第11話 美味しいタイ料理はいかがですか
真はバンコクから一番行きやすいビーチリゾートであるパッタヤーで年末年始を過ごした。スパーンブリー滞在中にずっと車を出してくれて、あらゆる場所に連れていってくれたセンチャイ先生も一緒だった。
体育大学を卒業した彼の専門はボーイスカウトであった。学校でのカリキュラムの位置付けなど詳しいことはわからないが、自然が豊富なタイではボーイスカウトが盛んで、学校教育の中でも積極的に実践されているようだ。野外活動を通して子どもたちを育成するのである。
彼は愛車のイスズのピックアップトラックであらゆる場所に連れ出してくれた。夜は毎日のようにスパーンブリーの美味しい名店に連れていってもらった。真は今でもあの時の素敵な夜の思い出が鮮明に蘇ってくるほどディープな毎日を過ごしていた。
川の上にあるレストランで食べた「ゲンソムプラードゥック」の味が忘れられない。さてここで、少々タイ料理について書いておきたい。タイは中部、東北部、北部、南部の4地域に分かれる。その地域にはそれぞれの料理がある。基本的に辛い料理が多いのだが、一番辛い料理は南部料理である。
「ゲン」とはカレーのことだが、中部の代表的なカレーに「ゲンキャオワーン」ゲン(カレー)、キャオ(緑色)、ワーン(甘い)の意味で、日本ではグリーンカレーと言われるものである。ココナッツミルクが入っていて口触りは滑らかだが、たっぷり入った香辛料のおかげで、火を吹くような辛さが口いっぱいに広がる。基本的にはどれも日本では手に入らない「プリッグ」という小さな辛い香辛料を使い、汗が吹き出るような辛さが特徴である。食べ慣れると大変に美味しい逸品だ。
「ゲンソムプラードゥック」とはゲン(カレー)、ソム(酸っぱい、みかん)、プラー(魚)、プラードゥックとはナマズのことだろうか。油で揚げたナマズが丸々一匹オレンジ色のゲンソムの中で、グツグツと煮立ったまま出てくる。どのカレーも特徴があって良さがあるが、真にとってこのゲンソムが一番のお気に入りとなった。
タイのビールは「シンハー」「チャーン」「リオ」の3種類が有名で、真は「シンハー」派だ。「シンハー」を飲みながら「ゲンソム」を食べるとどちらも引き立つのである。中でも最も辛いカレーは南部の「ゲンプラー」である。
タイ料理の辛さに慣れた真は、南部での生活でさらにカルチャーショックを受けた。魚のハラワタも全てかき混ぜて作ったどす黒いカレー。この辛さは、口の中に痛みを感じさせるものであった。しかし1年間南部にいた結果、これも好物になったのである。
庶民的な味は「イサーン(東北部)料理」だろうか。タイの食卓に欠かせないものは「ソムタム」パパイヤサラダである。大きなすり鉢のようなものに、細く刻んだパパイヤを入れてタイの唐辛子プリッグをお好み加え、棒でトントンと叩いて混ぜ、味を浸透させる。
ナンプラー、ニンニク、ピーナッツ、砂糖、エビを入れたり、カニを入れたりと幾つかのバリエーションがある。これは何とも言えない懐かしい味がする。その他、ガイヤーン(鳥の唐揚げ)は、なぜかもち米と一緒に食べると最高に引き立つのである。
ナムドック、ラープどれもたまらなく美味しいイサーン料理だ。日系企業の「味の素」が、現地でそれらの味を凝縮した製品を出しているのでお土産に買って帰ると本物の味が日本でも楽しめる。
他には「トムヤムクン」(エビ入りスープ)、「ヤムウンセン」(春雨の和え物)、「カオマンガイ」(鶏肉ご飯)、飲んだあとの麺類「バーミー」、(中華麺)、「グェッティヤオ」(ライスヌードル)、「カノムチーン」(そうめんに似た米麺)、これには「ゲンキャオワーン」(グリーンカレー)が一番合う料理。
あげればまだあるが、ぜひ1度食べてほしい。日本でも多くのタイ料理屋さんがあるが、やはり暑いタイで食べるからこそ美味しいのだと思う。最後に、初めて食べたものとして「アリと卵(アリの卵)の油炒め」、コブラ料理とその血で割ったお酒、タガメの唐揚げと何を食べても真にとっては懐かしさを感じさせるものであった。
ちなみにタイのお酒で質が高く美味しいのは「リージェンシー」である。タイのブランデーと言われている。タイのウィスキーには「ホントーン」があるが、これを飲むと次の日の頭痛がすごいのである。なんと言っても週末にバーで飲むシンハービールの味は格別であった。
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