追憶48 宿命の決着、双方の初手(三人力の統制者、KANON)
最終目標・黄昏の君主は、
山とは言っても、今更足で登る気は無い。
“ラストバトル”への転移ポータルのある山頂まで、バハムートで翔ぶつもりだ。
直ぐにでも向かいたかったが、
決着を付ければ、彼女もこのゲームでは私達から手を引くと言っていた。
いよいよ時間が無いと言うのに……と言いたいのは山々だが、
それに。
戦いの外で
固定の敵対プレイヤーが、人間関係に於いても敵とは限らない。VRMMO時代ならではの
お望み通り、私も“全て”を出し尽くして、あの女を殺すつもりだ。
鉛色の枯れ草が点在する、無味乾燥な平地。
資源の枯渇した見た目とは裏腹、エーテル溜まりとしては潤沢な土地でもあった。
民家を休憩ポイントにする要領で次元の位相をずらし、許可した者だけが入れるようにする。
知人と水入らずで対人戦を行いたいプレイヤーに向けて、敢えて用意された土地なのだろう。
私達と
これは実戦だ。試合前の一礼など、あろう筈も無い。
両陣営の各自、役割に沿った立ち位置へつき、初手の行動に出ていた。
黄金の重甲冑
魔術師の
最後尾に、新入りの
いずれにせよ後列に置くべき人員では無いと思うが、戦力外にされたか、或いは何か裏があるのか。
私は開幕一番、早速変異エーテルを開放した。
身体から、鮮やかな
最初にも言ったように、“全て”を容赦無く出し切るつもりだ。
【一撃でも受ければ即、死とする】
あの統制樹どもが使っていた雛型の命令文、そのままの流用だ。
変異エーテルを伴って宣言された言葉が、単なる
だからこそ、奴等の進撃の手を遅らせられた、とも言える。
狙いは無論、敵の主砲である
奴の背後で地面が砕けた。
同瞬、
【次元隔離】
間違い無く
念の為、
分かりやすい
ストーンショットの石弾と奴等の接する因果が否定――早い話が接触判定をキャンセル――された結果、空を切ったのだろう。
……目視情報から仮定すると、二名以上の人員で成る“合体スキル”の様なものか。
さもなくば、
エーテル光の挙動から察するに、スキルの
以上から推測される事は二つ。
一つ。
一つ。
そうなれば当然、
奴がどんな変異エーテルを選定したのかは未知数だが、魔術師としての能力を伸ばすものなのか、逆に穴を埋めるものなのか。
【ギア・ヘイスト】
今度は
魔法の副次光を見るに、
こちらも攻撃魔法の念仏を唱えていた
今のルールは潮時と判断。このままでは、こちらから死者が出かねない。
【魔法を禁ず】
私はまた、統制樹のテンプレートに倣った命令を場に敷いた。
私は一方で、
それが何なのか
それでも、
私にはまるで見えない“隙”を突いて、無形の鞭が
対する
ゲーム的に形容するなら、スーパーアーマーとでも言うべきか。
胴体の大半をズタズタにされる一撃を受けても、欠片の遅滞も無く反撃される。
何のゲームシステム的な裏打ちの無い、あの男自身の根性だとか精神鍛練によるリアルスキルなのが、尚更の事
敵に回せば相当の脅威だろう。
また、見た目以上に
「そこまで強く打った覚えはないのですが、手応えがありすぎる」
僧侶が、嫌味なまでに穏やかに言った。
「鞭の速さの揺らぎが前回よりも遥かに大きいことも併せると――なるほど、先ほどのギア・ヘイストなる術は、徐々に時間を加速させるもののようですね。
こう仮定すると、不可解な点が一応氷解する」
そうか。
私が彼女の動きに感じていた違和感の正体も、或いは。
当然、
「よくわかりましたね」
彼女はギア・ヘイストの事を知っていたらしい。
大方、別のゲームで
「教えてくれないとは、存外人が悪い」
「教える前に見破られたんですもの」
此方の二人が緊張感の無いやり取りをする間に、黄金壁
守りに定評のある
武器の取り回しで不利な
「余裕ぶってられるのも、今のうちだ!」
前回の雪辱戦とでも言うのか。
だが。
此方は
さて、
君はこのまま、私怨に任せて後衛を見殺しにするか?
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