第83話 テイムしたとか聞こえてこなかったか?

「この者たちです!」

「まさかと思ったが、確かにオークだな……そして、お前たちがオークをテイムした冒険者というわけか……」


 門番の隊長さんがいらっしゃったようだ。


「ああ、そうだ……テイムの証もほら、きちんと首から下げさせているだろう?」


 レンカさんが対応を買って出てくれた。

 まあ、子供の僕が相手だと、信じてもらえないかもしれないからね……


「どれどれ……ふむ……確かに、間違いないようだ……それにしても、ただのオークじゃないな……ナイト……いや! ジェネラルか!?」

「えっ! ジェネラル!? それって……まさか!!」


 どうやら、門番をしている衛兵さんたちのあいだでも、ルクルゴさんのことは有名みたいだね。


「一つ尋ねるが……近頃、冒険者たちのあいだでウワサされているオークジェネラルというのは、この者……か?」

「おそらく」

「そうか……」

「し、信じられない……いや、冒険者たちが実際以上に騒いでいただけ……?」

「……とはいえ、オークジェネラルだぞ? お前、テイムどころか……倒せる自信あるか?」

「いやいや、無理をいわんでくれよ……」


 隊長さんは一言「そうか……」といったきりで無言となり、そのほかの衛兵さんたちが騒いでいる。

 でもまあ、依頼を受ける前、冒険者たちがひたすら「ヤバい」ってウワサしてたぐらいだからね、この反応も当然かもしれないけど……そうなると、冒険者ギルドに行ったら、もっと大騒ぎになっちゃうかな?


「……ま、まあ、テイムの証も本物であるわけだし……そもそもオークならこんなにおとなしくしていないだろうからな……うむ、通して問題ないだろう」

「た、隊長……本当にいいんですか?」

「ああ……確かにオークを街に入れるなど前代未聞かもしれないが、テイムしたモンスターを通してはならないとなったら、ほかのモンスターテイマーたちが黙っていないだろうからな……まあ、何かあったら私が責任を取るから、お前たちは心配するな」

「た、隊長……あなたが隊長でよかった……」

「……俺! 隊長に一生付いていきます!!」

「そうか、ありがとう……そんなわけだから、お前たちも街に入っていいぞ……ただし、街の者を刺激しないようにくれぐれも気を付けてくれよ? ああ、それから、分かっていると思うが念のためいっておくと、いくらテイムしたモンスターであっても連れて入れるのは、あの内側の壁までだからな? それ以上街の中央部に入ろうとしても、許可されないからそのつもりで」

「ああ、もちろん承知している」

「はい!」

「……うむ、それじゃあ行っていいぞ」

「では遠慮なく」

「失礼します!」

『……』

「オークが頭を下げた……だと?」

「礼儀正しいオークもいるんだなぁ……いや、それだけテイマーが優秀ということか?」


 ルクルゴさんは、その辺のところも僕らに気を遣おうとしてくれているからね……さすがだよ。

 とまあ、こうして無事街に入ることができた。

 それにしても、隊長さんが物分かりのいい人で助かったなって気がしないでもない。

 もしほかの人だったら、ああだこうだと文句をいわれたかもしれないからね……

 そんなわけで、冒険者ギルドへ一直線。

 ……このあいだにも、街の人たちがルクルゴさんを見てギョッとしてたのは……まあ、当然といえば当然かもしれないね。

 それでも、一定の距離を保つだけって感じなので助かった。

 といったところで冒険者ギルドに到着し、そのまま中へ。


「……え、えっと……」

「オークの集落掃討の依頼を受けていたレンカとノクトだ、これが依頼書と私のギルドカードだ」

「僕のギルドカードです」

「……あ、はい! 失礼しました!! お預かりします!!」


 ルクルゴさんを見て呆けていた受付のお姉さんだったけど、レンカさんが言葉をかけたことで通常モードに戻ったみたい。

 そして、僕たちの活動内容についてレンカさんが受付のお姉さんに話し始めた。

 まあ、ルクルゴさんのことやサットワーズの移転について、いろいろ説明が必要だからね。

 というか今回については、討伐してすらいないからね……


「お、おい……あれって……」

「ああ、間違いねぇ……」

「ウソだろ……なんで、あのオークジェネラルがこんなトコにいんだよ……」

「いや、それより大丈夫なのか? いきなり暴れ出したりしないよな?」

「と、とりあえず、おとなしくしてるみたいだから……たぶん?」

「あれがウワサの……や、やっぱホンモノは迫力が違うな……」

「だな……さっきから、震えが止まんねぇよ……」

「で、でもよ……アイツに殺された奴って、実はいないんだろ?」

「少なくとも……最近戦った奴は、みんな生きて帰って来たはず……」

「な、ならッ! そんなビビるこたねぇだろ……!」

「それでも、怖ぇよ……」

「しっかし……討伐に行ったはずが、なんで連れて帰ってくるんだよ……!?」

「まったくだ、ワケが分かんねぇ……」

「な、なあ……今、テイムしたとか聞こえてこなかったか?」

「そうだな……確かにそう聞こえた……」

「なッ、なんじゃそりゃぁぁぁぁッ!?」

「……というより、あんなんテイムするとか……正気か?」

「いや、そもそもオークなんか、テイムできるもんなのか?」

「あ、あれ? 卵から孵した奴とか……なんていうか、もっと生まれたての奴じゃないと無理なんじゃないの?」

「……まれに、野生の奴を捕まえて調教する凄腕もいるとは聞いたことがあったが……まさか、それが奴らだったってことか?」


 ……やっぱり、騒がれちゃったね。

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