第89話 あの天才少年か!!
「お客さんたち、街に着きましたぜ?」
「ふむ、そのようだな……」
「帰ってきたんだなぁ……」
『ほうほう、ノクト殿が拠点としていた街というのは、ここですか……』
そこまで長い期間ってわけじゃなかったと思うんだけど、久しぶりって感じがしてしまう。
ヨテヅさんやササラさん……それに街のみんな、元気にしてたかな?
といいつつ、この街の冒険者ギルドで見たような記憶のある顔が、あっちのギルドでも見た気がするから、そんなに見知らぬ土地に遠征して来たって感じもしなかったりする。
まあ、こっちとあっちで行ったり来たりしている冒険者も実際にいるみたいだからね。
「それじゃあ、機会があったら、またよろしくですぜ」
「ああ、世話になったな」
「ありがとうございます!」
『感謝を』
「はいよっと、ではでは………………それにしても、あのオークに頭を下げられるっちゅう経験をするたぁ……長生きはしてみるもんだ……」
挨拶を交わしたところで、遠ざかっていく馬車。
そして御者のオッチャンの呟きが聞こえてきた。
まあね、そりゃ一般的なことじゃないから、ビックリしちゃうよね。
それにあのオッチャン、今でこそだいぶ慣れてたっぽいけど、最初のうちはルクルゴさんにビビり散らかしてたもんね……
とはいえ、並のオークですら人間族にとってまあまあ恐ろしい存在みたいだから、それがジェネラルともなると当たり前ではあるだろうけどさ。
「さて、この街の門番は物分かりがいいだろうか……」
「い、一応僕と面識のある人ばっかりだと思いますから……きっと……おそらく……そうであるといいなぁ……」
『毎度お手数をおかけします……』
「まあ、ルクルゴが悪いわけじゃないから、気にしなくていい」
「そうですよ! ルクルゴさんは立派な僕たちの仲間なんですから!!」
『お2人とも……かたじけない……』
今回、馬車はすぐ次の目的地へ向かったので、街の中まで入らなかった。
そのため、これから門番の衛兵さんにチェックを受けることとなる。
まあ、おそらく前の街と同じような展開になるだろうけど……それでも、僕のことを知っててくれてる衛兵さんも多いはずだから、そこまで大騒ぎにはならないと期待したいところだ。
というわけで、門の前へ。
「……なッ!! オークだと!?」
「……ん? 最近見ないと思ってたが……お前、冒険者のノクトか?」
「はい、そうです! 遠征先から帰って来ました!!」
「……冒険者のノクトって確か……『ミートボーイ』とかって呼ばれてた……あの?」
「お前もやっと思い出したか……それはそれとしてなるほどな、遠征してたのか……道理で見なかったわけだ……とりあえず、お帰り」
「はい、ただいまです!」
まずは、僕のことを知っててくれた衛兵さんたちでよかったといえるだろう。
……そして訂正したいこととして「ミートボーイ」じゃなくて「お肉大好きマン」なんだけどね!
まあ、それはともかくとして「お帰り」といってもらえて、なんだか心が温まるね。
「……それにしても、オークをテイムするとか……また、信じられないことを仕出かしてくれたものだ」
「まあ、それはそうだな……とはいえ、ノクトらしいといえばノクトらしいかもしれんが……」
「あはは……恐縮です……」
まあ、毎日ソロでオークを狩りに行くとか、普通の冒険者はしなかったらしいからね……
その辺、ちょっと変わった冒険者っていう認識があるのだろうことは想像に難くないって感じかな?
「とりあえず、テイムの証もあるし……通しても大丈夫か? それとも、一応隊長に知らせとくべきか?」
「そうだな……あとから面倒な問題となってもつまらんし……念のため、きちんと隊長の許可を貰っといたほうがいいだろう」
「よっしゃ、それじゃ呼んでくるとするか……」
「ノクト、そんなわけでスマンがちょっと待っててくれ……ああ、そっちのお嬢さんとオークも悪いが……」
「いえ、大丈夫です!」
「うむ、予想していたことでもあるしな」
『ご苦労をおかけする……』
「……へぇ、俺たちの言葉をハッキリ理解しているわけじゃないんだろうけど、頭を下げてくるとか……雰囲気で察しているのかね? もしそうなら、頭のいいオークだなぁ……」
「ええ、ルクルゴさんは言葉を理解してますよ」
「えっ!?」
「ああ、モンスターテイマーの才能によるものか、最初はノクト君としか言葉が通じなかったみたいだが、ノクト君を交えて私とも会話を重ねていくうちに、人間族の言葉もだいたいの意味は汲み取れるようになったみたいだぞ?」
『はい、大まかにですが……』
「へぇ……そりゃ凄い……まあ、並のオークじゃないってことは、その堂々とした佇まいからも分かることだし……やっぱ、オーク族の中にも特別優秀な奴っていうのはいるんだろうなぁ……」
「……何!? あの天才少年か!!」
……なんか、奥のほうから聞こえてきたね。
そして、隊長さんがドカドカと走ってこちらにやってきた。
「おお! やはり、君か!!」
「ど、どうも……ホツエン村出身のノクトです」
「おうおう! いやぁ、また凄いことをやってきたみたいだなぁ! ハッハッハッ!!」
「あ、ありがとうございます」
そんな感じで笑いながら、僕の肩をバシバシと叩いてくる隊長さん……
悪気はないんだろうけど、地味に痛いです……
そして、門の通過は……
「ああ、君なら問題ない! 全面的に許可しよう! ただ、次の門はおそらく許可されないだろうからそのつもりでいてくれ……とはいえ、普通に生活する上で、あっちに用などそうそうないだろうがな!」
まあ、お貴族様とか住民登録をしている高額納税者とかでもない限り、そうだろうね。
そんなこんなで、思いっきり話の分かる衛兵さんたちのおかげで、街に入ることができることとなった。
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