第12話: またしても何も知らない女神様のアシスト




 ──Q.脱サラって、なに? 

 ──A.脱サラは、脱・サラリーマンのことです。あ、サラリーは給料で、マンは人です


 ──Q.つまり? 

 ──A.雇われから、事業主になる、というわけです




 はあ、なるほど……とりあえず、意味が分かったエヴァは頷いた。



 聞き覚えの無い言葉だが、要は雇われて修行していた料理人が、自分の店を持つような話だ。


 ただ、彼女はエヴァが知る限り何処そこに雇われてはいないし、料理人でもなかった覚えがあるが……ひとまず、それは横に置いた。



 ──Q.なんでお店を開いたの? 

 ──A.一度、やってみたかったんです


 ──Q.え、それだけ? 

 ──A.サラリーマンの、夢でございますから



 よく分からんが、そういうものなのか……そこまで聞いたエヴァは、素直に首を傾げた。



 ──Q.ところで、その恰好はなんだ? 

 ──A.この恰好でやれば、客が来ると断言されましたので


 ──Q.え、誰に? 

 ──A.申し訳ありません、それにお答えするのはちょっと……



 そこまで聞かれた彼女は、素直に答えた。


 いったい誰に言われたって、それは……室内の片隅にて不可視モードで震えている、賢者の書である。


 そう、彼女は降って湧いたかのような金貨を使って飲食店を始めようという、脱サラのお約束を行おうとするまでは、良かった。


 問題なのは、(女神視点で見れば)何を血迷ったのか、賢者の書にアドバイスを求めたという点だ。



 これの何が問題って、彼女の視点から見れば、その判断に間違いはない……というところだ。



 なにせ、彼女には知識が無い。やってみたいなと思った事はあっても、本気になって勉強した事はないからだ。


 誰だって、そんなものだろう。実行に移す為に動いている者以外からすれば、そんなものだ。


 原価計算とかマーケティングとかも試したことないし、料理学校に通っているわけでもない。


 なんなら飲食店で働いて、現場を学ぶわけでもない。それどころか、自発的な練習だってするわけでもない、趣味の範疇。



 あくまでも、やりたいなあ、という空想の域。



 そのうえ、店を開くといっても、彼女にはこの世界でそれを行うための知識が絶望的に欠けていた。


 あの男の知識にも『飲食店を開くための手順』は無かった。というか、無いのが当たり前である。


 つまり、今の彼女は、金があるだけのド素人。それも、常識に偏りのある、ド素人。


 その程度の知識と認識しか無かった彼女が、いざ店を開けようと考え……いったい、誰に頼れば良いというのか。



『……お困りのようですね』



 そんな時──居たのだ、頼りになる女神の御付が! 



『ああ、皆まで言わずともけっこう。貴女様のお悩み、このワタクシが解決して差し上げましょう』



 それからの……そう、賢者の書が手を貸し始めてからは、実に事がスムーズに運んだ。


 まるで、これから起こる事が予見できているかのように、何もかもが……オリバー夫妻との交渉すらも、賢者の書の言う通りに進めれば、あっという間に事が終わった。



 そして、それは法律上の手続きだけでは終わらなかった。



 このように魔法を使えば、ここに魔法を使えば……そんな感じのアドバイスを受けて、内装の工事を行ったわけだが、これがまた、凄いのだ。


 これまで、彼女は感覚的に魔法を使っていた。こうやれば、こうなる、そういう感覚であった。


 しかし、そんな感覚派の彼女であっても、だ。


 その感覚に見合うアドバイスを受ければ、手応えというか、効率性というか、出来栄えがこれまでとは雲泥の差であった。


 おかげで、たった1時間強で室内はおろか建物そのものを新品同然にまで修復(あるいは、改良)しただけではない。


 この世界においては完全なオーバーテクノロジーを思いつく限り設置したうえで、その日の夜に開業出来る状態にまで持って行ったのだ。



 しかも、賢者の書のアドバイス等は、あくまでも彼女が困った時に限られた。



 つまり、あーだこーだと口出ししてこないけど、困った時には察して助言を行い、今の彼女の力量ではイメージし辛い部分を補強してくれたのだ。


 おかげで、『賢者の書』に対する、彼女の中での評価はうなぎ登り。ぶっちゃけ、やっている事は完全にスパダリのアレである。


 なので、女神に次いで、『さすがです、賢者の書様!』という評価に至るのも、彼女の視点から見れば当然の話であった。




 ──Q.おまえ、その恰好恥ずかしくないの? 

 ──A.ぶっちゃけ、恥ずかしいです


 ──Q.え、恥ずかしいの? そういうの、平気だと思っていたのじゃ

 ──A.どうしてそう思っているのか分かりませんけど、私にだって羞恥心はありますよ




 だから、胸の谷間を意図的に見せ付ける格好には羞恥心を覚えたが、それでも賢者の書の言う事ならばと思ったわけである。



 ……なら、先日覗かれた時はどうなのかって? 



 アレにも羞恥心を覚えてはいたが、今にも寒さでどうにかなってしまいそうなぐらいに震えている様に、ある種の憐れみを覚えたからである。


 なにせ、女神様から与えられた玉姿ぎょくしだ。


 続くようであれば話は別だが、その美しさに魔が差してしまうのは仕方がない……そんな思いがあったし、酷い風邪を引くという罰が当たったので、彼女の中ではもう済んだ事であった。




 ──Q.じゃあ、着替えれば? 

 ──A.その、この恰好の方が印象に残り易いと……私も、この程度で印象に残るのであれば、頑張ろうと思いまして




 で、話を戻そう。


 『賢者の書』については知らないエヴァからすれば、場末酒場の女店員のような恰好をしている意味が分からなかった。


 まあ、これは当の本から指示があったので、それに従った結果である……当然、エヴァはそんなこと知らない。




 ──Q.印象って、そんなに大事か? 味で勝負すれば? 

 ──A.味の前に、です。とにかく、どんな形であれ皆様の印象に残らなければ勝負すら出来ません




 それは、素人の……いや、SNSによる情報過多な現代を実際に生きていた彼女にとっては、賢者の書の意見はとても納得のいくモノであった。


 中身で勝負、中身が有れば勝てるなんてのは、あくまでも食べてもらった後の話。


 まずは、食べてもらわなければ、如何に中身が優れたとしても次には続かない。いや、それどころか、その最初の入口にすら立てない。


 飲食店に限らず、どんな店をやろうが、同じ事だ。


 それに、この世界に限らず……食べ歩きが趣味でない人ならば、だいたい馴染みの店や通い慣れた店をループするのが普通である。


 つまり、難しいのだ。


 そういう人を、新規の店にも通わせるようにするには……そのうえ、彼女の場合、余計に難しかった。


 なにせ、彼女は宣伝を全くしていない。


 超特急で用意したから看板はおろか店をやるって話もまだしていないし、そもそも、決めたのだって今日だ。


 そのうえ、彼女はこの町においては新参者。


 客を呼び寄せる上手いキャッチコピーなんてすぐには思いつかないし、それだって、得意というわけではない。




 ──Q.いや、そこまで本気にならんでも……話を聞く限り、趣味の範囲なのじゃろう? 

 ──A.やるからには本気です。半端な気持ちでは、あの御方にも失礼だと思いますので




 だからこそ、その為に有用なアドバイスを行い、色々と手伝ってくれた賢者の書の優しさに報いたい気持ちがあった。


 それに、店をやるという話は己から発案し、そうしようと決めたのだって、自分だ。


 抵抗や羞恥心があるにせよ、防犯対策は既に終えている。それで客を呼べるのならば、安いのでは……そう、思ったわけである。



「……ふむ、話は分かった」



 一通り話を聞いたエヴァは、グルリと室内を見回し……何者かは知らないが、助言を行った者に対して、『わかっておるな』と内心唸った。



 と、言うのも、だ。



 仮に、己が何も知らないまま、この店を見付けた時……とりあえず、お試しに入ってみようかなと思える作りになっていたからだ。


 理由としてはまず、建物の外観が新築同然に綺麗なだけでなく、室内もまた、とにかく綺麗であるということ。


 駆け出しの料理人の店なんて、だいたいがこぢんまりで、建物自体も比較的に年期が入った場合が多い。


 どうしてかって、そこまで金を回す余裕がないからで、そこらへんは仕方がないだろう。客だって、そこらへんは分かっている。


 しかし、それが評価されないかと言えば、そんなわけもない。やっぱり、汚いよりは綺麗な店の方が評価は高くなるのだ。


 外観が綺麗で、窓から中を除けば中も綺麗。近付けば、あまり嗅いだ覚えはないが、食欲を誘う良い香りが漂ってくる。


 そして、店内には……それはそれは、エヴァの長き人生においても1,2を争うレベルの美女が居る。


 これはまあ、エヴァの好みなだけだが……客観的に考えても、冴えない風貌の者が居るよりは、思わず振り返ってしまうような美人の方が注意を引き付け易いのは道理である。



(……カウンターの奥にある大量の瓶……中身は酒か?)



 そして、チラリ、と。


 彼女の後方、長い棚に並べられた大量の瓶。ラベルに記されている文字に見覚えはないが、エヴァは直感的に察した。



 アレは──酒である、と。



 それならばまあ、分かる。


 格好は些か官能的ではあるが、一等地に店を構えているような上品なところではなく、場末の酒場なら、分かる。


 娼婦が店員を兼任している(いちおう、グレーゾーンの話だが)ところだってあるし、実際にエヴァはそういう店を知っている。


 というか、そういう店はなんら珍しくはない。


 客が取れなくとも店員としての給料が貰えるし、そこに客が付けば一晩代を貰えるから、むしろ、そっちを目指している娼婦が多いぐらいだ。


 そういうのをやっていない店もあるけど、そういう店は店で、美人さんを高給で雇ったりするから、それ自体は本当に良くある話だ。


 ……それらを踏まえたうえで、しばし考えたエヴァは。



「……もう、食事は出せるのか?」

「初日ですし、そこまで手の込んだモノではありませんが……お酒も、ありますよ」

「なら、いただこう」



 とりあえず、食ってから色々考えよう……そう、結論を出したのであった。






 ……。


 ……。


 …………結果、どうなったかと言うと。



「うま、美味すぎる……犯罪的だ、なんだこの美味さは……!!!」

「え、そこまでですか? というか、泣くほど?」

「これが涙を流さずにいられるか……!!」



 彼女が作ったシチューを口に含んだ瞬間、エヴァは目を見開いた。それはもう、劇的だ。


 カッ! 


 と、バックに文字が付いたのではと思ってしまうぐらいに、それはそれは見事な見開きようだった。


 次いで、出されたパンを掴んだ瞬間に目を瞬かせ、千切った瞬間の香りに目を細め、口に入れてすぐに何度も頷いた。


 そして、極めつけは……一緒に出したワインを口に入れた時だ。


 その瞬間、傍目にも分かるぐらい、ピタッとエヴァは動きを止めた。あまりの反応に、何か起こったのかと声を掛けたぐらいだ。


 けれども、そんな彼女の心配を他所に……エヴァは、泣いた。


 それはまるで、感極まるかのような……グラスの淵から滴り落ちるかのような、そんな静かな涙であった。


 ……とまあ、そういう流れで冒頭より繋がっているわけだが。



(そ、そんなになのか……さすがは現代社会の料理、久しぶりの味だと思っていたけど、それぐらい違うんだな……)



 感想を貰えたらという程度の感覚で気楽に出した彼女の方は、エヴァのあまりの反応にどうしたらいいか分からなくなっていた。



 いったい、彼女は何を作ったのか? 



 いちおう、特別なモノではない。シチュー自体は名前が少し違うけど、この世界にもあるし、作り方も基本的には一緒だ。


 ただ、他とは違う点が幾つか有る。


 まず一つは、使用した食材のほとんどが魔法で育てたモノで、その中でも特に色艶が良く、出来が良かった物を使っているということ。


 以前、トマトスープを振る舞った時はあったが、アレは収穫した際に出た、傷があったり形が悪かったり、比較的出来の良くなかったやつを使っていた。


 今回は、違う。人に振る舞う料理に妥協はよろしくないと思って、良いやつを厳選したのだ。


 そして、食材だけではない。実は、調味料なども、そうだ。


 それも、賢者の書を通じて女神より新たに与えられた、『ネットスーパー』なる魔法を駆使して、今の彼女では作り出せない調味料などを、彼女が生きた前世の世界より手に入れ、使用したのだ。


 この、『ネットスーパー』なる魔法、どういう代物なのかを簡潔に述べるならば、だ。


 この世界ではなく、彼女の前世……すなわち、現代社会にて流通している様々な物資を、次元を飛び越えて購入する事が出来るという、商人が聞けば憤死してしまうような反則魔法である。



 ……。



 ……。



 …………女神がそれを許したのかって? 



 そこらへんは、さすがは賢者の書というやつだ。


 賢者の書の巧みな話術によって、女神にその必要性を訴え、『それならば……』と女神を納得させ、新たな権能を与えられたのだ。


 ……ちなみに。



『女神様、別世界に送った○○という人物を覚えていらっしゃいますか?』

『……ああ、あの人ね。あの人が、どうかしたの?』

『いえ、別に、深い意味はないのですが……貴女様はたしか、あの人に色々と加護を与えましたよね?』

『うん、そうだよ。それに、サポート役を送ったから、特に生活に困ってはいないはずだけど』

『実は、そのサポート役からですね、○○の精神がナーバスになっているという報告を受けまして』

『え、私にはそんなの来てないけど?』

『そりゃあ、いきなり社長に報告なんてきませんよ、何を言っているのですか?』

『え、そういうものなの? おかしいなあ、いちおうは私の分身みたいなモノなんだけど』

『私が言うのもなんですけど、貴女様は己の分身がキッチリ仕事をこなしてくれるとお考えで? たぶん、寄り道しまくっていると思いますよ』

『……え、あ、うん、それで、どんな報告が?』

『単刀直入に言い直しますと、米が食べたいそうです。具体的には、和食が食べたくて発狂しそうだとか』

『──それは、私の落ち度だ。ヤバい、うっかりしていた』

『はい、ですので、悪用しない範囲で、それを解決出来る権能を新たに与えた方がよろしいのではと思いまして』

『確かに、珍しく良い事を言うじゃないか。ならば、急ごう、米と味噌を失くしては長くは生きられぬ身のはずだ』

『あ、細かいところは私がやっておきますので、『力』だけ渡してくれたら来て貰う必要はありませんよ』

『え?』

『貴女が出ると、色々と余計な面倒事を引き起こすでしょう?』

『どうしよう、あまり否定出来ないのが悲しい……』



 そんな感じの会話が女神と本との間で繰り広げられていたが、それを知っている者は、賢者の書を除いてこの場には誰も居なかった。



 ……で、話を戻そう。



 この『ネットスーパー』によって、彼女にとっては、久しぶりの味噌汁を飲めるわあ……と、喜ぶ程度だが……それはあくまでも彼女の感覚だ。


 この世界……そう、そういった分野でも、現代よりも成熟していない、この世界の人達の基準で考えるならば。



 ──な、なんじゃこりゃあ!? 



 みたいな感想である。


 それも、『こんなに美味しいのは生まれて初めて……!』な意味での、なんじゃこりゃあ、である。



 ……そうなってしまうのも、致し方ない話だ。



 というのも、食の美味さというのは、基本的には安定と成長が大前提。特に大事なのが、安定だろう。


 現代日本における和食の発展、世界的に見ても上位に位置する日本食の美味さを決定付けたのは、大なり小なり社会が安定していた期間が長いから。



 対して、この世界はどうだろうか。



 人間同士の争いとは別に、魔物によってどこそこの国が滅び、あるいは壊滅的な被害を受けたという話はどの国にも残されている。


 そんな世界で、果たして食文化は発展するだろうか? 


 おそらく、進んでは後退し、後退しては進み、時に断絶し、そして異なる地で似たようなモノが生み出され……それらを繰り返しながら、ちょっとずつ発展してゆくはずだ。


 言い換えれば、発展が遅いというわけで。



(……そういえば、オリバーさんたちにトマトスープを出した時、こんなに美味しいスープは初めてってみんな口を揃えていたけど……アレって、御世辞じゃなかったんだな)



 なんとなく、この世界の食のレベルを察した彼女は、ポロポロと涙を零しながら食べ続けているエヴァにハンカチを差し出しつつ……内心にて、う~んと唸った。



(思い返せば、メネシアさんの料理も全体的に素材の味というか、濃いか薄いかの二択みたいな味付けだったけど……そうか、この世界では、それが普通なのか……)



 あの男の記憶があるとはいえ、それはあくまでも、あの男の感覚を通した記憶で、あの男はどちらかというと、味よりも量に関心があった。


 なので、さすがに食の良し悪しに関する部分は少なく、こうしてエヴァの反応を見るまで気付けなかった……で、だ。



「……あの、エヴァさん」

「ぐす、な、なんじゃ?」



 涙を流しながら食べるのは良いとして、とりあえずは、聞かなければならないことを率直に尋ねた。



「私の料理、売れると思いますか?」

「絶対に売れる、断言する」



 力強く頷くエヴァに、「ああ、良かった、安心しました」彼女は安堵のため息を零した。



「それで、一人分で大銅貨10枚にしようかと思っているのですが」

「止めろ暴動が起きる、せめて銀貨は取れ」

「え?」

「これで大銅貨10枚とか、おまえの値段設定どうなっておるのだ……遅かれ早かれ放火されるぞ」



 でも、その安心はすぐに終わった。



「え、でも、ワインは別売りですので、ワインの値段を入れると大銅貨15枚に……」

「止めろ、こんな上等なワインを一杯銅貨5枚とか、それを収入源にしている貴族から刺客を送られまくるぞ」

「え、そこまで?」



 さすがに魔法でもワインを用意するには時間が足りなかったので、『ネットスーパー』で大量買いしたワインなんだけど──っと言い掛けた唇を、彼女は寸でのところで堪えた。



「そこまでって、おまえ……はあ、疑うのであれば実物を飲んでみるがよい」



 それを知る由もないエヴァは、深々とため息を吐くと……何処からともなく取り出した瓶を片手に、空になったグラスに注ぐと、それを彼女に差し出した。


 ……色合いと香りからして、この世界のワインかな? 


 目を瞑ったまま検討を付けた彼女は、一礼してから手に取り、口付け……その、なんとも評価の困る味に、思わず顔が歪んだ。



「どうじゃ?」

「その、個性的な御味ですね」

「ちなみに、それが一般的に出回っている庶民の酒じゃ」

「えぇ……」

「そして、今しがた出したおまえさんのワイン……アレと同レベルを飲もうと思えば、金貨1枚でも到底足りん。それどころか、当たり年の中でも、熟成が上手くいった当たりの樽に匹敵するのじゃ」

「はぇー」


 ──現代の酒造技術って、本当に凄いんだな。



 そう、畏怖の念を抱いた彼女は……とりあえず、女神と賢者の書と、受け継いできた製造者たちに、内心にて感謝の言葉を捧げるのであった。



「よし、おかわりをくれ。いやあ、一杯銅貨5枚でこのような上等な酒を飲めるとは、ワシってツイておるのじゃ」

「え? さっき、安過ぎるって」

「それは明日からの話じゃ。今日は一杯銅貨5枚が適切じゃからのう、飲めるだけ飲まねば罰が当たるというものじゃ」

「そ、そうですか……」



 ……捧げるのであった。




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