第3話

「では稀咲ちゃん、私の後ろに着いてきてください。 必要なものを渡しますから」

そう言って先生は先生達の部屋へと歩き出す。

稀咲は少し遅れてその後を追いかけていった。


先生の部屋の前に着くと、そこには猫用の道具が一式置いてある。

「猫には稀咲ちゃん達の部屋は狭いので別の部屋で過ごして貰おうと思っているのですが、稀咲ちゃんも猫と同じ部屋で過ごしますか?」

先生は道具をまとめて持ちながら稀咲に聞く。

「猫、と同じ部屋、でも、いいの、ですか?」

稀咲が聞き返すと、先生は大きく首を縦に振った。

稀咲は顔を輝かせると、子猫に問う。

「子猫、ちゃんの部屋で…私も過ごして、いい?」

子猫は稀咲にすりすりとしてからにゃんと鳴いた。

「私も、子猫と同じ、部屋がいい、です」

稀咲がそう言うのを待っていたかのように、先生は笑顔でその答えに頷いた。

「では、猫と稀咲ちゃんの部屋へ行きましょうか」

そう言って先生は新たな部屋を目指して歩き出したのだった。



   ***



それから稀咲は子猫に必要なものを先生と共に部屋の中にセットし、自分の荷物を新しい部屋に全て運び終えると稀咲と子猫は仲良く眠りについた。


そして朝になると稀咲は子猫の鳴き声で目が醒めた。

子猫は稀咲のお腹の上に座っていた。

「にゃ~ん」

「おはよう…子猫ちゃん」

そう言って稀咲は優しく子猫の頭を撫でた。

子猫は稀咲の手に頭を擦り付けると、ベットの上から音をたてずに飛び降りた。

そして稀咲の方を向いてにゃんっと鳴いた。

それはまるでこっちにおいでよと言っているかの様にも見えた。

「どうしたの? ……そうだ、名前」

稀咲は寝る直前に先生に名前をつけるように頼まれていたことを思い出した。

黒猫だからクロ? それとも猫だからタマ?

などとなんとも安直な案を頭に浮かべながら稀咲は名前を考える。


「ルーナ…子猫ちゃん、の名前はルーナ…… スペイン語で、月と言う意味… 月は暗闇を照らし、進むべき道を、指し示してくれる。 だから黒い毛並みの、子猫ちゃんにぴったり…」

稀咲はかすかに広角をあげると、ルーナのことを抱き上げ布団の上に乗せた。

そして稀咲は毎日のルーティーンである学校の支度を済ませ、着替えるとルーナと共に食堂へと向かったのだった。


食堂につくと、稀咲はまずルーナのご飯を用意するためにいつもの席から離れた。

その間ルーナは他の子供たちに囲まれ、毛が乱れるほどに撫でまわされていた。

「ルーナ、ご飯だよ…」

稀咲に声をかけられて直ぐ様ダッシュして向かうルーナ。

そして稀咲の元につくとみんなのいただきますと共にルーナもご飯を食べ始めたのだった。

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