第16話 やらかした?
あれ?
エネルギー高い方が嬉しいんだよね?
なんで騎士達がドン引いてんの?
私が靴をはいている間に、術使い達や騎士達になにやら指示を出したアルベルトは、作り笑顔全開で私を引きずるように腕をつかんで歩き出した。
「い、痛いです」
「……」
無言だったけど、掴む力を弱めてくれた。
ん? 離宮はこっちじゃないよ。どこに連れて行かれるの?
まさか、地下牢に逆戻り?
聞きたいけど、聞くのが
私、なんかやらかしたのかなー。
でも、なにをやらかしたのかがわからないから、謝ることもできないし。
とか考えている間に、周囲の様子が変わってきたのが目に見えてわかった。
なんだろう? 樹木の剪定状態が美しいというか。
彫像がちらほら。花をつけた木が多くなって噴水や東屋もある。
んんん?
ゴージャスな建物が見えてきたけど、あれって、もしかしなくてもお城ですよね?
え、このまま王女様に謁見とか?
だとすると、この服ではマズいのでは……。
「アルベルト、私、この格好のままで大丈夫ですか?」
「あ」
アルベルトの長い足が止まり、我に返ったような表情で私を見下ろした。
うん。ダメだよね。マナー的に。
でも、アルベルトは着替える手間より急ぐのを優先させたっぽい。
背中のマントを外して私をくるむと、そのまま片手で私を抱え上げ、さっきよりも早く歩き出した。
いやぁあああ。
子供抱っこはやーめーてー。
お姫様抱っこならいいかっていうと、そうじゃなくて。
あ、普通のお姫様ならいいよ。むしろ高校生くらいの年齢まで、場合によってはいつまでも、おばあちゃんになったってアリだと思う。
でもそれは、お姫様だから、他人事だからで。
実際される側だと、体重が気になるし、誰かに見られるのも恥ずかしいし。
この年で抱っこして運ばれるのって、なんて羞恥プレイ?
アルベルトに「おろして」と言いたかったけど、口開けたら怪我しそうな勢いで揺れていたので、落ちないようにしがみついて、外からはなるべく顔を見られないように顔をアルベルトにくっつける。
こ、これでなんとか、周囲の視線からは逃げられるはず。
幸い、城に入っても、アルベルトを知ってる警護の騎士からは敬礼されるだけで、呼び止められたり話し込まれたりはなくて。
どこかの一室に運ばれ、ソファの上におろされた時には、心からほっとした。
「ユリア様、急ですが、今日からはこちらで過ごしてもらいます。もう少しすればエレナが来ます。離宮に置いていた持ち物なども運ばせますので、着替えはそれからになります。研究所の方は、今日は休みでお願いします」
アルベルトは有無を言わせない勢いでそれだけ言うと、さっさと部屋を出て行った。
ガチャリ
え? 今、鍵かけた?
離宮だと、夜に建物の鍵はおそらくかけてただろうけど、部屋の鍵はなかった。
昼間で城の中なのに、豪華で洗練された小物とかいっぱいなのに、牢屋とか軟禁とか連想しちゃうとか、ないわー。
テンションだだ下がりだったけど、ほんとにすぐにエレナが来てくれて、ちょっと回復した。
着替えてお茶を淹れてもらう頃にはだいぶ落ち着いた。
「エレナ、急に部屋が移った理由をなにか聞いていますか?」
「離宮では防衛不足だから、と聞いております。こちらは王太女殿下の私室の近くで、防衛の異世界品が置かれております。王太女殿下と一緒にお守りする方がアルベルト様も安心なのでしょう。本日、召喚された異世界品も厳重な扱いらしく、術使いたちが触れないことに不満を漏らしていました」
厳重に扱うって、異世界品だけじゃなく、私自身もだったのか。
確かに見えないはずの私や他の術使いにも見えるくらい、もやもやしてたもんね。
それを召喚できる私を、その辺に置いておけないってことだ。
あー。せっかく離宮生活になれたところだったのに。
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