無題

外街アリス

第1話 The Lonriest Girl

彼女の音は、私の胸を揺らす。

彼女も同じだといいな、そう思いながら今日も共にギターを鳴らす。




仕事を終えた私は、いつものように駅へ向かう道を歩いていた。


ここはよく路上ライブをしている人がいる。

今日もやってる、と思いながらヘッドフォンを付けようとしたが、カバンにあるはずの黒い塊が見当たらない。


足を速めようとした時、その音は聞こえてきた。


それはあまりに哀しくて。孤独で。



私と同じだ。



気づけば足を止めていた。



一瞬彼女と目が合う。

すぐに逸らされる。



ああ、同じなんだ。



少し離れて、演奏に聴き入る。



こんなに美しい音があるんだ。あっていいんだ。



数曲歌って彼女が一呼吸入れたところで、ちょうどあった空のマッチ箱の中に百円を入れて彼女の足元近くに置いた。


もうすぐ終電だ。


小走りになりながら、駅へと向かった。




ぎゅうぎゅうの電車の中で、検索していたのは、彼女と彼女のギターの名前。

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