第6話

彼女の演奏を、聞いたあと詳しい話を聞きたくて連絡交換した。彼女から演奏はどうだったか聞かれて自分とは、全く違う表現でここまで心に残ったのは初めてだと伝えると彼女はとびきりの笑顔でやったねとはしゃいでいた。

 しかし、これだけ演奏出来る子なら記憶に残ると思うんだけど、彼女は一体どこの誰なんだ?なやんでいると彼女の親が迎えにきたみたいで足早に帰っていった。


それからは、彼女と定期的に連絡をとり大会に行けばよく顔を合わせるようになったが、高校に入ってから彼女とは大会で顔を合わせることができなくなった。連絡は取り合うことは出来るがタイミングが悪かったとか用事があってとかとごまかされ続けられた。


高校3年の時に音楽の道を生きていくなら受けるべき登竜門的な大会に本部の方から推薦され出場が決まった。ここでいい結果を出せばプロとしての道が開かれる、僕は今まで以上に練習にのめり込んだ。食事を忘れ倒れるまでやって意識を失うことで睡眠をとり体の限界まで自分を追い詰めていた。


大会まで一週間と迫った僕に手紙が届いた。住所は書いてなかったが、僕の名前と最近連絡を取っていなかった彼女の名前があった。



「いきなりの手紙ごめんね、それと最近連絡もあまり取れず申し訳ないです。この手紙を見てる時はきっと私は、病院で戦っているとおもいます。高校に入るくらいにある病気が見つかり治療の為に音楽活動を控えることになりました。だから大会とか行けなくてごめん。でも、私にとって楽器は離すことの出来ないものだから毎日触ってはいるよ。

 あなたの活躍は両親から見に行ってもらって聞いてます、まるで自分のことのように嬉しい反面なんでそばに行けないんだろうって悔しい気持ちも。

 高校2年の夏私は、このままなにもしなければ余命1年と言われてしまいました。急すぎて最初は実感できなかったけどだんだんと怖くなってきました。でもそんな私を支えてくれたのがヴァイオリンでした。昔、公園に一人寂しくしている男の子がいて無理やり誘って遊んでいたらその子のお母さんに怒られその子も連れて行かれてしまいました。私は、それが悔しくてそのおばさんを見返してやろうとお母さんや周りのママに色々聞いて男の子がヴァイオリンをやっていると知りました。

 私は、すぐお母さんにねだってヴァイオリンを始めたけどもう大変、努力に努力を重ねてやっとあなたの前に立つことができました。あなたは当然私のことなんて覚えてないけど、私は、あなたを追いかけてここまで来たから、今の私の精一杯を見せようと張り切りすぎて凄い演奏になっちゃったけどあなたに届いたのが嬉しかった。見返してやろうと始めたヴァイオリンだけど、その時には見返す気持ちも、無くなっちゃいました。

 それからあなたと会う機会も増えいつの間にかもっとあなたのそばにいたいと考える時間も、増えてきた時に宣告されました。今の私にはヴァイオリンとあなたしかいませんでもなにもしないと私は、消えてしまう。

 だから私は、生きるために可能性は決して高いとはいえないけど手術することにしました。なにかあって言えなくなるのも嫌だから手紙だけど私は、あなたが好きです。きっかけはささいなことだけどいつの間にかあなたが好きで好きで仕方ありません。もし、手術成功したら、直接いうから返事を聞かせてください」彼女からの手紙に頭が真っ白になる。さっきまで大会のことで頭がいっぱいだったのに頭の中には彼女のことでいっぱいになっていく。

 そして、僕は思い出す。昔一度だけ公園で女の子に誘われて遊んで楽しかった日のことを彼女はあの時の女の子だったんだ

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