第20話 火災鎧
兜バイザーから覗く眼にあたる部分から、煌々と燃える溶岩のルビーが冷静に獲物を見定めていた。
そして、同じように燃える剣を振り回し、プレイヤーたちを襲ってゆく。
「まずい! みんなやられちまう……行くぞ!」
ゴールデンが走る。
アキヤマもストリンドベリも、クロスも走り出す。
「ダメだ!!」
必死に止めようとするが、彼らは耳を貸さない。
彼らは正しい。目の前で人の死が迫っていて、それを助けるつもりなんだ。
それはとても正しい。
だけど、違う。今は違うんだ。あれだけは違う!
「くっそぉっ!!」
慌てて追いかけるが、もう戦闘が始まってしまっていた。
ゴールデンたちパーティの四人だけでなく、他のプレイヤーたちも戦闘を開始していた。鎧剣士が5人、軽装剣士が2人――最悪だ。
直接攻撃職がほとんどだ。魔女がアキヤマしかいない……!
プレイヤーたちの剣が燃える剣にぶつかった瞬間、武器を伝って炎がプレイヤー側に走っていく。
「うあああああ!?」
鎧剣士の男が火だるまになって悲鳴を上げる。転がって火を消そうとする彼の胸を燃える剣が突き刺し、その息の根を止めた。
「そいつの剣を受けるなァ!!」
大声で叫ぶ。
叫びながら、走る。
「そいつの剣は、延焼属性を付与されてる!」
「はぁ!? そんなの聞いたことないんだけど!?」
クロスが打ち込もうとしていた剣を止め、バックステップでこちらまで飛んでくる。
「いいから教会に入れ! ここは俺が引き受ける!」
「ふざけないでよ!」
「ふざけてない! こいつの技は全部初見殺しだ! このままじゃ皆殺しだ!!」
「なんでそんなこと知って……」
怪訝な顔をするクロス。
説得しているヒマはない。
こうして話している間も、燃える鎧が剣を振り回しているのだ。
それを剣で受けてしまった鎧剣士がまた一人火だるまになってしまっている。
「ゴールデン! クロスを教会に連れ込め!!」
「な、なにを……」
「コイツは火災鎧! Ver.3.01の追加ボスだ!! 君らの装備では勝てない!! 教会の中に避難が必要なんだ!!」
「Ver.3.01ィ!? まだそんなの出てないでしょ!? っていうか、まだ3.00すら配信されてないし! あーしだって聞いたことも……」
「信じろ!! いいからクロスたちを連れて中に入れえええええっ! コイツの攻撃にはショック判定がまだ入ってないんだ!! 即死なんだよ!! わかれ!!」
「……っ!!」
アキヤマの表情が硬直する。
「まさか、そういう……ことっ!? あーたに任せていいのね!?」
「俺にしか対処出来ない!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます