日常、終わる
「逆に、翔也さんにとっての幸せってなんなんですか?」
「改めて、幸せって何?と問われると困るものがあるな。……あー」
頭によぎったことがある。
幸せというよりも、願いだ。
そして、その願いはきっとどんな力を持ってしても叶うことはない。それでも、俺の幸せはその願いが叶った先にあるのかもしれない。
そんなことを考えていると、その願いに限りなく関わりが深い座敷童子の顔をずっと見つめていた。
「どうしました? 私のことそんなに見つめて……はっ!? やっぱり私の身体を!? 同棲生活で私の魅力に気づいてしまうことは仕方ないにしても、そ、そんな肉欲を満たしての幸せなんてーー」
(翔也様に指一本でも触れたら、跡形残さず消すぞ。低級妖怪)
「ごめんなさい」
洒落にならないマジの殺気を久々に感じた座敷童子は、さすがに大人しくなる。
助けを求めようとしているのか、俺に視線を送ってくるが、俺は今だに難しい顔をしていたのだろう。
「……どうしました、翔也さん? 大丈夫ですか?」
その表情から流石に空気を読んだのか、心配をされてしまった。人間が妖怪に心配をされるだなんて、本来はあり得ない話だ。
「なんでもねえよ。とりあえず、俺は地道にお前らに説教し続けるわ」
「えっと……どういうことでしょう?」
(それより、早くここから出ていく方法を考えろ。いつまでもここにいられたら、迷惑だ)
まだ色々と疑問が残っているようだったが、かぐやのツンとした態度と発言に意識はそっちに言ったようだ。
少し頬をふくらませながら、座敷童子は反論をする。
「私少しは役にたってますよ! 翔也さんも色々と助かってると言ってくれましたし。少なくとも迷惑なんて……」
(家事がどうとかそういう話をしているのではない。翔也様がどれだけのリスクを負って、お前をここに置いてやってると思っているんだ)
「……リスク?」
かぐやはため息をつく。
そのまま話を続けようとしたが、俺の視線に気づいたのだろう。"あんまり余計なことを話すな"というメッセージを汲んだかぐやは、そのまま何も言わずに口をつぐんだ。
「……もしかして。私、本当に迷惑ですか?」
「別に迷惑じゃねえよ。さっきも言っただろ、助かってるって。余計なこと気にしてなーー」
話の途中で、空気が揺れるのを感じた。
俺の術式に、確実に異物が引っかかった。
これが、何を意味するか。
答えは単純。緊急事態である
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