第84話 ギルドマスター
「なるほど……それで今後は『サットワーズ』なるオークの集落は脅威とならないというわけですか……」
「そうだ、彼らから積極的にこちらを攻めようという意思はないからな」
『ゴージュたちにその気がないことは、私の命にかけても断言できる……まあ、私の言葉は理解できないだろうが……』
「ゴージュさんたちは、サットワーズで静かに暮らしていくはずです! ルクルゴさんもそういっています!!」
「ルクルゴというのは、そちらのオークジェネラルのことでしたね……なるほど、なるほど……」
今回レンカさんと僕が受けた依頼に関して、結果がかなりイレギュラーなものとなった。
そのため、受付のお姉さんだけでは判断しかねるということで、こうしてギルドマスターのお出ましということになった。
まあ、お出ましというか、僕らがギルドマスターの執務室に行ったんだけどね。
ちなみに、ギルドマスターなんて偉い役職の人とお話するのは、今回が初めてのことだったりする……もちろん、僕がね。
レンカさんはというと、割と日常的なことって雰囲気である、さすがだ。
そんなこんなで、ギルドマスターは僕らの話を一つ一つ噛み締めるようにして聞いている。
「……ふむ……ふむ」
そしてギルドマスターは、いろいろ頭の中で思考を巡らせているのか、ときどき頷くようなしぐさを見せながら長い沈黙に入っている。
「……分かりました……まったく無警戒というわけにもいきませんし、ときどきは様子を見る必要もあるでしょうけれど……冒険者ギルドとしては、警戒レベルを下げて対応しても良さそうですね」
「まあ、そうだな……彼らを刺激しないよう、遠くから観察する程度に留めれば大きな問題にもなるまい」
「僕たちの話を信じていただき、ありがとうございます! ……やったね、ルクルゴさん! サットワーズが人間族と争いになる心配がなさそうだよ!!」
門番の隊長さんに引き続き、理解あるギルドマスターでよかった! 本当に!!
『ありがたい限りです……ルクルゴが感謝していると、ギルドマスター殿にお伝えくだされ』
「うん、分かったよ! ギルドマスター、ルクルゴさんも感謝しているとのことです!!」
「ほほう、そうですか……そこまではっきりオークの言葉を理解できるなんて……ノクトさんはモンスターテイマーとして随一の才能をお持ちのようだ……いやはや、将来が楽しみです」
「いえいえ、それほどでも……実際のところ、理解できるのはルクルゴさんの言葉だけですし……」
「……ふむ、ノクトさんとルクルゴさん……運命の導きというべきか、何やら特別な縁で結ばれているのかもしれませんね……私もこの冒険者という世界に入ってそれなりに長いものですから、たまにそういう不思議で興味深い話も耳にしますよ」
ま、まあ、予言の子とかいわれちゃってるからね……
それを踏まえたとしても……
「僕とルクルゴさんが特別な縁で結ばれているかぁ……なるほど! そういう考え方もできるんですね!!」
「ああ、その可能性はあるかもしれんな」
『フフッ……私も、ノクト殿に特別な縁を感じていますよ』
「えっ、ルクルゴさんもですか? う~ん、なんだか照れてしまいますね……」
「まあ、ノクトさんに限らず、モンスターテイマーの皆さんは、大なり小なり自分がテイムしたモンスターに縁を感じているようですからね……とはいえ、お互いに言葉を理解できるほどまでというのは、やはり特別といえるでしょう」
なんにせよ、特別という響きはいいもんだよね!
「……といったところで、依頼に関しては達成扱いということでいいでしょう」
そうギルドマスターがいったところで、後ろに控えていた受付のお姉さんが動き出した。
たぶん、そんな感じで手続きを進めてくれるってことだろうね。
「また、ノクトさんのことをモンスターテイマーとして追加登録しますので、これからお返しするギルドカードにそう記されていることをご確認いただければと思います。そしてこれからは通常の依頼だけではなく、モンスターテイマー専用の依頼をご紹介することもあるでしょう。ああ、もちろん強制ではありませんので、そのとき興味が湧けば、お受けください」
「はい! 分かりました!!」
モンスターテイマー専用の依頼っていうのが、今のところどんな感じかは分かんないけど、面白そうならやってみよう!
とはいえ、レンカさんと一緒に受けれるかどうかってことのほうが重要だけどね!!
とかいっているうちに、受付のお姉さんが戻ってきた。
「……手続きが完了したようですので、ギルドカードをお返しします」
「うむ、確かに」
「はい」
そこで、渡されたギルドカードを見てみた。
……ッ!!
そこには、新しくモンスターテイマーを示す紋章が刻印されていた!!
くぅ~っ! カッコいい!!
「フフッ、これからの活躍を期待していますよ……まあ、この街を拠点とされていないことは残念ですけれど」
「あ、それは……なんというか……スイマセン」
「いえいえ、これはあくまで一老人のぼやきです。そして冒険者は何より自由で在るべきですから、お気になさらず……それに、遠く離れた街であっても、活躍した冒険者の情報というのは時間がかかっても入ってきますからね……それを楽しみにしてしていますよ」
「ご期待に沿えるよう、頑張ります!!」
「ええ、無理のない範囲で頑張ってください」
こうして、ギルドマスターとのお話は終わった。
うん、とてもいい人だったね!
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