第6話


「イミどうした?」


 小村くんが演奏を止めて私を見る。


(え? と動揺しながら小村くんを見る)


「今日、調子悪い? リズムずれてる」


「言われてみればそうだね。休憩する?」


 今井さんも違和感を感じていたらしく、心配していた。


 ――でも、でも。あの言葉を聞いてから、小村くんのことが気になっちゃうんだもん。あんなふうにはっきりと『好き』って言われたら……。


「衣冬?」


 ずっと黙ってる私を見て今井さんは余計心配する。


「じゃあ、ちょっと休憩しよっか」


「うん。そうした方がよさそうだね。あ、私飲み物買ってくるね」


 今井さんが教室から出て、私と小村くんだけの気まずい空間が完成した。


 小村くんはさっきの話を私に聞かれていないと思っているらしく、そのままギターの練習をしていた。


 ――あと、6か月。


 私は小村くんの余命が残り少ないことを思い出す。でも、なんで小村くんの余命はこんなに少ないんだろう。元気そうだし。もしかして、事故とか?


 私はギターを弾いている小村くんを気づかれないようにそっと眺める。


 足を組んで、慣れた手つきで弦を押さえる手。サラサラなセンター分け。真剣なまなざし。今の小村くんを見ると、本当に音楽が好きなんだなってことが分かった。


「どうした?」


 ――え?


 私はこっそり小村くんを見ていたつもりなのに、いつの間にかがっつり見てしまっていた。


「…………う……」


「……!」


 ――あれ、今。少し声が出た? 喋れないはずなのに? なんで?


「イミ。今喋った?」


(気のせいじゃない? と誤魔化しながら首を横に振る)


「そっか。別の音が聴こえたのかも」


 そして小村くんはすぐギターを弾き始める。


 ――さっきの声。どうやって出したんだろう? 出してみたいな。聞いてほしいな。


「ねえ、イミってさ……」


 小村くんがゆっくりと喋り始める。私はなんだろうと首を傾げる。


「ふう、飲み物買ってきたよ。衣冬にも買ってきたよ」


 飲み物を買いに行っていた今井さんが、戻ってきた。小村くんが話そうとしていたことは無くなってしまった。


 私はありがとうと頷きながら、今井さんが買ってきてくれた缶のココアを受け取る。


 ――あちち……。


 その缶は私が思ってるよりも熱かった。


「で、2人でなんの話してたの?」


 ニヤリ、と笑いながら今井さんは小村くんのことを見る。


「別に」


 小村くんは、何事もなかったように振る舞う。


「そ、まいいや。休憩終わったらまた練習再開するよ!」


「分かってる」


 小村くんは缶のジュースを一気に飲み干す。


「そうだ、小村。後で話あるんだけど」


「はあ?」


 また、今井さんはニヤついた。




 

「は? ライブ?」


 俺は妙に今井がニヤニヤしている理由が分かった気がする。


「うん。友達にチケット2枚貰ったんだけどさ、私あんまりこういうの興味ないからさ――」


「――イミと二人で行けと?」


「さっすが! よく分かってんじゃん!」


 やっぱりこいつに話すんじゃなかった。


「でもイミの方がこういうの興味あるか?」


 俺はなんとかチケットを受け取らないようにする。


「軽音楽の勉強とか言って連れ出せば大丈夫だよ!」


「だったらお前とイミで行けばいいじゃん」


「え!? イミ……じゃなかった、衣冬のこと好きなんでしょ! 初デートのチャンスあげてるんだから感謝してね!」


「誰も頼んでねーよ!」


「早く衣冬を恋に落とさないと、もうすぐ二年生だしクラスバラバラになっちゃうかもよ? あ、お前は留年か」


「別に部活で会えるだろ、あと留年するほど頭悪くねえよ!」


「とにかく! ライブと見せかけたデート楽しんで! じゃあね~!」


「っておい、待てよ!」


 チケットを無理やり俺のポケットに詰めて、今井は自転車に乗って走った。


「くそ、あいつ……」


 俺はポケットに入っていたチケットを見る。


 開催日 2024年 3月17日


「ってこれ明日じゃん!」





─────────あとがき──────────


 投稿遅れちゃってごめんなさい!

 数学のテストで20点取ったらまたスマホ没収されました……。

 数学って難しいですよね? 進級できるかな……?

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