第41話「鬼ごっこに潜んだ罠」
「おい待てよ真皇! ここで逃げるとはどういうつもりだ!?」
一方その頃、ノアドラとプファー。
「……っぐ、なんでついてくるんだよぉ……!」
逃げる涙目の幼女と言われてもおかしくはない外見の少女に、幼女を追いかけてエキサイトする少年。
こことは少しずれた世界には未成年保護法というシステムがあって、未成年――つまり、ノアドラやミオクのような子供であれば罪が軽くなる制度があるらしい。
だが、ニタニタ笑いながら追いかける少年と追いかけられているこの少女を、実は少年こそが被害者で、この眼前の少女こそが加害者だったとは誰も思わないだろう。
避難通告が流れているが故の誰もいないこの街で、その少年の蛮行は、彼の思う存分に振る舞われていた。
「あっ……ぎゃっ!」
何度目だろうか。プファーの背を掠めたノアドラの一撃が、自らの身を守るために体外へと露出させていた、鶏の手羽先よりも小さくなってしまった黄金の切れ端を毟り取る。
その一撃は僅かにプファーの背中を捉えて彼女を地面に押し倒す。
プファーはすぐに立ち上がろうとするものの、転んで擦りむいた膝の痛みに悶えて、彼女は再び地面を転がった。
「……大体これで最後か? 次はどう来る? まさかこれで終わりという事はないだろう」
「ぐ……ぅ」
しかし彼女に出来るのは、ただノアドラを睨むことだけ。
今までを黄金に頼って戦って(生きて)きた彼女は、黄金以外での戦闘方法を知らない。それ故に、プファーは今自分がどうすれば良いのか、わからなかった。
だから、己に残った最も金色に輝く黄金を、彼に差し向ける。
これは自分の核と言ってもいい黄金だ。これを失えば、人間としての自分は死ぬ。だが、プファーの最愛のトゥウィーニならば、この黄金に何かしてくれている筈で――
ばくんっ! ……プファーが最後に掲げた小さな矛は、いとも簡単にノアドラの黄金に飲み込まれてしまった。
「んじゃ……さよなら」
糸が切れたように、その場に崩れ落ちるプファーの体。
プファーの肉体は、物言わぬ人形の体に戻り――以降、二度と目蓋を開けることはなかった。
「……?」
だが。
どぅる、るるるん……。
【ノアドラさん……? どうかしたんですか?】
ノアドラの身体は、明確な異変を感じ取っていた。
最初は何かに手を握られたかのような違和感があって、……そのあとすぐに。
「っあ、……ぁぐ!?」
何かに、彼の身体は引っ張られた。
重力ではなく、風に煽られたわけでもなく。そもそも自然現象ではない。
しかも、引っ張られているのは彼の身体ではなく、彼のナカにある――
(……この、方向は……!)
引っ張られている先を知り、ノアドラは最初に仕留めるべき相手を間違えていたことをようやく悟った。
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