第11話 明日からの予定

 ただの女子中学生に無茶ぶり過ぎるだろー。

 と思いながらの返答だったんだけど、しぶしぶではあるものの私の承諾を得られたことで、アルベルトの気は済んだらしく、イイ笑顔になった。

 

「では、明日の午前から教師がこちらに来ます。この広間で授業を受け、昼食をはさんで、午後からは先ほどの研究所に行き、術を学んでもらいます。生活に慣れた頃合いに、姫様とお茶会をされるといいでしょう。励んでくださいね」


「はい。あ」


「なんですか?」


「あの、ここで歌うのもいけませんか?」


「……貴女は吟遊詩人、もしくはやはり歌う職業の方なのですか?」


「違います。元の世界の言葉を忘れたくなくて」


「あぁ、なるほど。そうですね、誤解を招かないように、不特定多数の異性に聞かれないように注意すれば、歌っていただいても結構ですよ」


 良かった。

 いつ帰れるかわからないのに、帰る頃には言葉を忘れてたとかになったら、普通に怖い。

 

「楽器も必要ですか?」


「楽器があるのですか?」


 ちょっとテンション上がった。


「弦楽器と笛なら用意できますよ」


 ピアノはないのかー。

 私に弦楽器を奏でながら歌えるほどの器用さはないし、笛吹きながらじゃ物理的に歌えないから。


「すみません。いりません」


「……貴女の世界の話を今度じっくり聞きたいですね」


 うわ、アルベルトの目が怖い。

 情報漏洩は極力避けたいので、曖昧な笑顔で誤魔化した。

 私の微妙な拒絶が伝わったようで、アルベルトは目をそらした。


「朝から忙しかったでしょうから、私はこれで失礼します。明日からも忙しくなるので、今日はもう外出せずに、こちらでゆっくりなさってください」


「研究所や部屋のこと、ありがとうございました」


 さすがにお礼を言わなくては気持ちが悪いので伝えたんだけど。


「お気になさらず。こちらも頼み事をする立場ですし。貴女なら期待に答えてくれると信じていますよ」


 あー、そうだった。

 いったい明日からどれだけ詰め込まれるんだか。

 見送りは結構、とアルベルトは颯爽と出て行った。

 くっ。引き際をわきまえてるとか、アルベルトが何枚も上手なのが悔しい。


 エレナがお茶のおかわりを聞いてくれたけど、それよりも眠たい。

 昨日寝てないからなー。

 正直に伝えると、すぐに寝室に連れて行って、休む準備をしてくれた。 

 湯浴みの準備も言われたけど、いや、もう本気で眠たいんで結構です。

 無意識に【清める】とつぶやくとメイクも落ちたっぽいんで、ベッドに倒れ込んだ。

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