第81話 決意
「ブゴッ! ブゴゴォ!!」(ルクルゴ様! お元気でぇ!!)
「ブゴブゴゴブゴゴゴ!!」(旅の安全をお祈りしております!!)
「ブゴ、ブゴゴゴ!!」(いつでも、帰ってきてください!!)
「ブゴゴ、ブゴゴゴ」(サットワーズのこと、私にお任せください)
『見送りありがとう! みんなでゴージュをしっかり支えてやって、これまでよりもっとサットワーズを発展させてくれることを期待しているよ!!』
「ブゴゴォ!!」(ルクルゴ様ぁ!!)
「ブゴ……ブゴゴォォ……」(嗚呼……行かないでぇ……)
「ブゴブゴゴ……ブゴゴォン……」(我慢しなきゃって分かってるのに……やっぱり寂しいよぉ……)
『大丈夫、どこにいようと私たちは心でつながっているんだ……だからな、寂しくなんかないんだよ』
「ブゴォ……」(うぅ……)
「ブゴッ……」(ぐすん……)
『それじゃあ、みんな……達者でな!!』
……こうしてオークの皆さんと別れを済ませ、サットワーズをあとにするのだった。
そして、それまでと同じように振る舞っていたルクルゴさんであるが……やはりその雰囲気に切なさも含まれている。
「ルクルゴさん……本当にこれでよかったんですか? 今までどおり、仲間たちと一緒に暮らしていたほうがよかったんじゃないですか?」
『……いえ、これでいいのですよ』
「それで、えっと予言でしたっけ……確かに僕が予言の子っていうのに特徴は似ていたのかもしれませんけど……でも、大事な仲間と離れてまでこだわらなきゃいけないものなんですか?」
『……ええ、少なくとも私はそう思っております……それにですな、ノクト殿は私との決闘に勝利された……これが大きいのですよ』
「えっ!? ……でも、レンカさんはほぼ引き分けっていってましたよ?」
しかもなんか、手合わせっていってたはずなのに、いつのまにか決闘になってた……なんでぇ!?
『そうですなぁ、ほぼ同時に倒れたわけですから、そういう見方もできるでしょう……ですが、私の心はノクト殿に屈服した……それが全てですよ』
「え、えぇ……そ、そうなんですか……?」
「……あのときの手合わせの話か?」
「あ、はい……それと、ルクルゴさんが集落を離れて本当によかったのかなって話です」
「そうか……確かにな、さきほどのオークたちの悲痛な声を聞けば、戸惑いを覚えるのも無理はないだろう……それに、ルクルゴもこうして寂しさを隠し切れていないからな……」
「ですよね?」
「……だが、ルクルゴは決意を固めてここにいるのだ……その決意、汲んでやらんとな」
「は、はい……レンカさんのおっしゃるとおりですね」
……そして、この別れっていうのは、何もオークたちだけの話じゃないんだった。
この依頼が終われば、レンカさんともお別れになってしまう……あくまでも臨時パーティーだからね。
それに身分はもちろん、ランクも実力も……持ち物に至る全てが格上のレンカさんにとって、このまま僕とパーティーを組み続ける理由もないだろうし……
だから……寂しいけど、お別れなんだ。
そう考えると、ルクルゴさんが一緒にいてくれるっていうことは、ありがたいことなのだろう……独りにならなくて済むからね。
……まあね、拠点にしている街に戻れば、ヨテヅさんやササラさんに会えるから、全くの孤独ってわけじゃないけどね。
そんなことを考えつつ、森の中を歩き続ける。
また、その途中でモンスターとも出くわすが……今の僕にとって、それはむしろありがたいことであった。
なぜなら、戦闘に集中しているあいだ、寂しさを忘れていられるからね……
「ガァァァッ!!」
「そんな咆哮じゃ、全然怖くないよッ!!」
……そう、あの日聞いたオーガの咆哮に比べれば、なんてことない鳴き声でしかない。
「ガァァ……ッ……!?」
……そんな一生懸命叫んでいるモンスターを、一刀両断。
『お見事!!』
「うむ……やはり太刀筋が鋭くなっているな」
僕がモンスターを屠るのを見て、ルクルゴさんとレンカさんが感想を述べた。
まあ、今回出現したのは1体だけだったからね、僕が頂いちゃいましたって感じ。
そんな感じで、たまにモンスターとの戦闘を挟みつつ、森の中を進む。
そして、しばらく進んだところで休憩タイム。
「ノクト君……街に戻ってから話そうかとも思っていたが……今、ここで話してしまうことにした……」
「……えっと……はい、なんでしょう?」
「その……な………………このまま正式に……私とパーティーを……組まないか?」
「……えっ!? そ、それって……えぇっ!! 本当ですか!?」
「ああ、ノクト君が……嫌でなければ……」
「そんなっ!! 嫌だなんてことあるわけないじゃないですか!! 僕でよければ喜んで!!」
「……だが……前にも話したが、私は冒険者をやりながら姉上を探してもいるんだ……そのため、一つ所に長く留まるという生活ではなくなるだろう……それでも、いいかい?」
……ああ、そうか……確かに、そうなっちゃうよね。
「まあ、街に戻ったらすぐ次の街へ出発というわけではなく、しばらく滞在するつもりだから、そのあいだに街の友人知人……それからルクルゴとよく相談して決めてくれ」
……いや、相談するまでもないだろう。
なぜなら、僕の心は既に決まっているから……
「レンカさん! 一緒に連れて行ってください!!」
「……そんな即決してしまって……いいのかい?」
「はい! そう決意しました!! ……ただ、街に戻ったらヨテヅさんたちに話す必要はあると思いますけどね」
「ああ、そうだな……でも、ノクト君の決断を嬉しく思うよ」
……僕は、その笑顔をもっと見たいと思ったんです。
ああ、でも……ヨテヅさんたち、ビックリするかなぁ?
とはいえ、一生の別れってわけじゃないし、冒険者には旅が付き物だからね!
「……ああ、ルクルゴさん、勝手に決めちゃってごめんだけど……これから僕たちは、いろんなところを旅することになると思うんだ……」
『ええ、ノクト殿の思うままで構いませんよ』
「ルクルゴさん! ありがとう!!」
『いえいえ』
こうして、手続きなどはあとからになるだろうけど、僕たちは正式にパーティーを組むことにしたのである。
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