第2話
それを見た玲香はもちろんそれをよく思わない訳で、物凄い顔をして稀咲のことを睨んでいた。
だがとうの稀咲はというと、初めて触った動物、ましてや可愛い子猫の姿に目を奪われていた。
一番前にいた玲香は子供達の中を掻き分けて稀咲のいる一番後ろに行くと、稀咲の手から乱暴に子猫を抜き取ってこう言った。
「これは私がお世話する猫よ! 勝手に触らないで!」
稀咲は急に抜き取られた勢いで軽くふらつきながらも、ごめんなさいと謝った。
するとすぐさま先生が言った。
「玲香ちゃん乱暴をしてはいけません。 きちんと稀咲ちゃんと猫に謝りなさい」
「なんでよ、私の猫をとった稀咲が悪いんじゃない! なんで私が謝らないといけないのよ」
「それでもいけません。 悪くなくても乱暴をしたら謝りなさい」
いくら先生にそう言われても玲香は絶対に自分が悪いとは認めず、挙げ句の果てに子猫のことをその辺に放り出すと稀咲のことを突き飛ばした。
「全部あんたのせいよ! もう知らない! 猫も好きにすれば?」
玲香はそう言い残すと自分の部屋へ向かって走り去っていった。
「玲香ちゃん!」
玲香と仲が良い女の子ふたりが、玲香の後を追いかけて行く。
それを眺めるみんなだったが、すぐさま我に返った先生は口を開く。
「え~、玲香ちゃんがお世話をしないと言ったので、決め直したいと思います」
呆気にとられて見ていたみんなは、先生の一声で我に返った。
そしてまたアピールをしようとする。
だがみんながアピールをする前に先生は次は誰にするかを発表した。
「稀咲ちゃんがお世話してみない? ほら、猫も懐いてるみたいだしきっと上手く出来ると思うのよ」
先生がそう言うと半分くらいの子は首を縦に振って頷き、もう半分の子は稀咲のことを睨んでいた。
「良いの、ですか?」
稀咲は足にじゃれつく子猫にチラッと視線を向けると、すぐに先生に視線を戻して聞く。
「ええ、勿論です。 私はあなたに頼みたいのです」
先生は稀咲の足にじゃれつく子猫を優しく抱き上げると、稀咲の手に渡した。
子猫は稀咲の顔を見ると、大好きだよとでも言うかのようにゴロゴロと喉を鳴らしながら稀咲の胸にピトッと頭を当てた。
そして小さな声でにゃあと鳴く。
「よろしく、ね…子猫、ちゃん」
稀咲がそう言うと、先生はパンッと手を叩いてみんなの意識を先生の方に戻す。
「ではそれぞれ部屋に戻りなさい。 稀咲ちゃんはこの後私のところに来てください。 必要なものを渡します」
先生がそう言い終わるとみんながそれぞれ自分の部屋へと戻っていく。
中には稀咲のことを睨む子もいたが、子猫に夢中な稀咲は気付いていなかった。
そして五分もすれば食堂に残っているのは稀咲と先生だけになった。
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