第2話 スマイル

今日も彼女が駅前のあの場所にいた。


ギターを構え、弾き出した。



本当に綺麗な音。


聞けば聞くほど、私と彼女が同じなんじゃないかという錯覚に陥る。



遠巻きから拍手を送る。



軽く会釈をしてくれた。それだけで心が満たされる。



あ、これ昨日と同じ曲だ。


でも演奏にはアレンジが加えられていて、昨日とは少し違った雰囲気。

昨日のそれよりもっと繊細で、もっとまとまっている。



しかし彼女は納得のいかない顔をしている。



次の曲も昨日と同じものだった。


演奏はよりダイナミックなものになっていて、昨日より大きなうねりが心地いい。



すごい。同じ曲のはずなのに、全然違う。



終電が近くなってきた。


今日のために空にしたマッチ箱に百円を入れて彼女の足元近くに置き、その場を後にする。



鼻歌検索でヒットしたその曲は、とても有名な曲だった。でもそれは強い希望の曲。


雨の夜のようなアレンジを、彼女はしたんだな。


そう、その曲の歌詞は私にとってはあまりに苦しい。


だからそんなアレンジをした彼女の解釈に、心から拍手を送りたくなった。

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