「「とぼけるな!。青春が、対価もないのに人を助けた……。それは、青春が助けたいと思ったからだ!つまり、好意があるからだ!大事な人だからだ!」」


勝手に思い込んで、怒りくるっている悪魔。

この悪魔の思考回路では、大事な人でもなければ、他人を助けないと考えているのだろう。



他の人ならともかく、青春はそんなの関係なく人を助ける子だというのに。

なぜなら黄緑はさっき会ったばかり。大切な人とは程遠い存在。

そんな彼女を見返りなく助けたのがその証拠。


いや、一応見返りの代金を請求していた。微々たるものの。


黄緑はこれで合点がいく。


「そ、そうか……。青春くんがワタシに代金を請求したのは、この悪魔に対価もらえるから助けたって、アピールするためだったんだ……」


見返りがあるから助けた。その証拠がほしかっただけ。だから代金事態は払うのも容易な小銭。


それでこの悪魔は嫉妬に狂わないというプロセスだったわけだ。


だが、黄緑は払えなかった。代わりの物もない。

それゆえに、個人的な理由で青春は黄緑を助けたと勘違いした悪魔が、黄緑を殺すというわけだろう。


「そういうことだったんだ~。青春くんも好きでお金請求してたわけじゃないんだね」

「うん」

「えらいえらい」


黄緑はこの状況でのほほんと青春の頭を撫でた。

青春は照れだすが、嫌がってはいなかった。


(か、カワイイ……。お待ち帰りしたい……)


ヤバい事考えてる女子高生。


だが、この状況でそんな事するのは……


「「何してんだアバズレ女あああああああ!!」」


火に油を注ぐようなものだ。

バカなのか、この子は……


今にも襲いかかろうとする悪魔を、青春が掴んで抑えている。


だが、体格差が激しいためズリズリ引っ張られている。


「お姉さん、離れて……」


抑えていられないのだろう。だが、黄緑もビビって少し後に下がるしかできなかった。


「あ、青春くん、な、なんとかできないの?」


悪魔に視線を向けたまま、黄緑は聞いた。


「…仮にこの場は逃げれても、夜な夜な僕の目を掻い潜ってお姉さんを殺しにいきそうだし……」


方法を模索してる青春。

おそらく、言葉での説得ではどうにもならないのだろう。


ピコンと、電球が光るかのように何かを思いついた黄緑は提案する。


「い、今から走って家からお金とってくるとかは……」

「抑えきれる自信ないし、こうして出てきちゃったら半端な額じゃこの子は納得しない。」


小銭ではなく。大金になるということだろうか。


「おそらく女子高生のお姉さんが払えるような額じゃないよ。物にしたって、相応の価値のものになるだろうし……」


なんということだろうか。女?の嫉妬は恐ろしい。


「そ、それにしても、そこまで気に入られてるんだね青春くんって……」


と、黄緑はこぼすと、


「「当たり前だ!青春はワタクシの物!他の奴には渡さない!好意をもたれるなんて許せない!!」」


今にも黄緑を食い殺すかのような勢いで、大きく口をあける。

恐ろしくて腰が抜ける黄緑。


…だが、黄緑は今の悪魔の発言に引っ掛かった。


「み、身内はOKなんだ……」


まあそんなにおかしなことではないだろう。両親や兄弟なら近しいのも当然。それに恋人とか友人とは別枠だ。家族なのだから。


悪魔は青春に恋人や友人ができるのが気に入らないのかもしれない。


…すると黄緑は、


「対価……ってわけじゃないけどさ。青春くん」


青春は「何?」と聞く。

そして黄緑はまさかの発言をする。


「ワタシ、青春くんのになる!」



「は?」「「は?」」


つづく。


「ほ、本気だよ!青春くんのお姉さんになってやる!」


「次回は今日からワタシはお姉さん。うん、我ながらいい考え」


いい考え?


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