第35話 審判講習会の準備が整う

 真は大会前にいくつかの用事を足すために、先にバンコクへ移動した。その一つがJICAからの現地生活費を引き出すことであった。東京三菱銀行を通して振り込まれるため、三菱銀行バンコク支店に行きひと月分の手当400ドルを引き出した。

 そして2つ目がこちらにきて少し英語の勉強をしてきたが、日本人学校で英検を受験することが可能だったため2ヶ月前に英検2級の筆記試験を受験して合格した。今回は面接試験に挑戦してきたのだ。

 高校時代の真は、英語をはじめ勉強を一つもしなかったことについては前述したが、32歳にしてやっと高校卒業程度の英検2級に合格することができた。タイでは普段タイ語で話をしているが、様々な場面で英語を使ってきたことが活きたのかもしれない。

 そして3つの目の用事は次の日、体育局に顔を出して近況報告をするとともに、今後のスケジュールを確認することだった。1月からシーサケット県に移動する予定であったが、2月18日〜25日までインドネシアで「アジアカップ」が開催されるため、そこにコーチとして参加するとなると、向こう学校での受け入れができないため保留となっていることがわかった。

 真にとっては、大人のチームの国際大会よりも、子どもたちへの普及活動の方が大切であることを伝えたが、野球連盟の考え方もあるからということでこの話はここで終えた。

 さらに、中学生の国際大会のメンバーの一人、1番ショートで活躍したイサーン地方チャイヤプーン県在住のゲッターが、高校進学をすると野球を続けられないので、スパーブリー県体育学校に進学して野球を続けたいという相談があり、体育局としてはスパーンブリー県体育学校の校長から快諾してくれているので、来年度からはスパーブリー県体育学校の一員となることを確認することができた。

 この件をはじめ、野球が認知されていないタイの中で、野球というスポーツを継続していくことの難しさを痛感していたため、今後、自分のあとにコーチを務めるタイのメンバーの給与や処遇改善についても強く要請しておいた。

 11月22日(水)今回のタイでは初開催となる中高生野球大会「甲子園大会」には、日本のアジア野球連盟からの応援もあった。それは12月の国体に向けて、今回は「審判講習会」も兼ねて実施することであった。

 タイの野球連盟としては、国体で野球が初の正式種目になったことはさらに大きな出来事であり、タイ全土をあげて行われることを考えると、審判の技術向上も欠かすことのできない要素であった。

 今回の大会は一部の地域から限られた参加者と考えれば、試合を通じて、審判の技術向上を測ることも納得のいくことであった。今回、日本の野球連盟がタイの国体、中高生野球大会「甲子園大会」のために派遣させたのは、アジア野球連盟の審判長をつとめていた小岳克人さんであった。

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