第17話 共通項は?

「召喚や移動でお疲れでしょうから、今日はゆっくりなさってください」


 エレナから部屋の説明を受けた後は、お城の部屋で放置プレイになりました。

 さすがにベッドに横になる気分じゃないので、ソファでだらだら考え中。


 まぁ、お城で守られるくらいの立場になったと思えば狙い通り、なんだけど。

 異世界品の防衛って、魔法でいうと、いわゆる結界みたいなものだよね?

 だとすると、離宮にいた方が自由に動ける気がする。

 研究所も今日は休みって言われたけど、まさかずっとここに軟禁じゃないよね?

 術使い候補のみんなとようやく仲良くなれて、まだまだ調べたいこともいっぱいあるし、肝心の召喚術にたどり着けてもいないのに。


 術用の特別な言語は、この世界の失われた文明のものらしい。

 失われた言語のいくつかは、今でもことわざや言い回しのひとつ、歌として残っている。

 でも、ほとんどの言葉は失われて、遺跡や古い地層で、まれに記述されている物が発見される。

 その言語と異世界品と術使いが組み合わされると、なぜか術が発動する。

 それも、失われた言語ならなんでも発動するわけじゃなくて、術になったりならなかったりする。

 各国が術を発見しようと躍起になるわけだ。

 どこよりも早く効果的な術を発見できた方が有利になるもんね。


 術使い研究所で行われているのは、失われた言語の解読、術として使えるかの検証、新しい術の組み立て。

 外回りの大人の術使い達は、すでに使われている異世界品のメンテナンスや交換。

 まだ会えていないけど、考古学系の大人たちは遺跡の発掘で貢献してくれているらしい。

 

 異世界品のエネルギーの法則もよくわからない。

 なんでテレビと炊飯器でそんなに違うの?

 携帯音楽プレイヤーがエネルギーダダ漏れレベルって、なんでよ? 

 3つとも機械で、使用頻度も思い入れも同じくらいだと思ったんだけど。


 数が少なすぎて、他の共通項が私にはわからない。

 大人の術使いなら、もうひらめいているのかも? あー、研究所に行きたいよー。みんなと話したら私もなにかひらめくかもしれないのに。

 私だけじゃ、比較する異世界品がもっとないと仮定も立てられない。でも召喚の儀は3週間に1回くらいなんだよね。もっと色々召喚したらわかるのに……って、これまんま、こっちの世界の人の思考じゃん。

 ヤバい。これはヤバい。私、毒されてる。

  

 落ち着け。

 元の世界に帰るために頑張ってるのを忘れちゃダメだ。

 召喚は泥棒! 帰るために術式を極める!

 よし。


 それにしても、あれだけ詰め込まれたのに、まだ知識が足りなく感じるなんて。

 くぅ。ルチア先生だけでも今日会えないかなぁ?

 今までに召喚された異世界品について聞くだけならできるよね?


「ユリア様、失礼します」


 珍しく慌てた様子で、エレナが部屋に入ってきた。

 

「お客様です」


「会っていいの?」


「むしろ、お断りできません」


 え、なんか面倒くさい人?


「王太女殿下がおみえです」


 王女様キターー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る