土御門、襲来
(言ってるそばから……)
「かぐや、頼む」
(翔也様。私は、本来怪異を祓う為の存在です)
「酷なことを頼んでいるのはわかっている。ただ、今頼れるのはかぐやしかいない」
(……断れる訳ないじゃないですか)
何が起きているのか、そもそも俺たちが何の会話をしているのかわからないのだろう。座敷童子はオロオロと俺たちの様子を伺っている。
ただ、切羽詰まった状況に陥っているということは肌で感じたようだ。
「え、えっと。何があったんですか?」
(おい、低級妖怪。私のそばを離れるな)
「……なんか、やばいことになってます?」
俺が組んでいた術式は感知の術式だ。
半径一キロ以内にある人種が入り込んだ場合、感知するように組んであった。
ただ、その人種が引っかかるだけならば特に騒ぐことではない。問題なのは、確実にソイツがここに向かってきていることだ。
その人種は、霊力を纏っている。
そして、霊力を駆使し怪異を祓う。
言わずもがな、ソイツは俺と同種。
陰陽師だ。
「かぐや。案の定、最悪だ。気合い入れてくれ」
(……土御門ですね)
"ガシャーン!!!"
部屋の窓ガラスが粉砕され、鎖に繋がった極太の鎌が座敷童子に向かって真っ直ぐに飛んできた。
その速さは尋常でなく、そのまま直撃すれば何が起きたのかもわからないまま座敷童子の首は飛んでいただろう。しかし、まだ首が繋がっているのは、ウチのエースの功業だ。
かぐやは座敷童子を守るように瞬時に光の壁を展開し、重量感のある鎖鎌を受け止めている。
「……んへっ? な、なにーー」
(翔也様っ!)
今だに勢い収まらず、かぐやが展開している光の壁に鎖鎌がめり込んでいる。このまま、放置すればそのまま突き破るだろう。
ポケットから呪符を数枚取り出す。
「
呪文を唱え、呪符が太刀に変形する。その太刀を全霊力を込めて振り下ろし、鎖鎌の鎖部分を一気に断ち切った。
支柱を断ち切られた鎖鎌は、煙が立ち上がり段々と形を失っていく。そして、完全に消え去った後に残ったのは、数枚の呪符だ。
「鎖鎌か。最悪の中の、最悪だな」
(……ですね)
かぐやも陰鬱な表情を浮かべている。この鎖鎌を放った陰陽師。かぐやと俺は、同じ人物を思い浮かべたのだろう。
そして、それを確認するまでもなく。答え合わせはすぐにやってきた。
「あっれー。手応えないと思ったら、懐かしい顔ぶれだねー!」
いつの間にか外に立っていた人物が、割れた窓越しから声をかけてきた。そして、ニコニコと笑いながら、損壊した窓から部屋に入ってくる。
「おひさー、翔ちゃん」
「お呼びじゃねえよ。帰れ、渚」
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