第33話 新たなキャプテンで大会へ

 11月10日(金)から大会前、最後の練習試合と合同練習のためにハッジャイのソンクラー大学へ行った。到着すると大学生たちが列になって拍手で出迎えてくれた。真はすぐにウィラーたちと夜の食事に出かけた。今回はバスを運転してくれた学校の環境整備員のピーセーも一緒に随分と遅くまで飲み明かした。

 次の日は朝8時にソンクラー大学のグランドに集合した。ウィラーたちは朝まで飲んでいたためいなかったが、子どもたちは入念なウォームアップ、体力トレーニング、キャッチボール、ボール回し、フリーバッティングをやらせた。

 ピッチャー陣にバッティグピッチャーをやらせたが、時間がかかるので真がバッティングピッチャーをやって午前中の部は終了した。午前中の練習で昨日のアルコールは全て吹き飛んでしまった。

 14時から大学生のソフトボールチームと野球の試合をした。エースのボーンはストライク先行のいいピッチングをした。結果は10対7で勝利した。大学生たちは本当に悔しそうにしていた。

 試合後のミーティングで試合中のチームプレーについて、1年生も含めて全員に大切な役割があることを伝えた。日本の甲子園大会の試合時間は平均1時間30分で終了する。これは、バットボーイに代表されるように、控え選手が道具の出し入れも全力で行うことで、チームが一丸となって戦っていることを伝えた。特に1年生は自分たちが少しお客さんであったことに、恥ずかしさを感じていたようだった。

 次の日はキャプテンのバードが緩慢なプレーから大量失点したことで、今までバレーボール部から引き続いてキャプテンをしてくれていたことの荷が大きすぎたことを痛感する試合となった。国際大会に参加したヌ、ボーン、ジョームの3名をはじめ、メーオやその他のバレーボール部員たちはバレーボールという競技から完全に決別できていた。

 しかし、最も背が高くエースアタッカーだったバードは、バレーボールへの未練がぬぐいきれていなかったのである。かわいそうな気持ちもあったが、野球選手として覚悟を持てていなかったバードを大切な「甲子園大会」の直前だったからこそ、キャプテンからひいてもらう決断に至ったのだ。

 国際大会を共に戦う中でファイティングスピリットを共有し、野球センスもあり全体を見渡すことができるヌに新キャプテン、派手さはないが堅実なキャッチャーのジョーム、控えめだがガッツのあるメーオの2人を副キャプテンになってもらった。

 バードは訳もわからない中で野球に鞍替えさせられ、真に厳しく怒られることもあり、辛い思いを乗り越えてよくここまでキャプテンをつとめてくれたこと、心から感謝したい。まじめな性格で踏ん張ってきたが、いいタイミングで新キャプテンと交代することを前向きにとらえたい。

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