第36話 ベースボールの原点を確認
真は小岳さんと初めての出会った時、爽やかで偉ぶらず謙虚、それでいて芯の強さ、野球というスポーツをこよなく愛する心が一瞬にして伝わる素敵な人格者だと理解した。前年のシドニーオリンピックの決勝の舞台で決勝審判をつとめている。
地方公務員でありながら、東京6大学野球、甲子園大会でも決勝戦、ベスト8以上重要な試合で何度も審判をつとめている。審判講習会がはじまる前日の夜、小岳さんを誘い出し、近くにあった屋台でシンハービールの中瓶を片手に乾杯しながら、楽しいひと時をもつことができた。
今までの経験をふまえて審判の難しさと楽しさ、ベースボールの魅力、その原点、真にとって初めて聞くその1つ1つの話に引き込まれていった。審判の魅力は、選手たちとグランドで緊張感を共有することができ、その中で人として成長できること、そして野球の魅力をさらに深く知ることができることである。こんな素晴らしい審判に携われたことが自分にとって大きな財産だという。
もともと甲子園球児、大学でも名だたるプロ野球選手たちとともにチームメイトとして活躍した経験もある。話は自然とベースボールの原点について話が進んでいった。ルールが少しずつ出来上がってきた歴史の中で、ストライクは審判が「打て」と命じている。ボールは「アンフェアなボール」を投げたペナルティとして打者に1塁への進塁を認める。
ピッチャーがストライクゾーンに思い切りスピードボールを投げる、それに負けない力でバッターは打ち返す。ここを原点にはじまった野球もフェアプレーが最も大切であることを確認した上で、小岳氏は野球、スポーツの本質は「尊敬(respect)」「正義(justice)」「規律(discipline)」の3つに集約されていると述べている。その原点は今もメジャーリーグの中に受け継がれている。
日本は野球のレベルが、高いがゆえに、大切な原点をふまえ、世界に野球の素晴らしさを示していく責任があるという点については、小岳さんと共有できたことで、明日からはじまる歴史的な大会をイメージどおりの最高の大会にしようとあらためて深く決意して2人は家路についた。
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