第93話 二人目の父親

 ルクルゴさんの装備を新しくするって話に目途が立ったところで……


「……ノクト! 帰ってきたんだってな!!」

「お帰りなさい、ノクト君」


 宿屋の食堂に、ヨテヅさんとササラさんが来てくれた!


「ヨテヅさん! ササラさん!」

「さっき、街の奴がノクトのことを話しているのを聞いてな!」

「そうだったんですね……日を改めて挨拶に伺おうかと思っていたのですが、すぐ行けばよかったですね……すいません」

「いや、気にすんな、というか俺もさっき仕事を終えたばっかりで、たまたま家に帰る途中でお前の話を耳にしたって感じだったからな!」

「ええ、私も仕事が終わったのはついさっきだったから、家に来てくれていたとしても誰もいなかったかもしれないわ」

「それならよかったです」

「それはそれとして、テーブルの空いてる席に座ってもいいか? まだ夕食を食べてなくてな……」

「あ、どうぞどうぞ! レンカさんたちも構いませんよね?」

「ああ、もちろんだ」

『ええ、私が一緒で気にならなければ』

「おう、ありがとな!」

「では、失礼しますね」


 とりあえず2人とも、ルクルゴさんと一緒で大丈夫みたいだ。


「……しっかし、街の奴がいってたとおり、本当にオークをテイムしたんだなぁ?」

「私も最初その話を聞いたとき、とてもじゃないけど信じられなかったわ……」


 そしてやはりというべきか、ルクルゴさんが仲間になったことについて2人は驚いているようだ。


「まあ、僕も現地に向かうまでは、まさかこうなるとは思ってもみませんでしたからね……ああそうだ! 改めて紹介します、サットワーズというオークの集落の長をなさっていたルクルゴさんです!!」

『ルクルゴです、よろしくお願い致します』

「お、おう……ノクトと一緒にホツエン村から来たヨテヅだ、よろしくな」

「同じく妻のササラです、よろしくお願いしますね」


 こんな感じで、挨拶を済ませた。


「それにしても、集落の長かぁ……道理でしっかりした感じがするわけだ……大人っぽさなら俺の完敗かもしれん」

「う~ん、強面レベルならいいセンいってるような?」

「おいっ! こんにゃろうは、なんてこといいやがる……すいませんねぇルクルゴさん、コイツは口の減らない奴で……」

『いえいえ、そんなことはありませんよ』

「ルクルゴさんが、そんなことないっていってるよ?」

「へぇ、こっちの言葉まで理解してるとは……本当にスゲェんだなぁ……でもま、そんな人……じゃなくてオークか、まあいいや、ルクルゴさんみたいな方がノクトの傍にいてくれるっていうのは、俺としても安心だよ!」

『ノクト殿の二人目のお父上にそのようにいっていただけで、私としても嬉しい限りですよ』

「もしかして今……俺のことを二人目の父親っていったのか?」

「はい、ルクルゴさんはそういいましたけど、よく分かりましたね? まあ、僕もそんなふうに思ってますけどね!」

「……ああ、なんとなく言葉ってよりも……気持ちでそう感じたんだ……でも、そうか……うん……」

「……あなた」


 ちょっとヨテヅさんが感極まったって状態になっちゃった。

 そしてレンカさんも、今ほどルクルゴさんの言葉を理解できないときでも、心で通じたとかいってたときがあったっけ……


「……でもまあ……兄貴のほうがよかったけどな……ははっ……でも、嬉しいよ……」

「う~ん……『ヨテヅお兄ちゃん』っていうのも……なんというか、その……ねぇ?」

「……お前という奴は、まったく……久しぶりに姿を見て、せっかく雰囲気がフィルに似てきたなって思ってたところだったのによ!」

「えっ! 父さんに!?」

「あら、私はノクト君を見て、リズさんのことを思い出していたわ……」

「ササラさんは母さんを!?」

「……ふむ、今回のことでノクト君の成長が促された部分はあっただろうからな……少し見ないうちにそれを感じたのは当然といえるかもしれない」

「そうか、なかなか大変な依頼だったみたいだな……まあ、オークをテイムするとか普通じゃないもんな……そんな中でレンカさんも、ノクトのこと世話になりました」

「ありがとうございます」


 そういって、僕のために礼をいってくれるヨテヅさんとササラさんに感謝の気持ちでいっぱいだよ。


「いや、礼には及ばない……そしてノクト君……」

「あ、はい、そうですね……」


 このタイミングでいってしまったほうがいい……かな?


「あの、ヨテヅさん、ササラさん……」

「おう」

「何かしら……?」

「実は僕……レンカさんと正式なパーティーを組むことにしまして……」

「ああ、やっぱりか……」

「そうね、そんな気がしたわ……」

「えぇっ! ……ヨテヅさんたちも!?」

「……まあ、ある程度お前と親しくしている奴なら、割と簡単に気付けたんじゃないか? なんたって、お前は分かりやすいほうだからな」

「ふふっ、そうかもしれないわね」

「そ、そうですか……」


 う、う~ん……やっぱりもうちょっと、シブさを身に付けなきゃかもしれないなぁ……


「……それで、この街も出るのか?」

「えっと……はい、今すぐじゃないですけど……そのつもりです」

「そう……か、寂しくないといえばウソになるが……それがお前の決めた道なら、俺にできるのは無事を祈りながら見送ってやるぐらいだな」

「ええ、そうね……」

「ヨテヅさん、ササラさん……」

「でもま! お前がソロで活動しているよりは、そのほうがずっといい!!」

「レンカさん、ルクルゴさん……ノクト君のこと、よろしくお願いします」

「俺からも頼む!!」

「ああ、任せてくれ」

『命に代えましても、必ずやお守り致します』

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