優華出生の秘密譚 第二章 対立と和解の章

優華出生の秘密譚 第二章 対立と和解の章


 二人はここで出会う。しかし、仲良くする雰囲気ではない。

 するとユウキは言う。


「こいつらに何か用か?」

「ああ。どうしても、現世帰りの術が必要なんだ。俺の――――」


 リーゲンは必死な顔でユウキに伝える。しかし、ユウキが言った一言は彼女の心を傷つけるものであった。


「やめておけ。お前恐怖で震えあがるぞ?」

「何だって?」


 そのことばにリーゲンは噛みつき始める。


「もう一度言おうか。その術を使った後。悲惨な目に遭うぞ?」


 そのことでリーゲンの頭に何かがキレた。


「ざけんじゃねえぞ!! 何が『悲惨な目に遭うだ!』覚悟はとうに……」

「できてない癖に……」


 キレ気味に言うリーゲン。しかし、ユウキはさらに言う。


「お前。かなり震えているな。その怒り方を察するに寂しいんだろ?」

 

 図星を突かれたリーゲン。すると、リーゲンの顔は下を向いた。


「あったまにきた……」


 そうつぶやくと同時にリーゲンは顔を上にあげて、こめかみに血管が浮き出るほど怒った。


「テメエは今から八つ裂きにして、殺してやる! 力づくでもあいつらにやり方を奪ってやる!!」

「面白い。なら、おはお前を倒してやるよ」


 ユウキはそういうと赤い爪を伸ばして、襲い掛かった。

 リーゲンは【能力再構築 黒紅悪龍腕・武器創生】で黒赤の禍々しい機械双剣を作り、さらに【能力再構築・鎖鎌】で魔力穴を通して、鎖鎌が飛んできた。

 一方のユウキは爪を弾いて、真空刃を飛ばし始める。


「遅すぎる! 【能力再構築 絶対回避】!」


 リーゲンは集中した顔で避ける。

 しかし、ユウキは脚を血の刃物に変えて、リーゲンを切ろうとする。

 リーゲンは下にしゃがみ、頭突きで相手を崩そうとする。

 だが、ユウキは長い爪で攻撃するけど、リーゲンの加熱した双剣で爪が壊された。

 ユウキは軽く舌打ちする。


「やるじゃねえか。これを見せた奴は生きては帰れねえんだよ!!!」


 ユウキは狂気的な笑みを見せた後。両手を双剣にして、襲い掛かる。

 リーゲンも不機嫌になり、さらに過熱して、双剣で迎撃する。


「【能力再構築 頑丈肉体】!!」


 リーゲンの体は丈夫となり、どんなに攻撃を受けても、まったく毒に侵されない。

 彼の戦い方は優華そっくりであった。すると、痺れを切らしたのか。リーゲンの双剣を弾いた。


「まてや! リーゲン! めんどくさいなあ!」

「あ?! てめえ。俺を……」

「ついてこい!! おが見せてやる! ついてきな!」


 突然のことでリーゲンは呆気にとられるが、一番腹立ったのは戦闘をやめたこと。


「おい! 半端じゃねえのか?!」

「―――」

「何とか……」


 今にもキレそうなリーゲン。しかし、ユウキは右人差し指を口の前にした。


 ――――静かにしろ。どうやら後を付けられているようだ。

 ――――だ、誰に?

 ――――未練宗だ。ちょっと待ってろ。


 ユウキはそういうと異形化した右手から小さい球を飛ばした。

 それと同時に斬られる音が聞こえた。

 驚いたリーゲンは【能力再構築 遠視】で見ると、そこにはフードを被った者達が倒れていた。


「もう声を出してもいいぞ」

「――――後を付けられていたのか?」

「つけられた? 違うな……。警戒されたんだ。リーゲン。何か恨みを買った心当たりはあるか?」


 仮面の奥は鋭い眼光でユウキはリーゲンを見る。

 リーゲンは思い出した顔で「実はこの男に無理やり入信しようとしたから、俺が止めたんだ」そう説明するとユウキは納得する。


「やはりな。リーゲン。すぐについてきな。未練宗のもう一つのアジトがこの近くにある。この車には発信機がついていた。しかも、お前のことを敵視していると思う。ついていきな」

「――――上等だ」


 リーゲンは未練宗に鬱憤を晴らすべく、すぐにユウキと共についていった。

 小アジトは近くにあり、ユウキはリーゲンを担いだ。戸惑いを隠せないリーゲンは「ちょ!」というが、ユウキは思いっきり上へ投げた。

 屋根にしがみついたリーゲン。ゆっくりと降り、態勢を保った。

 続けて、ユウキが高くジャンプ。リーゲンの隣に着地した。


 ―――おい! 投げるなら、投げるって言いやがれ!

 ――――ゴメン。うっかり言い忘れた。

 ――――この野郎!


 リーゲンはユウキを威嚇。一方のユウキは気にしないのか。そっぽを向きながら小声で話す。

 それと同時にユウキは自分の両手を窓に当てる。すると、窓は静かに溶け始めた。


 ―――お前の両腕どうなっているんだ?

 ―――酸が強い猛毒の両腕だよ。おの血はかなりの猛毒らしい。

 ――――ら、らしいって、ユウキ。自分ことが分からないのか。

 ――――昔のことは全く覚えてねえんだ。お。両親がだれかわからない奴に殺されて、気づいたらこの両腕をもっていたんだ。

 だが、おが毒を出せと意識すれば、毒が出る。

 この毒は相手の鎧に付着すれば溶ける強酸性の毒だ。人の体を切れば、細胞諸共壊死する。

 ――――へえ。そんで、俺に何を見せるんだって?

 ―――ああ。あれを見ろ。今から儀式をやるぞ?


 その話を聞いて、リーゲンはじっと見る。

 例の呪文を唱える信者たち。魔方陣の真ん中にいる女の遺体はそのまま下へ沈む。

 その代わり、黒い穴から出たのは濃い紫色の生まれたままの女性だ。


「おお! 儀式は成功だ! 〈堕人〉が生まれ変わったぞ!!」

「――――」


 堕人は呻き声を上げながら、信者たちに近づく。


「よし、今日は私と相手をしてもらう!」


 リーゲンは虫唾が走った顔で見た後。すぐに下り【能力再構築 黒紅悪龍腕・武器創生】で作った黒い機械ナイフ三つを作り、それを相手目掛けて投げた。

 その一体は急所を突かれ、その場で倒れる。

 すると堕人は勝手にリーゲン目掛けて、突進する。

 リーゲンは瞬時に作った黒機械ナイフで相手を斬り殺した。爆破するけど、リーゲンは躊躇いもなく、k飛ばして、爆発させる。

 しかし、人間油断はする。その一体がサブマシンガンで発砲。

 けど、ユウキが盾になったおかげでリーゲンは無事だ。

 ユウキは「痛いな! この野郎!」右手を剣に変え、相手を斬りつける。

 相手の体は壊死し始めて、そのばで倒れる。


「わ、わりい。俺が動いたせいで」

「いや、別に……」


 リーゲンは申し訳ない顔で謝る。しかし、気にしていないのか。そのまま立ち上がろうとするが、どうもよろけてしまう。

 サブマシンガンの銃弾が彼の体を貫いているからだ。おかげで銃痕から血が流れる。危険な毒だ。

 だが、リーゲンは躊躇いもなく、彼を背負い。屋敷へ連れて行った。

 道中でユウキはいう。


「お、おい! おの毒は危険だぞ?」

「いい! 俺の体はある能力で頑丈だから」


 リーゲンの体は【能力再構築・頑丈肉体】で耐えている。

 彼が拒んでも、リーゲンはそれでもユウキを運び始める。

 狐耳娘の屋敷に着いた二人。狐耳娘がお迎えするが、かなりびっくりし始める。

 リーゲンが運んだユウキはひどい怪我をしていた。

 すぐに彼女は包帯や回復薬を持って、ユウキにのませた傷が癒え、彼をリーゲンが住んでいる客室へ運んだ。


 魔物図鑑


 堕人 属性 闇


 現世帰りの術でよみがえらせた人間。ゾンビやグールとは違う異形の存在。

 信者の命令には忠実である。


 次回 優華出生の秘密譚 休憩の章

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