第18話 タイの選手たちの本気度が試される
6月3日(土)大会のスケジュールが届いた。6月17日(土)開会式の直後、14時から韓国戦、18日(日)11時から台湾戦、19日(月)13時30分からフィリピン戦、20日(火)インド戦、最終日の21日(水)日本戦であった。
日本で高校野球の顧問をしている時、対戦相手が決まると選手たちの目の色が変わって、闘争心をむき出しにしていく選手たちを頼もしく感じていた。しかし、タイナショナルチームの選手たちからは、そういうものが感じられなかった。国民性なのか、野球という経験値が少ないところに原因があるのか。
真は韓国戦を想定すると、気持ちが一段と高まっていたが、練習中にもそんな気持ちが感じられないのでついに選手たちに大声で話をした。「この練習は誰のための練習なんだ!俺は肩が壊れていて、痛くても一生懸命投げているんだ!もう少し考えて練習しろ!」と、それぞれの自分の役割を、もっと真剣に考えて取り組むように強く促した。
真1人が気を吐いているようで「笛吹けど踊らず」という状況が続いていった。朝は寝坊する選手が増えてきた。その分、朝ごはんの時間が遅くなる。練習はだらけている。こんな状況に真は、危機感といらだちが増して行くのであった。
6月4日(日)、日本人チームとの練習試合の日だったが、朝からあいにくの雨であった。赤山さんと連絡を取って、このまま雨が降り続けば今日は中止にすることを確認していた。いいチャンスだと思って、緊急のミーティングを開くことにした。
大会の日程も決まり、いよいよ練習にも力を入れていこうとしているのに、最近の集中力を欠いたチームの雰囲気に対して、嫌々やらされているとしか思えない、本気でやる気があるのかどうかを問い正した。選手たちは戸惑っているようだった。
タイ語がうまく伝わらなかったと思っていると、ブルー監督が即座にフォローするように選手たちに檄を飛ばしてくれた。いつも冷静な彼が「スー!」というタイ語を連発していた。勝つという意味である。強気な気持ちをもってのぞまなければいけないことを再確認してくれた。選手たちはうなずいていたので、ひとまずこちらの気持ちが伝わったことで少し安堵できた。
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