第155話 探しに行こうじゃないか!!

 ルクルゴさんの埋葬を終え、用意された部屋でしばしぼーっとしている。

 そしてふいに、これでルクルゴさんは故郷のみんなのもとに帰って来たことになるのだな……という気がしてきた。

 そこで、僕がルクルゴさんと行動を共にするようになって優に1年を超えているのだけど……これからはもう、一緒に冒険をしたり会話をしたり……そういったことをできないのだなと、改めて思わされるのだった。


「ノクト君……」

「ああ、レンカさん……すいません、なんだかぼーっとしちゃって……」

「いや、心にぽっかりと穴が開いてしまっているのは、私もノクト君と同じさ……」

「そうですね……ここまで3人一緒に旅をして来たんですもんね……」


 それにレンカさんは……あの戦いで実の姉であるクヨウさんを失っているんだ……

 そう考えると、むしろ今は僕より悲しみが大きいはず……

 うん……落ち込んでばかりいるわけにはいかないよね……

 よし! 元気を出さなきゃ!!

 それに! そのほうがルクルゴさんも安心してくれるだろうし!!

 ……ああ、そういえば……目が覚めてから考えていた、これからジギムを探そうと思っているって話が途中だった……というか、まだ話し始めてすらいなかったかもしれない。

 じゃあ、その話を今しておこうかな?


「あの、レンカさん……先ほど、なんとなく有耶無耶になってしまった話なんですけど……」

「うん? ……ああ、ノクト君が目を覚ましてから最初に『決めた』といっていたことだな?」

「はい、そのことです。それで、えぇと……以前ホツエン村がモンスターの襲撃を受けたって話をしたと思いますが、そのときから行方不明になっている友達を、これから本格的に探そうかなって思っているのです」

「……行方不明の友達……確かジギム君というのだったな?」

「そうです、ジギムです……覚えててくれたんですね」

「うむ、私も剣を振ったり魔法を撃ったりするだけが能の人間ではないのでな……」

「えっ? いや、そんなつもりでは!」

「ははっ、冗談さ」

「まったく、レンカさんときたら……」

「とはいえ……姉上には若干そう思われていたようだがなぁ……」


 そう呟いたレンカさんは、とても遠い目をしていた……


「えっと……その……クヨウさんだって、本当はそんなこと思っていませんでしたよ、きっと! それに僕だって、レンカさんのことをそんなふうには思っていません……というか、僕のイメージするレンカさんは、思慮深くて聡明な女性って感じですから!!」

「……ふふっ、ありがとう……ノクト君」

「い、いえ、それほどでも……」


 レンカさんのやわらかい笑顔……やっぱり、レンカさんにはそういう表情のほうが似合うね……

 ここでふと、ルクルゴさんのニヤニヤとした表情が思い浮かんだ……

 そういえば、こういった場面でルクルゴさんはいつも僕たちにニヤニヤとした表情を向けてイジってきたんだっけ……

 そんなことも、もうないんだなぁ……っていうか、今思い返してみたら! ルクルゴさんのイジリに対する僕のお返し……まだまだ全ッ然、できてないじゃないかッ!!

 これじゃあ、イジリ逃げですよ? ルクルゴさん、ひどいじゃないですか!!

 なんて思ってみても……ルクルゴさんはもういないんだなぁ……


「……よし! それじゃあ、一度副王都に戻って叔父上に今回のことを報告したら、早速ジギム君を探しに行こうじゃないか!!」

「えぇっ! 副王都に戻ったら、レンカさんは王位を継いで女王陛下になられるという話ではありませんでしたっけ? 僕と一緒に人捜しをしていていいのですか?」

「ああ、それについては改めて叔父上と話をしなければならないな……だが、どちらにせよ副王都に戻ってすぐ王位を継ぐという話にはならないだろう……それにな、私としては姉上が持っていた杖……あれの所在も確認しておきたいんだ……ドラゴンの自爆に巻き込まれて消滅しているならいいが、おそらくそうではないだろうからな……ジギム君を探すついでに、あの杖も探そうと思ったというわけさ」

「なるほど、あの杖……確かに厄介そうですもんね……」

「うむ、それなりに魔力を持った者の手に渡ったら、またこれまでのように大変なことになってしまう可能性もあるからな……」

「それじゃあ、今までと似た感じで! ジギムを探すのと並行して、あの杖もバッチリ見つけるとしましょう!!」

「ああ、そうするとしよう」


 また、このとき僕の脳内では「ただノクト君、成人するまでにしっかりと気持ちを固めておいてくれると嬉しいよ……そうすれば僕たちみんな、すんなりと動くことができるからね!!」という王弟様の言葉が同時に思い浮かんでいたりもした……

 もしかしたらそれは、レンカさんの脳内にも思い浮かんでいたかもしれない……

 でも、このときの僕……もしくは僕たちは、あえてそのことに触れないようにしていたのだった。

 こんな感じで、これからの予定が決まったところで日が暮れてきた。

 それから、体の状態も確認したのだけど、どうやらどこも異常がないみたいなので、これならすぐに行動を開始することができるだろう。

 というわけで今晩一泊して、明日新サットワーズを出発することになった。

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