3ページ目 信号機になってしまった
実家に帰る途中、気まぐれで最寄駅から歩いて帰ることにしたが、母校の前の信号機がなくなっていることに気付いた。
小さい頃から信号機とか切符の券売機のような、常にそこにあって、期待をした通りの動作をしてくれるものにとても安心する性格だった。
孤独の中で十字路を眺めるだけの存在に安心まで求めるなんて、自分はなんて自分勝手だったのだろう。
せめてその孤独を味わって弔おうと、信号機があった場所に立ち、かつての信号機と同じ方を向いて十字路を眺めた。
そうしているとだんだん自分の顔が緑やら赤やらに光るようになって、体が動かなくなった。
どうやらおれは信号機になってしまったようだ。
少ない通行人を見ながら過ごすのはとても暇だが、自分に期待されている動作が緑と赤に光ることだけであるというのはなんとも心地が良い。
信号機がこんなに良い気分なら、かつての僕と信号機との関係はWin-Winであったようで、とても気分が良くなった。
平行世界の自分と交換日記をしている。 草薙 @kusanagi0130
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